原文「般若心といっぱ、この菩薩に身心（しんじん）等の陀羅尼有り。
この経の真言は、即ち大心呪なり。（このきょうのしんごんな、すなわちだいしんじゅなり）。
この心真言に依って、般若心の名を得。（このしんしんごんによって、はんにゃしんのなをう。）
或るが云く、「大般若経の心要を略出するが故に、心と名づく。是れ別会の説にあらず」と云々。（あるがいわく、「だいはんにゃきょうのしんようを
りゃくしゅつするがゆえに、しんとなづく。これべつてのせつにあらず。」とうんぬん。）
所謂、龍に蛇の鱗有るが如し。（いわゆる、りゅうにじゃのうろくずあるがごとし。 ）
この経に、総じて五分有り。（このきょうに、そうじてごぶんなり。）
第一に、人法総通分、「観自在」というより、「度一切苦厄」に至るまで是れなり。（だいいちに、にんぽうそうつうぶん、「かんじざい」と
いうより、「どいっさいくやく」にいたるまでこれなり。）
第二に、分別諸乗分、「色不異空」というより、「無所得故」に至るまで是れなり。（だいにに、ふんべつしょじょうぶん、「しきふいくう」というより、「むしょとくこ」にいたるまでこれなり。）
第三に、行人得益分、「菩提薩埵」というより、「三藐三菩提」に至るまで是れなり。（だいさんに、ぎょうじんとくやくぶん、「ぼだいさった」というより、「さんみゃくさんぼだい」にいたるまでこれなり。）
第四に、総帰持明分、「故知般若」というより「真実不虚」に至るまで是れなり。（だいしに、そうきじみょうぶん、「こちはんにゃ」というより、
「しんじつふこ」にいたるまでこれなり。）
第五に、秘蔵真言分、「ギャテイギャテイ」というより、「ソワカ」に至るまで是れなり。（だいごに、ひぞうしんごんぶん、「ぎゃていぎゃてい」というより、「そわか」にいたるまでこれなり。
訳・・「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」という題の中の「般若心」という部分を解説すると、これは陀羅尼集経第三巻には般若菩薩の十三の印形と九種の陀羅尼が説かれているが、中に般若菩薩の大真言（同時に般若心経にある）「ギャテイギャテイハラギャテイハラソウギャテイボウジソワカ」を般若菩薩の大心呪・大心真言としている。ここで「般若心」とはこの般若菩薩の大心真言によっている。
そのうち、この経に説く真言は、偉大な必要の真言なのである。
この必要の真言という意味から、「般若心」という経題がついた。
顕教の者が、質問していう。「大般若経全六百巻の重要部分を取り出して要約したものであるから、その意味で、『心』という名前がついているのである。したがって、大般若経と別の場所で説かれたのではない、つまり別の経典ではない。」
その点については、たとえば龍に、蛇の鱗がついていても蛇とはいわないように、大般若経典と同じ字句があるからといって顕教経典とはきめつけられない。あくまでも般若心経は大般若菩薩の悟りの境地ををとく密教経典でなのある。
般若心経は五章に分かれる。
第一人法総通分といい、「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄」のところ。すべての修行者とその対象としての悟りの内容を総合して示している。
第二は分別諸乗分といい、「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。受・想・行・識亦復如是。舎利子。是諸法空相、不生不滅、不垢不浄、不増不減。是故空中、無色、無受・想・行・識、無眼・耳・鼻・舌・身・意、無色・声・香・味・触・法。無眼界、乃至、無意識界。無無明・亦無無明尽、乃至、無老死、亦無老死尽。無苦・集・滅・道。無智亦無得。以無所得故」のところ。顕教の中の五つの教えを説く
第三は、行人得益分といい、「菩提薩埵、依般若波羅蜜多故、心無罣礙、無罣礙故、無有恐怖、遠離一切顛倒夢想、究竟涅槃。三世諸仏、依般若波羅蜜多故、得阿耨多羅三藐三菩提。」のところ。各宗の修行者の得る利益について述べている。
第四は総帰持明分といい、「故知、般若波羅蜜多、是大神呪、是大明呪、是無上呪、是無等等呪、能除一切苦、真実不虚。」のところ。これまでに説いたすべての教えは次の陀羅尼に流れ込んでいることを説く。
第五は秘蔵真言分といい、「故説、般若波羅蜜多呪 即説呪曰、羯諦羯諦、波羅羯諦、波羅僧羯諦、菩提薩婆訶」のところ。般若心経のすべての内容はこの陀羅尼へ集約されるとする章。
この経の真言は、即ち大心呪なり。（このきょうのしんごんな、すなわちだいしんじゅなり）。
この心真言に依って、般若心の名を得。（このしんしんごんによって、はんにゃしんのなをう。）
或るが云く、「大般若経の心要を略出するが故に、心と名づく。是れ別会の説にあらず」と云々。（あるがいわく、「だいはんにゃきょうのしんようを
りゃくしゅつするがゆえに、しんとなづく。これべつてのせつにあらず。」とうんぬん。）
所謂、龍に蛇の鱗有るが如し。（いわゆる、りゅうにじゃのうろくずあるがごとし。 ）
この経に、総じて五分有り。（このきょうに、そうじてごぶんなり。）
第一に、人法総通分、「観自在」というより、「度一切苦厄」に至るまで是れなり。（だいいちに、にんぽうそうつうぶん、「かんじざい」と
いうより、「どいっさいくやく」にいたるまでこれなり。）
第二に、分別諸乗分、「色不異空」というより、「無所得故」に至るまで是れなり。（だいにに、ふんべつしょじょうぶん、「しきふいくう」というより、「むしょとくこ」にいたるまでこれなり。）
第三に、行人得益分、「菩提薩埵」というより、「三藐三菩提」に至るまで是れなり。（だいさんに、ぎょうじんとくやくぶん、「ぼだいさった」というより、「さんみゃくさんぼだい」にいたるまでこれなり。）
第四に、総帰持明分、「故知般若」というより「真実不虚」に至るまで是れなり。（だいしに、そうきじみょうぶん、「こちはんにゃ」というより、
「しんじつふこ」にいたるまでこれなり。）
第五に、秘蔵真言分、「ギャテイギャテイ」というより、「ソワカ」に至るまで是れなり。（だいごに、ひぞうしんごんぶん、「ぎゃていぎゃてい」というより、「そわか」にいたるまでこれなり。
訳・・「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」という題の中の「般若心」という部分を解説すると、これは陀羅尼集経第三巻には般若菩薩の十三の印形と九種の陀羅尼が説かれているが、中に般若菩薩の大真言（同時に般若心経にある）「ギャテイギャテイハラギャテイハラソウギャテイボウジソワカ」を般若菩薩の大心呪・大心真言としている。ここで「般若心」とはこの般若菩薩の大心真言によっている。
そのうち、この経に説く真言は、偉大な必要の真言なのである。
この必要の真言という意味から、「般若心」という経題がついた。
顕教の者が、質問していう。「大般若経全六百巻の重要部分を取り出して要約したものであるから、その意味で、『心』という名前がついているのである。したがって、大般若経と別の場所で説かれたのではない、つまり別の経典ではない。」
その点については、たとえば龍に、蛇の鱗がついていても蛇とはいわないように、大般若経典と同じ字句があるからといって顕教経典とはきめつけられない。あくまでも般若心経は大般若菩薩の悟りの境地ををとく密教経典でなのある。
般若心経は五章に分かれる。
第一人法総通分といい、「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄」のところ。すべての修行者とその対象としての悟りの内容を総合して示している。
第二は分別諸乗分といい、「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。受・想・行・識亦復如是。舎利子。是諸法空相、不生不滅、不垢不浄、不増不減。是故空中、無色、無受・想・行・識、無眼・耳・鼻・舌・身・意、無色・声・香・味・触・法。無眼界、乃至、無意識界。無無明・亦無無明尽、乃至、無老死、亦無老死尽。無苦・集・滅・道。無智亦無得。以無所得故」のところ。顕教の中の五つの教えを説く
第三は、行人得益分といい、「菩提薩埵、依般若波羅蜜多故、心無罣礙、無罣礙故、無有恐怖、遠離一切顛倒夢想、究竟涅槃。三世諸仏、依般若波羅蜜多故、得阿耨多羅三藐三菩提。」のところ。各宗の修行者の得る利益について述べている。
第四は総帰持明分といい、「故知、般若波羅蜜多、是大神呪、是大明呪、是無上呪、是無等等呪、能除一切苦、真実不虚。」のところ。これまでに説いたすべての教えは次の陀羅尼に流れ込んでいることを説く。
第五は秘蔵真言分といい、「故説、般若波羅蜜多呪 即説呪曰、羯諦羯諦、波羅羯諦、波羅僧羯諦、菩提薩婆訶」のところ。般若心経のすべての内容はこの陀羅尼へ集約されるとする章。
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