自供の信用性, 責任能力の有無など、 判断が難しい問題を 抱えながら、
裁判員が 死刑を選択するかもしれない 事態に直面します。
裁判員制度では、 裁判員と裁判官 計9人の意見が 一致しないときは、
多数決で判決を決めます。
制度設計の段階では、 日本弁護士連合会は
「 死刑は全員一致 」と 求めていましたが、
制度実施の延期を 懸念され、 議論は広がりませんでした。
プロの裁判官でも、 死刑を選択するときだけは
「 3人のうち一人でも 疑問を持てば、 死刑は回避してきた 」
という人が多くいます。
陪審員制度は 全員一致がルールですが、 裁判員制度では死刑であっても、
まとまらなければ 多数決を採らざるを得ないだろう、 とも予想されています。
裁判員の精神的負担も 重大になるでしょう。
「 絶対死刑を選ばない 」と 決めている裁判員候補は、
面接の段階で 排除される可能性があります。
法律に従わないことになり、 不公正な裁判をする 恐れがあるからです。
「 死刑に反対 」というだけでは 裁判員辞退は認められませんが、
死刑を適用すべきか 議論することすら 精神的な苦痛に 感じる人については、
認めることもありそうです。
ただし 裁判員になりたくない人が、
「 死刑を選ばない 」と 口実に使うことも考えられます。
裁判長が面接で 質問を重ねることにより、
ウソを見破っていくしか ないようです。
なぜ市民が、 死刑に関わるかもしれない 重大な裁判に
参加しなければならないのか、 という疑問も呈されます。
法務省は、 「 重大事件ほど 社会正義が大きく損なわれ、
社会の主人公である国民に 正義を回復してもらうことに 意義がある 」
と説明しています。
裁判員制度が始まっても、 幅広く議論していくことが 欠かせないでしょう。
〔朝日新聞・読売新聞より〕