『空飛ぶクレムリン』豪華専用機で日本に来たプーチン大統領
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アレッポはシリア最大の都市で、内戦前は商業の中心地だった。2012年以来、アレッポは西側部分を政府軍が、東側を反体制派が支配し、分断状態となっていた。ロシアの空爆支援を受けたアサド政権軍と、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラ、イラクなどからのシーア派民兵軍団は11月15日から反体制派支配地区への進撃を開始した。
政府軍勢力は12月初めに反体制派支配地区の北半分を制圧、10日ごろから一気に攻勢を掛けて反体制派を追い詰め、13日までに「支配下に置いた」(ロシア国連大使)と勝利宣言した。アレッポに最後まで残って抵抗を続けていた反体制派戦闘員数千人はアレッポ県西部にバスで移送されるというが、前線で一部が反体制派のせん滅を要求し、予断を許さない状況。戦闘員の1000人程度はアルカイダ系の過激派組織「シリア征服戦線」(旧ヌスラ戦線)に属していると見られている。
政府軍はアレッポの制圧により、ダマスカスなど人口の8割を占める都市部の支配を固めることになり、アサド政権の優位は決定的になった。反体制地区には住民約25万人が居住していたが、これまでに10万人以上が脱出。しかしなお数万人が反体制派地区にとどまっており、政府軍支配地などに移される見通し。
しかし国連などによると、反体制派地区から政府軍地区に脱出した住民数百人が行方不明になり、一部はすでに政府軍により処刑された。政府軍側はシーア派系が主戦力なのに対し、反体制派や脱出した住民はスンニ派。この宗派対立による報復虐殺の懸念が高まっている。このため一部の住民は虐殺されることを恐れ、あくまでも反体制派地区とともにとどまろうとしている。
アレッポからの脱出組も含め、反体制派が今後、態勢を組み直して再び政権軍に大攻勢を掛ける余力はない。反体制派に残された選択肢は、政府軍勢力に対して散発的なゲリラ戦を挑むぐらいしか残されていない。しかし、政府軍側もこうした反体制派を一掃する力はない。つまりは内戦が完全に終結することはなく、だらだらとした戦闘がいつまでも続く可能性が強いということだ。
内戦の行方に大きな影響力を持つ次期大統領はこのほど、ノースカロライナ州での演説で、“トランプ・ドクトリン”ともいえる持論を展開した。同氏はイラク侵攻のような米国による中東への「介入と混乱の破滅的連鎖」を非難、「われわれが知らない外国の政権を打倒することに血道を上げるのを止めなければならない。そうしたことに関与すべきではない」と強調した。
同氏はさらに「それに代わってわれわれは、テロとの戦い、過激派組織イスラム国(IS)の壊滅に集中する必要がある」と述べた。この発言は、アサド大統領の追放を要求し、反体制派への支援を行ってきたオバマ政権のシリア政策を批判、否定するものであり、トランプ政権が「シリア内戦には干渉しない」と宣言したのに等しい。
その意味するところは「アサド政権の容認、反体制派への支援打ち切り」であり、アサド大統領を支えるロシアのシリア介入を認めるということだろう。トランプ氏の掲げる「米国第1主義」に基づいた政策で、反体制派にとっては、武器供給の後ろ盾を失い、相当ショックな発言だ。
しかしテロとの戦いに特化する“トランプ・ドクトリン”では、紛争の解決をもたらすことにはならない。宗教や民族、複雑に絡み合った地域の特性、そして中東に共通する若者の高い失業率や、社会への幻滅など諸問題に並行して対応しなければ根本解決にはつながらないからだ。
世界の注目がアレッポの激戦に集まっているスキに、シリア中部の世界遺産都市パルミラが11日、「イスラム国」(IS)によって再び占領された。ISは昨年5月にパルミラを占領したが、ことし3月にロシア軍の空爆と政府軍勢力の猛攻を受けて撤退していた。
ISはイラクではモスルの奪還作戦、シリアでは首都のラッカに対する制圧作戦が開始されるなど追い詰められ、組織存亡の窮地に立たされているが、パルミラの再占領で、そのしぶとさを誇示する形になった。トランプ新政権を待ち構える中東の混迷は底が見えない。
佐々木伸 (星槎大学客員教授)