大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道264

2009-11-06 19:10:26 | E,霧の狐道

    お守り2



 今日も午前中、主治医の狸小路の診察を受けた。
俺は看護婦の井上さんに車椅子を押されてタヌキの所に行った。
鎖骨固定帯の調整と足の湿布が主な治療だ。
 治療をしながら、タヌキが言った。

「 昨日、夜に電話を掛けたんですけど、手術はダメだって言われました。
 でも、安心して下さい。
 必ず、説得して見せますよ。」
「 いや、説得も何も、手術はダメだって死んだお婆ちゃんの遺言で・・・。」
「 あれっ、お爺ちゃんじゃなかったのですか?」
「 いや、この前のは、母方のお爺ちゃんで、今度は父方のお婆ちゃんで
 すよ、ハハハ・・・。」

どうも、まだ、手術を諦めていないようだ。
机のスクリーンには、まだ俺のレントゲン写真がしぶとく貼ってあった。
 程なく治療が終わり、俺は井上さんに車椅子を押されて、4階の通路をナースステーションに向かって移動していた。
ナースステーションで入院当初の書類を貰うためだ。
途中、自分の病室の前を通過した。

「 あれっ・・・・。」

俺は、開いた扉越しに山本爺が俺のベッドの小物入れの前に立っているのを見た。

「 ん、何してんだろ・・・?」





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