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GW休みの直前、久しぶりにコンサートに行って来ました。
この日のメインディッシュはバッハの「音楽の捧げもの」。バロックヴァイオリンの寺神戸亮、チェンバロの曽根麻矢子、バロック・フルートの菅きよみ、そしてヴィオラ・ダ・ガンバ(一部トレブル・ヴィオール)の武澤秀平、この4人の、まさに小宇宙。
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私はこの曲を生で聴くのは初めてでしたが、バッハが時のプロイセン国王フリードリヒ2世から与えられた主題があらゆる形で変奏されるのに、文字通り身を任せてきました。
チケットを買ったのが遅かったので2階席しか空いていなかったのですが、どうせそれならと4人の奏者の手元が見やすい場所に座りました。目論見通り、バロック・ヴァイオリン特有の弓捌きや、股に挟んで演奏するヴィオラ・ダ・ガンバやトレブル・ヴィオールをじっくり観察。その意味でもとても勉強になったコンサートでした。
この「音楽の捧げもの」は一聴するだけではちょっと掴みどころのない曲です。はっきりとメロディがあって伴奏があって、という曲ではありません。ですが繰り返し聴いていると、その内省的な深みがだんだんと分かってきます。それを「暗い」と片付けることは簡単ですが、じっくり味わっているうちに、バッハがこの曲のタイトルに「捧げもの」と付けた理由が何となく分かってくるような気がします。
それは単に、主題を与えてくれたフリードリヒ2世に対する捧げものということだけではなく、神への奉仕という意味でもあります。これはバッハの晩年の作品には共通の、高い精神性とも言うべきもので、こういう作品を聴いていると、単に心地よいメロディーを追うということとは全く別の聴き方を、自然と自分がしているのに気付きます。(バッハはこの作品を作曲した3年後、65歳でこの世を去ります。)
2011年4月28日(木)午後7時
紀尾井ホール
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ところで先ほどこの曲を生で聴くのは初めてと書きましたが、それはもう20年以上も前にこのレコードに出会ったからと言えなくもありません。
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古楽器ではなく現代の楽器による演奏ですが、そんなことはどうでも良くなってしまうほど、ぎゅっと凝縮されたバッハの世界。初めてこの曲を聴いたのがこのレコードということに、とても幸運な因縁を感じます。
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CDだと裏返さずに一気に聴けます。弦楽合奏にも編曲される「6声のリチェルカーレ」、そして後半の圧巻「トリオ・ソナタ」。崇高としか言いようのないバッハの世界が、そこにあります。
バッハ:音楽の捧げもの
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