讃観世音菩薩頌和釈・・13/20
呪呾讒訟
「呪呾讒訟擬中傷 恒以惡心求方便 由彼常念觀音故 其人竟不能爲害」
人の呪呾にあひ讒訟して傷められ他人の恒に悪心を以て方便を回らして罸を中と擬(はか)るに値へども彼人は常に観音を念ずるに由っての故に悪人の害すること能はず。
興福寺の玄昉僧正は聖武天皇の帰依僧なるが餘に寵敬の甚だしきを藤原の廣嗣が嫉て讒奏して玄昉は光明皇后に密通しけると申すに因りて帝は密に后の宮に往きたまひ簾の隙より窺見玉へば后は十一面観音と現れつ。玄昉僧正は千手観音にて在しき。帝は感信し廣嗣を遠ざけ用給はざりき。