四月大神の祭の使
いづれをか しるしとおもはむ みわのやま みえとみゆるは すぎにざりけり
いづれをか しるしと思はむ 三輪の山 見えと見ゆるは 杉にざりけり
四月、大神神社の祭の使い
どの杉を目印と思えば良いのだろう。三輪山は見える限り一帯が杉の木で、神社の入り口がどこなのかわからない。
大神(おおみわ)神社は三輪山をご神体とする神社で、その祭礼は四月、十二月に執り行われます。「使」は、祭礼に際して朝廷から遣わされる奉幣使のこと。三輪山は全体が杉の木に覆われていて、杉が目印だと言われてもどこが入り口なのかわからないというこの歌は、古今集0982 のよみ人知らずの歌(三輪明神の神詠と言われています)を踏まえたもので、拾遺和歌集(巻第十九「雑恋」 第1266番)にも入集しています。
わがいほは みわのやまもと こひしくは とぶらひきませ すぎたてるかど
わが庵は 三輪の山もと 恋しくは とぶらひ来ませ 杉立てる門
よみ人知らず
(古今和歌集 巻第十八「雑歌下」 第982番)