うちつけに さびしくもあるか もみぢばも ぬしなきやどは いろなかりけり
うちつけに さびしくもあるか もみぢ葉も 主なき宿は 色なかりけり
近院右大臣
急に寂しくなったものだ。主を失ったこの家では、紅葉の葉も色づいていないのだなあ。
詞書には「河原の大臣の身まかりての秋、かの家のほとりをまかりけるに、紅葉の色まだ深くもならざりけるを見て、かの家によみて入れたりける」とあります。「近院右大臣」は源能有(みなもと の よしあり)、「河原の大臣」は源融(みなもと の とおる)のこと。紅葉が秋になっても色づかないのは、紅葉にも心があって、主を失った悲しみを抱いているのであろうという想像ですね。源融の著名な歌も 0724 に採録されています。
みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれむとおもふ われならなくに
陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れむと思ふ われならなくに
河原左大臣