漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0898

2022-04-15 06:12:55 | 古今和歌集

とどめあへず むべもとしとは いはれけり しかもつれなく すぐるよはいか

とどめあへず むべもとしとは 言はれけり しかもつれなく 過ぐる齢か

 

よみ人知らず

 

 とどめることができないので、なるほど「疾し」と言われるようになったのだな。そのとおりに、無情に過ぎて行く年齢であることよ。

 0893 と同じく、「疾し」と「年」が同音であることに着目し、なるほど「疾し」と言うだけあって「年」は早く過ぎ去っていく、と詠んだ機智ですね。


古今和歌集 0897

2022-04-14 06:40:16 | 古今和歌集

とりとむる ものにしあらねば としつきを あはれあなうと すぐしつるかな

とりとむる ものにしあらねば 年月を あはれあな憂と 過ぐしつるかな

 

よみ人知らず

 

 引き留めることができるものではないので、感慨を持ったり、「ああ、辛い」と思ったりしながら年月を過ごしてきたことよ。

 第四句が少しわかりづらいですね。「あはれ」はしみじみとした感情を表す語で、「あな憂」の「あな」は「ああ」「まあ」といった意味の感動詞です。


古今和歌集 0896

2022-04-13 04:40:40 | 古今和歌集

さかさまに としもゆかなむ とりもあへず すぐるよはひや ともにかへると

さかさまに 年もゆかなむ とりもあへず 過ぐる齢や ともにかへると

 

よみ人知らず

 

 さかさまに年が流れてほしいものだ。つかまえられずに過ぎ去ってしまった年齢が、年月とともに戻って来るかとも思うから。

 「年」には、古語でも「年月」「年齢」両方の意味がありますが、この歌では「年月」を「年」、「年齢」を「齢」と書き分けて対照していますね。


古今和歌集 0895

2022-04-12 05:59:37 | 古今和歌集

おいらくの こむとしりせば かどさして なしとこたへて あはざらましを

老いらくの 来むと知りせば 門さして なしとこたへて あはざらましを

 

よみ人知らず

 

 老いというもが来ると知っていたならば、門を閉ざして「留守だ」と答えて会わなかったものを。

 「留守だ」と答えてしまったら留守でないことが露見してしまうじゃないか、などというツッコミはなしなんでしょうね(笑)。
 左注には「この三つの歌は、昔ありける三人の翁のよめるとなむ」とあります。0893から続いた、老いを嘆く三首をさしての注書きですが、何やら謎めいていますね。「三人の翁」とは誰なのかなど、この左注の意味するところ、詳細は不明です。


古今和歌集 0894

2022-04-11 06:50:08 | 古今和歌集

おしてるや なにはのみつに やくしほの からくもわれは おいにけるかな

おしてるや 難波の御津に 焼く塩の からくもわれは 老いにけるかな

 

よみ人知らず

 

 難波の御津(みつ)で焼く塩が辛いように、つらいことに私は老いてしまったことよ。

 「おしてるや」は「難波」にかかる枕詞。「御津」は港の意。「からく」は、塩が辛い意と年老いて行くことが辛いの両方の意味ですね。なお、左注によれば冒頭二句は「大伴の 御津の浜べに」とも伝わっています。