中国では2022年10月の第20回共産党大会で、習近平政権が3期目入りし、同政権は35年前後までは続くといわれる。しかし経済面を見ると、若者の失業率の増加など、問題が噴出し始めている。足元の中国経済の変化の注目点は、天安門事件の遠因となったインフレではなく、不況と長期デフレの懸念となっている。国内ではデフレ経済を巡る議論が「国家安全」への配慮から統制対象となっている模様だが、そのことがむしろ問題の深刻さを物語っているようだ。
中国政府は21年12月の中央経済工作会議で、経済の三重苦を認めた。需要の縮小、供給のダメージ、将来予想の弱気化の三つである。原因は大きく分けて二つだ。一つは同年夏以降、中国本土の新型コロナウイルス変異株の猛威であり、党・政府はこれに対抗するため散発的な強い都市封鎖策を繰り返したが、経済への悪影響は一過性のものでは収まらなくなった。もう一つは、21年から本格化した大手民営不動産デベロッパー向けの債務抑制策である。これが効き過ぎて経済発展の流れを大きく変えるインパクトを生んだ。
まずコロナ対策では、21年後半時点で経済の全般的な悪化が認識されていたにもかかわらず、22年春に上海の完全都市封鎖を行ったことが、中国経済にとり命取りとなり、全国に巨大なダメージを与えた。サプライチェーン(供給網)寸断や国際物流の停滞にとどまらず、上海の人々は自らの政府の人権抑圧的体質を実際に体験して身じろいだ。20年の武漢封鎖はどこか人ごとだったが、実際にゼロコロナ都市封鎖を経験して言葉を失うショックを受けた。
中国を代表する国際的商業都市の呼吸が数カ月も止まれば、全国経済がおかしくなっても不思議ではない。実際にこの影響は地方政府の財政に及んだ。23年に入ると雲南省や貴州省の一部の市県で政府の設立による半官半民の土地開発会社や交通インフラ会社(いわゆる融資プラットフォーム)が、資金繰り悪化を起こした。本来、上海から諸ルートを通じて回ってくるはずの資金が、都市封鎖の影響で行き渡らなくなった。
こうした半官半民の会社は、上海取引所で債券を上場しており、仮にデフォルト(債務不履行)となれば金融市場がパニックを引き起こしかねない。結局、中央政府が措置をとり難を逃れたようだが、融資プラットフォーム会社は全国に散在し、くすぶる火種へのリスク意識が高まっている。
外資企業も上海封鎖で政府の予測不可能性を意識する結果となったことで脱中国の検討が始まり、生産移転が静かに始まっている。それは雇用悪化を通じて、消費にも影響を及ぼし、中国経済の悪循環の一因となっている。22年末、党・政府はゼロコロナ政策を全面解除したが、それまでのダメージが大きすぎて、時既に遅しといった状況だ。
数ある中国の課題の中でも深刻なのは不動産不況だ。新築の住宅販売は2022年に3割弱落ち込み、23年も下落が続いている。建築途上で放置された高層マンションは各地で問題視されている。
8月17日には、経営再建中の中国不動産大手、中国恒大集団が、米ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条の適用を申請した。これは米国籍以外の企業が、米国内の資産を保護する目的で申請するもので、認められれば資産の強制的な差し押さえを回避することができる。報道を受け、中国国内のSNS(交流サイト)では、「また住宅価格が下がるのか」などの書き込みが相次いだという。
だが、より懸念されるのは、業界首位の大手不動産開発会社「碧桂園(カントリーガーデン)」の経営不振だ。外貨建て社債の利払いが期日までに行えず、国内債券の取引を停止した。同社は恒大の4倍以上のプロジェクトを抱えているとされる。デフォルト(支払い不能)の懸念が高まっており、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「2年前に恒大の経営不安が表面化した時よりも、今の方が事態は、より深刻ではないか」と指摘する。一強独裁国家なので、対応がスピーディーで当面は最悪の事態は回避できそうですが、経済不況は長く続きそうですね。