セブンイレブンの生みの親、鈴木名誉顧問はデフレにどのように対応すればいいのか?との質問に「新しいモノをどれだけ出せるか。同じモノだったら飽きる。モノが豊富になれば、景況感は沈滞する。それを打破するのは新しさだ。例えば、セブン-イレブンの100円コーヒーは爆発的に売れた。別にコーヒーそのものは新しいモノではない。どう工夫するかでああいう新しい商品が生まれる。幸いなことに世の中も消費者の好みもどんどん変わっている。その変化に対応すればいい」と答えています。みんながいいと誰でも考えつくようなことはすぐに飽和するだから、『雨後のたけのこ』のような商売はすぐに躓くのでしょう。商いは守りに入ったらダメ『常に新しいことに挑戦し続けないといけない。』ということ。鈴木名誉顧問に対しては、見方を変えれば批判的な意見もありますが、要は常識では推し量られない未曽有のデフレを克服した天才です。
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セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文名誉顧問(83)が5日、産経新聞のインタビューに応じ、「新しいことに挑戦し続ければ、人口が減っても行き詰まらない」などと語り、コンビニエンスストアは今後も成長すると強調した。また、24年間率いてきたグループトップからの退任については、「後継者は常に考えていた。辞めろといわれたわけではないが、今回はいい機会だった」と語った。
詳報は以下の通り。
--人口が減少するなか今後のコンビニ業界は
「30坪か40坪の店で毎年売り上げを上げていくということは、常に新しいことに挑戦し続けないといけない。百貨店や総合スーパーの業績が良くないのは従来の引き延ばしでやっているからだ。一方で、コンビニが調子がいいのは新しいことに挑戦し続けているからだ」
「ただ、コンビニが全部同じかというと、セブン-イレブンと他のチェーンの間には一日の店舗売上高で十数万円の差がある。今のままのお店でいいとは誰も思っていない。人口が減るから、コンビニは行き詰まるというのはおかしい。世の中の変化に対応すればいいわけで、10年後のコンビニは今とはまるで違うものになっている。無理なことをやるのがわれわれの仕事だ。常識で考えられるものは私にいわせてもらえば仕事とはいえない」
--挑戦する風土が減ってきたということか
「これからの人がどう挑戦するかしないかだ。くどくなるが、私はみんなが反対したことに全て挑戦し、成功させてきた。プライベートブランド商品(PB、自主企画)のセブンプレミアムもそうだ。PBというのは世界的な定義でいえば、メーカーが製造するナショナルブランド(NB)より安いものだ。他のグループでもやっているからPBをやりたいという声があがり、開発は許可した」
「ただ、当社グループにはコンビニもスーパーも百貨店もある。同じ値段、同じブランドで売れる物だったら作ってもいいといったらみんな反対した。要するにそれぞれの業態が事情を主張すれば、できないということになる。でも私はできないことはないので、やりなさいと指示した」
「今ではセブンプレミアムの売上高は1兆円にまでなった。考えればいくらでもできる。過去の常識で問題解決をしようとするからできない。将来コンビニが行き詰まるなんていうのは、今までの常識でしか考えていないだけ。世の中はどんどん変わっている。世の中が変わるということはコンビニにとってはチャンスだ」
--個人消費は伸び悩み、デフレ傾向も出てきている
「新しいモノをどれだけ出せるか。同じモノだったら飽きる。モノが豊富になれば、景況感は沈滞する。それを打破するのは新しさだ。例えば、セブン-イレブンの100円コーヒーは爆発的に売れた。別にコーヒーそのものは新しいモノではない。どう工夫するかでああいう新しい商品が生まれる。幸いなことに世の中も消費者の好みもどんどん変わっている。その変化に対応すればいい」
--現経営陣との接し方は
「彼らも新しいことに一生懸命になので、その努力を見守っている。一応引退したので、こうしろああしろというのは言わない。もし何かを聞きにくれば、私だっらたこう考えるよと、意見はいう。過去に何をどう考えたかは言うが、彼ら自身がどんどん変えていけばいい。発想して作り上げることが仕事だ」
「昔、ボウリングがブームになって、ほとんどのスーパーは手を出したが、イトーヨーカ堂は絶対手を出させなかった。なぜかといえば、建物を作って専門設備をつくるメーカーが設備を導入すれば非常に簡単にできあがる。そんなものすぐ行き詰まるのがわかり切っている。みんながいいと誰でも考えつくようなことはすぐに飽和する」
「おにぎりだって、一時130円で売っている商品が売れなくなったから120円に値下げする。次は100円にするとどんどん値下げをしたが、それでも売り上げが落ちてきた。次は90円にすると言い出したから、『じゃあ、お前たちはいずれは値段をゼロにするつもりか』と相当怒った。だから150円や200円でも売れるおにぎりをつくれと指示したが、それは売れた。新しいもので価値があるものは買ってくれる」
--経営者としてやり残したことは
「言えばきりがない。常に挑戦するのが経営者だ。私がやっていれば、また新しいものに挑戦していただろうが、何をやるかはそのときでないとわからない」
--グループトップだった24年間、後継者の育成や退任について考えたことは
「それはあった。70歳を過ぎれば後継者のことは考えていた。そういう質問も記者の皆さんから遠回しに受けていたがすぐに答える問題じゃないから、『いずれ誰かがやるでしょう』といった形で答えていた。常に後継者は誰にしようかというのは考えていた」
「一番の条件は変化を読み取ることができる人。そういう素質がないと特にセブン-イレブンのような小さい店を毎年伸ばすことは難しい。真面目だからいいとかではない」
--結局なかなか見つからなかったのではないか
「毎日の仕事を続けている中でも、突然急死したら後はどうしようかとかは考える。そういうこともありうるし、そういう経営者もいる。そうなったら後を誰かがやらないといけない。そういうことがあり得ると常に考えていた。ただ、そうなったときには誰かがやってくれるとも思っていた。誰かに辞めろといわれたわけではないが、今回はある意味で辞めるチャンスだと思って退いた」
--辞任時に名誉顧問にも就かず全部退く選択肢もあった
「4月7日の記者会見で後継者をどうするという質問に対して、『私は決めません、一切引きます』と答えたのは本当の正直な自分の考えだった。その後、メーカーの方や全国1万8000店のオーナーさん、社内からも名前だけでいいから残ってくれという声が出てきた。顧問だったら残るよということで、名誉顧問を引き受けるまで2カ月もかかった。一切引いた--長年続けていた新商品の試食は続けるのか
「今も続けているが、商品をこう作れと言うようなことは言わない。『僕はこう思う』とか、『僕はこの味はいいと思わないけど』とかは言うが、判断するのは現在の担当者だ」
--個人消費が低迷しているが感覚としては
「モノが豊富にあっても人間は常に新しいモノを求めている。食べものや着るものであったり、スマートフォンであったり、いろいろだ。いずれにしても新しいものを出していけばいい。過去の経済政策をそのまま続けたってダメだ。要するに個人消費が生まれるような政策にしないといけない。金利を下げれば、資金が投資に向かうというけれど、投資したってリターンがなければ、投資をしない」
--出光興産など、創業家と経営陣の問題が目立つ
「資本と経営は分離しないといけないのは当たり前のことだ。批判するのは簡単だが、ただ、その過程にはいろいろあるし、各社ごとに個別の事情がある」
--商品をヒットさせ続けるのは難しい
「もっとおいしいなという風に感じてもらえば消費者は離れない。矛盾すると感じるかもしれないが、おいしいモノは一番飽きるから、おいしいモノほど変えていかないといけない。例えば、いい料理屋に行って、毎日同じ料理を食べろといわれたら、どんなにおいしいとしても飽きるでしょう」
--店舗とインターネット通販を融合するオムニチャネルは
「例えば飛行機とか自動車をコンビニで売ったっていい。コンビニに陳列できるものだけしか売ってはいけないわけではない。それからもう一方で、コンビニを通すことで商品開発をする。自分たちの店頭だけでは売れなくても、新しい商品を開発して、それがインターネット通販で売れるようにする。それがオムニチャネルなんです」
「簡単なことじゃない。でもみんな簡単なことじゃないから、そんなことを言ったってといって反対する。1つのものを作るのは一瞬の思いつきでぱっと作れるものもあるが、そんなものは少ない。こうしたサービスがあればという仮説を設けて、どこまで行けば利益を生み出すかは分かる」
ほうが自分でも未練も残らないし、いいだろうとも思ったが、確かに自分が始めたものを自分の都合だけで辞めるのは、ある意味では潔いようだけどどうかなとも感じていた」