原油価格が停滞しています。これは消費国側の景気後退という理由だけでなく、生産者側にも問題があります。シェール企業の銀行融資条件で50ドル近辺に巨額の売りが控えているだけでなく最大産油国サウジアラビアの急速な財政悪化です。原油価格が106ドル以上でなければ財政均衡が保てないというとんでもない状況です。普通に判断すればどちらかが勝つというより共倒れで、生産コストを抑えた新たなシェール企業の台頭でしょう。これは中期的には日本企業にもメリットをもたらします。電力自由化もあり電力料金の大幅値下げが起こりそうです。地政学的リスクも加味し、電力料金大幅値下げにより製造業の国内回帰の動きが今後強まるでしょう。日本経済は消費税引き上げにより悪影響を受けますが製造業の国内回帰の動きにつられ中期的には更に良くなりそうです。
以下抜粋コピー「米シェール業界、近づく『厳冬』」と伝えたのは10月20日付の日本経済新聞である。生産効率を向上させ生き残りを図ってきたシェール企業だが、7月以降、原油価格が1バレル=50ドル割れの状態が続き、「シェール企業は年末から年明けにかけて胸突き八丁を迎える」との観測が高まっている。
シェール企業の大半は、第2四半期の掘削向け支出が石油・天然ガスの売却収入を上回るなどキャッシュフロー不足が深刻化している。そのため、「1月以降、総額615億ドル相当の株式や債券を売却し、そのうち半額は融資の返済等に振り向けた」という。
米シテイによれば、シェール企業の融資額は最大15%減少される可能性がある。シェール企業は銀行からヘッジ売りを融資延長の条件とされているが、原油安が長引いているためヘッジ目的の売り注文を出す機会も失っている(10月17日付日本経済新聞)。「来年の原油販売分についてヘッジをかけているシェール企業の比率は2割に満たず、これまでの3分の1にとどまっている」ため、原油価格が1バレル=50ドルを上回ると「先物売り」に殺到している。だが、この行為が原油価格の上値を抑えるという皮肉な結果を招いている。
新規投資を控えざるを得ないシェール企業の事情から、米国の石油リグ稼働数は5年ぶりの低水準に落ち込み(595基)、昨年に比べ約3分の1となった。ただし米国の原油生産量は今のところかなり高い水準を維持している。9月の原油生産量は1年ぶりの低水準となったが、日量平均は900万バレルを依然として超えている。
米シェールブームを融資によって支えてきたウォール街の銀行は、そのリスクの多くを既に投資家に分散し(10月15日付ブルームバーグ)、多額の負債を抱えたシェール企業各社に対してはコスト削減と資金調達の猶予を与えている(10月20日付ブルームバーグ)。清算日が先延ばしされたシェール企業は必死になって少数精鋭の油井で生産を行っており、そのことが原油の生産量が極端に減少しない理由であろう。とはいえ、原油価格が大幅に回復しなければ来年春の融資枠の見直しはもっと厳しいものになる。
石油在庫が積み上がり懐事情が悪化するサウジ
昨年末からサウジアラビアは「原油価格の下落を放置し、ライバルであるシェール企業を潰す」と息巻いていた。これまでのところ、その戦略が功を奏しているかに見えるが、サウジアラビアも深刻な打撃を受けているようだ。
10月19日付ブルームバーグは「世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアの原油在庫が記録的な高水準となっている」と報じている。
8月のサウジアラビアの商業用原油在庫は、7月から640万バレル増加して3億2660万バレルとなり2002年以来の高水準に達した。サウジアラビアの原油在庫は今年5月以降記録的な高水準で推移している。原因は輸出が低迷しているからである。サウジアラビアの販売価格を下回る値段で他のOPEC諸国が輸出攻勢をかけたため、サウジアラビアの8月の輸出は日量700万バレルと7月に比べて同28万バレル減少した。
輸出量が減少したもののOPEC内の生産シェアを維持したいサウジアラビアは、過去最高の原油生産量を続けている。そのため在庫が積み上がるばかりなのである。
政府の懐事情も予想以上に悪化している。原油価格下落で2009年以来の財政赤字に陥ったサウジアラビア政府は、同国でインフラ計画に従事している企業への支払いを6カ月以上遅らせている
英大手石油会社BPの統計によれば、今年の原油収入はロシア、サウジアラビアともに前年比49%減となる見込みである。過去10年で最低の金額であり、減収額はロシアで名目GDP比の1割、サウジアラビアで2割に相当する。
ロシアは歳入の約5割を石油とガスに依存しているが、サウジアラビアの歳入に占める原油収入の比率は9割にも上る。IMFによれば、原油価格が1バレル=106ドルでなければサウジアラビア政府の予算は均衡しない。今年の予算の赤字は約1400億ドルでGDPの20%に達する見込みだ。
外貨準備金も月120億ドルのペースで減少していくと予測されている。公的債務のGDPに占める割合が昨年2%未満と世界で最も低水準だったサウジアラビアの財政は、今や「火の車」になりつつあると言っても過言ではない(IMFは10月21日、「サウジアラビアは歳出維持に必要な金融資産を5年以内に使い果たす恐れがある」と警告した)。
危機意識を高め、国防費がうなぎ登りに増加
サウジアラビアが、収入が大幅に減少するにもかかわらず支出を減らせないのには苦しい事情がある。
中東地域におけるイランとの主導権争いは、スンニ派の盟主としてのサウジアラビア政府の面子にかかわる。そのため安全保障費は減らせない。
サウジアラビアはこのところロシアを上回る国防費を支出している(サウジアラビアの2014年の軍事費は808億ドル、ロシアは700億ドル)。3月からのイエメンへの軍事介入などにより、その額は今年に入って「うなぎ登り」に増えていることだろう(イエメンへの軍事介入によりかかった経費は9月までに800億ドルを超えたと言われている)。
イエメンへの軍事介入はますます泥沼化している。イスラム教シーア派武装組織フーシは10月15日サウジアラビアの最大基地の1つであるキング・ハーリド空軍基地をスカッド・ミサイルで攻撃し、サウジアラビア兵士83名を死亡させた。17日にはサウジアラビア南部ダハラン地区にある軍事基地も攻撃され、サウジアラビア軍兵士数十名が死傷、複数の兵器庫が破壊されるなど守勢に回る展開になってきつつある。
過激派組織IS(イスラム国)も10月16日、大油田地帯が存在するサウジアラビア東部でシーア派モスクを襲撃するなど国内でのテロを頻発させている。
さらに核問題を巡り、イランと国連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた6カ国が7月に最終合意した「包括的共同行動計画」が10月18日に発効日を迎える。米国とEUは核関連制裁の解除に向けた準備に着手するなど、イランの国際社会への復帰はカウントダウンにはいった。
サウジアラビア王子はなんと覚せい剤密輸で拘束 以下コピー
レバノン当局は28日までに、首都ベイルートの空港から薬物2トンを国外に密輸しようとしたとしてサウジアラビアの王子を含む5人を拘束した。治安筋が明らかにした。
レバノン国営通信によると、王子らは26日にベイルート・ラフィク・ハリリ国際空港で、「カプタゴン」と呼ばれる覚醒剤アンフェタミン系の錠剤2トンをプライベート機に積んでサウジに向かおうとしていたという