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「今の経済崩壊の根っこは習独裁政治、香港財界/擁護派前代未聞の習近平全面批判」

2023-08-30 08:31:56 | 日記
今年8月21日、シンガポール紙の聯合早報は「問題は経済にあるが、根っ子は政治にある」と題する長文の論評を掲載した。それは、習近平主席と「習近平路線」に対する全面的かつ本格的な批判として世界中の中国語SNSなどで大きな反響を呼んだ。 
執筆者は劉夢熊氏、香港著名の実業家・政治評論家でもある。劉氏は1948年に中国広東省出身、1973年に香港へ密航。先物取引の成功で香港財界で頭角を表し、いつくかの上場企業の会長や顧問を兼任しビジネス活動を行う傍ら、香港・マカオ・台湾などのメデイアで経済・時事問題な関する評論活動を展開している。香港政府戦略発展委員会委員、民間シンクタンク「百家戦略智庫」主席を務める。香港ではひと角の著名人なのてある。
劉氏はまた、香港財界における親中派、中国共産党擁護派として知られる。彼は今まで広州市政府政策顧問、共産党助言機関の全国政治協商会議の委員を歴任。北京政府からの信頼は厚いようである。共産党機関紙の人民日報も数回にわたって劉氏の論評を掲載したことがある。政治の面では一貫として香港の民主派に批判的姿勢である。
このような人物が香港から、「習近平全面批判」の論評を堂々と発表したこと自体は、まさに政治的大事件である。
それでは、劉氏論評の概要を抜粋的・要約的に下記に紹介する。
論評は冒頭からまず、中国経済の現状についてこう語る。「中国経済は今、民間企業倒産の波、外資企業撤回の波、投資大幅萎縮の波、輸出輸入下落の波、深刻な消費不足の波、債務問題爆発の波、労働者大量失業の波、政府財政失血の波に襲われて、経済を牽引する3つのエンジンの投資・輸出・消費は全部失速する一方、デフレの傾向は明確になっている。米国のバイデン大統領が指摘したように、中国経済は今、世界にとっての“時限爆弾”となっている」。
経済現状に対するこのような厳しい見方を示した上で劉氏論評は、改革開放以来、中国経済は数十年間にわたって高度成長を続け、世界第二の経済大国にもなったのに、どうして近年に急速に傾いてきているのかとの問題提起を行い、「経済衰退の根っ子はまさに政治にある」と喝破した。

そこから論評は、中国の高度成長をもたらした鄧小平「改革開放路線」と正反対の、習近平政権の悪政の数々を羅列しながら批判していく。
1) “経済建設が中心”の鄧小平路線から離反した「政治中心、イデオロギー中心」の政策遂行が、中国国内のビジネス環境を悪い方に変えた。
2) “国進民退”の政策理念の下で独占的国有企業の肥大化を図る一方、民間企業・新興産業を恣意的に苛め大きな打撃を与えたことは、中国民間企業家の投資意欲・経営意欲を殺した。
3) 対外的には鄧小平時代以来の実利外交・親欧米外交の総方針に反して無意味な「戦狼外交」を推進し、米中関係・日中関係・中英関係・中欧関係・中韓関係など、中国にとっての重要国との関係を尽く悪化させた。その一方、国内では反スパイ法を実施し、対台湾軍事侵攻を着々と準備を進めたことで、中国にとっての国際的ビジネス環境を壊して、国際資本とサプライチェーンの中国離れを引き起こし、中国の対外貿易を潰した。
4) 論評はまた、今の習近平政権の現状について、鄧小平時代以来の「集団的指導体制」が破壊され、(指導者)に対する個人崇拝が再び氾濫し、幹部集団においては有能な人が排斥される一方、媚び諂うことだけのイエスマンばかりが重用され、結果的にはそれは経済政策の誤りをもたらしていると指摘した。

このようにして劉氏論文は、名指しこそを避けながらも、習近平と習近平政権の政治路線・経済政策・外交政策・人事路線などに対し全面的、かつ本格的な批判を行った上で、中国経済が危機的な状況に陥った大きな理由の一つはまさに「習近平悪政」にあるとの認識を明確に示した。
彼の現状認識と習近平批判は尽くまともなものであって、まさにその通りであるが、ここで大いに注目すべきなのはむしろ、このような全面的・本格的な「習近平批判」が香港にいる中国人の評論家によって、しかも香港の中の親中派・共産党政権擁護派の著名人によって行われたことである。それはある意味においては前代未聞、まさに画期的なことである。
このような論調は香港の親中的著名人から展開されている背景には当然、劉氏論評の指摘した通りの中国経済崩壊の危機があろう。そして、中国の一部となっている香港の「親中界」においても、現在の中国の経済情勢に対する危機感が未曾有のレベルに達しいること、習近平政治に対する反発と危惧がすでに広がっていることも伺えるのである。
劉氏の習近平批判はむしろ、香港のエリート階層の共通した認識と危機感を代弁してるいのであろう。
もう一つ摩訶不思議なことは、今の香港は言論弾圧の面では中国本土とは全く変わらない状況下で、しかも習近平の秘密警察が跋扈している状況下で、香港にいるはずの劉氏は敢然と習近平批判を行ったのは一体なぜかである。これはまた、今回の一件の最大の謎でもある。
これに対する解釈の一つは、「劉氏は憂国の止むを得ない心情からわが身を顧みずにして果敢な行動に出た」ことであるが、もう一つの可能性として考えられるのはやはり、劉氏の背後には共産党政権内部の大物、あるいは一部勢力の存在があって、劉氏はそれからの保護を受けている、ということである。
共産党政権内で「反習近平勢力」が再び結集して動き出している可能性もある。西側の立場から見れば劉氏の主張は正論ですが、世界は広い、政治体制が違えば政治犯です。今後の情勢が気になるところです。

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