日々の恐怖 12月5日 足が見える
パン屋の息子のM君に話を聞きました。
うちは創業50年ぐらいになるパン屋をやっている。
今は俺が跡継ぎ候補。
父親にケツ叩かれながら、修行している。
“ パン屋は朝が早い。”
なんて言うけど、既に朝じゃない、まだ夜。
午前2時くらいに起きて用意をする。
最近は生地の用意任されているから、俺ひとりだけがキッチンに立っている。
これ、一ヶ月前くらい前のこと。
午前3時頃、ふと気が付くとドアの外に誰かが立っている。
上半分だけシャッター閉めて、下は俺が潜り抜けられるぐらいだけ開けているんだけれど、足だけ見える。
気にはなったが、こっちも商売だし、営業外の時間に構ってる暇は無い。
まあ、何かあれば声を掛けるだろうし、放置することにした。
しかし、そいつ何をするでもなく、気付くといなくなってる。
そんなことが、頻繁ではないが今までに何回かあった。
それが繰り返されると、最近はコッチも、
“ アイツ来てるかな?”
って気になって来る。
それで、ついついふっとドアの方を見てしまう。
見たときに足があると、
“ 今日もか~。”
なんて習慣みたいになって来る。
だからと言って、何かあるかと言えば、何も無い。
家族も元気だし、大した事故も無いし、店もいつもと同じで変化は無い。
それで、それを、たまたま気が向いたときに父親に、
「 なんか、足が店に来てるんだけど・・・。」
って話してみた。
すると、父親は、
「 寝ぼけてるのか?」
って、それだけ言って終ってしまった。
数日前に、また生地の仕込みをしているときだった。
“ 足、いるかな・・・?”
って、パッと見た。
そしたら、いた。
シャッターの下に足が見えた。
でも、ちょっと違っていたのは、髪の毛が少し垂れ下がっているのも見えた。
それで、次の日から出入りには面倒なんだけれど、俺はシャッターを下まで閉めることにした。
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