日比谷の出光美術館で開かれているルオー展に行ってきました。
出光美術館も金曜日の夜は普段より遅くまで開いているのですが、それでも閉館が7時(入館は6時半まで)なので、ちょっと気合を入れないと行けないところです。今日はたまたま運良く仕事も片付いたので、定時の終業と同時に会社を飛び出し、日比谷に向いました。
ルオー(1871年~1958年)はフランスの画家で、宗教的な題材に基づいた絵を数多く残した画家です。ルオーの作品は、色々な絵が寄せ集めになっている美術展で単発的に見たことはありましたが、どちらかと言えば暗い絵が多く、独特の厚塗りと黒の太い線くらいしか印象に残っていませんでした。しかし、会社からも近い出光美術館がルオーの素晴らしいコレクションを持っていることは聞いていたので、いつか纏まって見る機会を楽しみにしていたのです。
今回の回顧展は、出光美術館が誇るルオーのコレクションが200点以上も展示されていましたが、初期から晩年に至る作風の変化がよく分かる構成になっていました。しかし、題材がキリスト教にまつわるものが多く、自身の教養の無さを嘆く結果になりました。
それでも初期の、スクレイパーと呼ばれるヘラで絵の具をこそげ落とすような書き方と、その上塗りによって文字通り「雲母のごとく重なった」重層感のあるマチエールは凄味がありましたし、それが後期の、絵の具をポジティブに積み上げる筆致に推移していく過程も非常に興味深いものでした。
それから、極太の黒い線で仕切られた空間を埋める鮮やかな赤、緑、青。ステンドグラスを思わせるようなという表現は当たっています。(そう言えば、展示品の中には綺麗な七宝焼きもありました。)それが厚塗りの重層感と相俟って、陰影と奥行きのある画風に仕上がっています。ルオーの重厚さはここにあると実感しました。
という訳で今回は画集は買わなかったのですが、私が一番気に入った絵がたまたま絵葉書として売っていました。
(ルオー「正面を向いた道化師(半身像)」1939年)
それにしても、手持ちのコレクションだけでこれだけの回顧展をやってしまうところが出光美術館の凄いところです。文字通り、圧倒されました。今日はもうお腹一杯という気分です。
ルオー大回顧展
出光美術館
2008年6月14日~8月17日
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