福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

中論觀六種品第五

2022-01-05 | 諸経

中論觀六種品第五 八偈  

問曰、六種に各の定相あり。定相有るが故に則ち六種あり。

答曰、

「空相未だ有らざる時、 則ち虚空法無し。 若し先に虚空あらば 即ち是れ無相と為す」(第一偈)

若し未だ虚空相あらずして先に虚空法あらば虚空は則ち無相なり。何を以っての故に。無色處を虚空相と名く。色は是れ作法(つくられたもの)にして無常なり。若し色が未生ならば未生は則ち滅無し。爾時、虚空相無し。色に因るが故に無色處なり。無色處を虚空相と名く。

問曰、若し無相にして虚空あらば何の咎有らんや。答曰、

「是の無相之法は 一切處に有ること無し。無相法中においては 相は則ち相する所無し。」(第二偈)

若し常・無常法中に無相法を求むるも不可得なり。論者の如きは、是れ有、是れ無、云何んぞ各の有相を知らん。故に生・住・滅は是れ有爲の相なり。生・住・滅無きは是れ無爲の相なり。虚空、若し無相ならば則ち虚空なし。若し先に無相にして後に相來り相すと謂はば是れ亦た然らず。若し先に無相なるときは則ち法の相すべき無し。何を以っての故に、

 「有相・無相中に 相は則ち無所住なり。有相無相を離れて 餘處にも亦た住せず。」(第三偈)

峯あり、角あり、尾端に毛あり、頸下に垂こ有り、是を名けて牛相となす。若し是の相を離れては則ち牛無し。若し牛無くば是れ諸相の所住無し。是の故に無相法中に於いては相は則ち所相無しと説く。有相中に相亦た不住なり。先し相あるが故に。水相中に火相不住なるが如し。先に自相あるが故に。復次に若し無相中に相住せば則ち無因と為す。無因を名けて無法と為す。而るに有相・相・可相は常に相因待するが故に有相無相法を離れて更に第三處の可相(相により表示されるもの)無し。是故に偈中に、有相無相を離れて餘處に亦た住せずと説く。復次に、

「相法無ること有きが故に可相法も亦た無し。可相法無きが故に相法も亦復た無し。」(第四偈)

相、住する所無きが故に則ち可相法も無し。可相法無きが故に相法も亦た無し。何を以っての故に、相に因りて可相有り。可相に因りて相ありて共に相因待するが故に。

「是の故に今、無相にして亦た可相もあること無し。相・可相を離れ已りて 更に亦た物あることなし」(第五偈)

因縁中において本末推求するに相・可相は決定して不可得なり。是の

二は不可得なるが故に一切法は皆な無なり。一切法は皆な相・可相二法中に攝在す。或は相を可相と為し、或は可相を相と為す。火は煙を以て相と為し、煙は亦復た火を以て相と為す。問曰、若し有あること無くんば應當に無あるべし。答曰、

「若し有をして有あること無くんば 云何んが當に無あるべきや。有無は既已に無なれば有無を知る者は誰ぞ」(第六偈)

凡そ物が若し自ら壞し、若しくは他の為に壞せらるるを名けて無と為す。無は自から有らず。有に依りて有り。是の故に言ふ、若し有をして有あること無からしめば云何んが無あるべきや。眼見・耳聞すら尚ほ不可得なり。何ぞ況んや無物をや。問曰、有あること無きを以ての故に無も亦た無し。應當に有無を知る者有るべし。答曰、若し知者あらば應に有の中にありべきか、應に無の中にあるべきか。有無既に破す。知者亦た同じく破るべし。

「是の故に知りぬ、虚空は非有亦非無、非相非可相なりと。 餘の五も虚空に同じ。」(第七偈)

虚空、種種に相を求むるも不可得なるが如く、餘の五種も亦た如是なり。

問曰、虚空は初に在らず後に在らず。何を以って先に破すや。答曰、地水火風は衆縁和合の故に破し易し。識は苦樂の因なるを以ての故に、無常變異なるを知るが故に破し易し。虚空には如是の相無し。但だ凡夫は悕望して有と為す。是の故に先ず破す。復次に虚空は能く四大(地水火風)を持し。四大因縁にて識あり。是故に先ず根本を破せば餘は自ら破す。問曰、世間の人は盡く諸法は是れ有、是れ無なりと見る。汝何を以ってか獨り世間と相違して無所見と言ふや。答曰、

「淺智は諸法の若しは有、若しは無の相を見る。是れ則ち能く見を滅せる安隱法を見る能はざるなり。」(第八偈)

若し人、未得道ならば諸法實相を見ず。愛・見の因縁の故に種種に戲論す。法生ずるを見る時、之を謂って有と為し、相を取りて有と言ふ。法滅を見る時、之を謂って斷と為し、相を取りて無と言ふ。智者は諸法の生ずるを見て即ち無見を滅し、。諸法の滅するを見て即ち有見を滅す。是故に一切法において所見ありと雖も皆如幻如夢なり。乃至、無漏道の見すら尚ほ滅す。何ぞ況んや餘見をや。是故に若し見を滅せる安隱法を見ざる者は則ち有を見、無を見る。(観六種品第五終)

 

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