中国の優秀な大学を出た若者が適切な就職が出来ず、世界経済を揺るがす存在になりつつあります。数年前、米国の政府や報道機関はこぞって、中国が技術系の卒業生を大量に流出させることで、米国の国家安全保障とまではいかないまでも、経済力が脅かされると国民に伝えていた。その卒業生は今や中国政府の悩みの種となっているようだ。中国国内で有意義な仕事を見つけることができないのだ。
中国では若者の失業率が急上昇している。この問題は、中国経済の潜在的な成長力、さらには一党支配と引き換えに繁栄をもたらすという中国共産党と国民との間の社会契約を脅かす水準にまで達している。
これは統計が物語っている。中国政府はデータが入手可能な最新の月である4月、16~24歳までの都市部の若年層の失業率が20.4%に達したと報告した。これは、新型コロナウイルスの流行にともなうロックダウン(都市封鎖)による昨年の最悪期の19.9%をも上回り、全国の失業率5.2%の4倍近い数字だ。この4月の数字には、今春大学や高校を卒業した数百万人は含まれていない。また、この統計では自身が取得した学位を必要としない職に就いている大卒者の現状が現れていないため、痛みの程度は控えめになっている。西安交通大学の李晓光教授が最近発表した論文によると、大学新卒者の4分の1に当たる数百万人がこのカテゴリーに分類され「不完全雇用」と呼ばれている。
中国の問題は自業自得だと言ってよい。近代的で技術的に発展した経済には何百万人もの大卒者が必要だと、政府が判断した結果なのだ。この種の問題は、中央集権的な計画経済ではよく起こり、市場経済でも中央当局が最新の妙案を押し付けようとする時によく起こる。
中国は現在、米国のように大卒者があふれている。米国とは違い、中国では当局が科学と工学に重点を置いた。だが現在、そうした技術系の卒業生が有意義な仕事を見つけられないでいる。一方で中国は、2025年までに製造業が必要とする雇用のほぼ半分に当たる3000万件の職が、意欲的な労働者不足のために埋まらないと予測している。これは計画経済当局者による失策だ。
中国政府はこの状況に潜む危険性に対し、新たな計画を打ち出した。国務院が4月、15項目から成る損害回復計画を発表したのだ。その中には、失業している大卒者を訓練する、いや、むしろ「再教育する」というべきものが含まれている。もう1つの努力は、政府のいうところの「大卒者の起業家精神」に対する国の支援を拡大することだ。当面の緊急対策として、国務院の計画では国営企業の雇用拡大も約束されている。