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日々の恐怖 3月19日 派遣社員のバイト君

2015-03-19 20:18:24 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 3月19日 派遣社員のバイト君



 えーと、ちょっと話させてもらいます。
自己紹介から始めると、30代前半の未来に絶望している派遣社員です。
東京にずっと住んでます。
独身で、両親は死んでだいぶたちます。
妹と弟がいますが、もう既に離れて暮らしてます。
 奇妙なのか分からないですが、僕の知り合いにお祓いの仕事をしている人がいます。
知り合いというか、最寄り駅の近くの立ち飲みで出会ったおばさんです。
それが今から数えて7年前ぐらいかなと思います。
 引越ししたての頃で、仕事帰りに一緒に飲む友達がいなくて、気軽に入れそうな立ち飲み屋で飲むようになったのがきっかけです。
で、そのおばさん僕を見るなり、

「 ギャーッ!」

って叫び始めました。
 実を言うと、結構慣れっこで、よく知らない人から叫ばれます。
叫ぶならいいんだけど、

「 あの人、怖いんです、捕まえてください。」

って通報されたこともありました。
 なんで、

“ またかよ・・・。”

みたいな気持ちで無視してました。
 けど、そのおばさんは今までの人と違って話しかけてきました。

「 どこからきた?」
「 仕事はなにしてる?」
「 両親はなにしている?」

なんて、まるで尋問のように矢継ぎ早に質問されました。
 まぁ、こんなおばさんの友達も良いかと思って、質問に答えていました。
それからしばらくして、そのおばさんが、

「 今度、あたしの店に来い!」

って言いながらお店のカードみたいなものを渡されました。
 まぁ、興味ないし、凄い上から目線で話されてムカツイていたから、直ぐ様、そのカードは捨てました。

 ところが、その後日、その立ち飲み屋でまた会ってしまい、その時は無理やり店に連れてかれました。
というのも、おばさん以外に痩せたおじさんと若い女がいて、ちょっと逃げれなかったのです。
 ちなみにおばさんはトモコさん、若い女はユウちゃん、おじさんはヨシオさんて言います。

“ 絶対、宗教の勧誘だよなぁ・・・。”

そう思いながら、その3人の後ろに付いていきました。
 店に行くまで誰も喋らないもんだから、ユウちゃんに話しかけてみたら、

「 ヒィぃいー。」

とかいって、会話ができなかったです。
それからヨシオさんに、

「 ごめんな、君が怖いんだ。」

なんて言われたから、なんか凄い悲しかったの覚えています。
 で、店に着いた訳だが、だたの占いの館でした。
宗教の勧誘じゃなさそうだなと思い、

“ 占いでもしてくれんのかな?”

と期待していました。
 で、店に着くなりトモコさんが、

「 あんた、私たちと仕事しないか?」

って言われました。

「 はぁ・・・?」

と言いながら聞いていたら、なんでもその3人はお祓いを仕事にしているらしく、僕についてきて欲しいと言われました。
 その当時は一応、ある会社の社員だったので、

「 仕事あるんで、無理ですよ。」

と断りました。
でも、そのおばさんは引き下がらず、

「 土日のバイトだと思ってやってくれないか?」

と頼まれました。
まぁ幽霊とか神様とかまるで信じないので、まぁいいかなぐらいでOKしました。
 早速、次の週末にお呼びがかかり、○○区のある一軒家に連れてかれました。
家からそう遠くは無いので自転車で待ち合わせ場所に行ったら、

「 徒歩で来い、アホ!」

と怒られました。
 渋々、近くに自転車を止めて、その一軒家に入っていきました。
入った途端、トモコさんとユウちゃん(おじさんは都合が悪くて来なかった)が、

「 あぁ、 いますね、いますね・・・。」

とか言い始めて、しかめっ面になりました。
 ただ、僕には何がいるかも分からなかったです。
普通の一軒家だと思いました。
 居間には中年夫婦がいて、僕らにお茶やお菓子を出してくれました。
笑ってたけど、かなり引き攣ってたの覚えています。
 しばらくすると、トモコさんが、

「 早速、始めましょう。
その部屋に案内してください。」

といって、立ち上がりました。
何が始まるのか、よく分からないまま二階に案内されました。
 階段上がると左右に二部屋あって、その右側の部屋の扉の前で止まりました。
扉にはアルファベットでTAKEOって書いてありました。

「 ここです。」

そう中年夫婦に言われました。
 トモコさんとユウちゃんは、背負っていたリュックサックの中から塩を出して、ペットボトルの水と振りかけ、両手にまぶしました。

“ 何が始まるんだろう?”

とか思いながら、僕も両手に塩まぶした方が良いのか聞いてみると、

「 お前には必要ない、ただ言われたとおりにしろ。」

と言われました。
 中年夫婦には何があっても、絶対に取り乱すなと注意をしたトモコさんは、扉を開け中に入りました。
僕も後ろに続こうとした時、中から黒い影がトモコさんに覆いかぶさってきました。
TAKEOという中学生ぐらいの少年でしたが、異様に眼がギラギラして歯をむき出しにして、

「 ガジャガジャ、ガジャー!」

みたいな事、叫んでました。
 トモコさん の首に噛み付こうとしていたので、流石に僕もこりゃイカンと思い、少年を引き剥がそうと彼に近寄りました。
 TAKEOくんは僕の顔を見るなり震え始め、ベッドの隅っこに逃げて身を丸めました。

「 体のどこでもいいから、引っ叩け!」

トモコさんにそう怒鳴られました。
なので、悪いなぁとは思いながら、丸まってる背中を引っ叩きました。
そんなに強く叩いた覚えは無かったのですが、

「 う、ぎゃー!」

とか言って、TAKEOくんは泡吹いて倒れました。
 倒れているTAKEOくんを介抱しようと両親が近寄ります。

“ そんな強く叩いてないよな・・・。”

とか思いながら横目で、トモコさんを見ていると、

「 これでお祓いは終りました、もう大丈夫。」

そう言いました。
たしか、そう言ったと思います。
 それからTAKEO君をベッドに寝かして、中年夫婦にお礼を言われながら帰りました。
なんでもTAKEO君が大人しく寝たのは、半年振りだったそうです。
ちなみにTAKEOくんの部屋は物凄い事になっていました。
物は多分危ないから片付けたのだと思うけど、壁という壁に切り傷や穴がありました。
 帰り道、あまりに意味がわからなかったので、トモコさんに、

「 意味がわかりません。」

と素直に言って、色々聞いてみました。
 可哀想に一緒に来ていたユウちゃんは、帰り道の途中でゲロを吐いていました。

「 あんたは相当なモノをもってるね。」

トモコさんにそう言われました。
初めはちんちんの事かと思いましたが、そうではないらしいです。
どうやら、言い方は宗教やお祓いの流派によって変わるらしいですが、守護霊や気なんて言われてるものらしいです。
 そんなに凄いのかと思って、

「 そんなに良いんですか?」

と尋ね返すと、

「 いや、逆だ。
最悪なんだよ、あんたの持ってるもの。」

そう言われました。

“ 最悪じゃダメじゃないか。”

と思ってたので、

「 最悪って、それじゃ駄目じゃないですか。」

と言うと、

「 普通はな。
だけど、お前は普通じゃない。
なんでそれで生きてられるのかおかしい。」

トモコさんに言わせると、僕のもってるモノってのが相当ひどいらしいです。
実はユウちゃんがゲロを吐いたのも、僕がTAKEO君を叩いたときに祟られたらしいです。
 まぁ色々聞きたかったのだが、あまりにユウちゃんが気分が悪くなってしまったので、トモコさんとユウちゃんは先にタクシーで帰りました。
僕は止めておいた自転車で帰りました。
 トモコさんのお店でなんと10万円ももらえました。

“ 本当はいくらもらったんだろう?”

そう思ったけど、

“ 中学生の背中引っ叩いて10万円ならいいや。”

と思って喜んでいました。
 実を言うと、それから少しして僕は留学しました。
その当時の仕事よりも、やりたい事があったのが理由です。
まぁ結局3年前に戻ってきたものの、仕事がなくキャリアも無く、派遣をやりながら生活しています。
 3年前に帰国した後に、トモコさんに会ったときに言われたのが、

「 あんたのそれ、かなり逞しくなってるよ。」

そう言われニヤっと笑われました。
なんでも僕のモノは異国の地で精力を養ったらしく、以前よりパワーアップしているらしいです。
一応真面目に勉強してただけなんですけど。
 それから3年、お祓いのバイトをしています。
ただ、トモコさんや、ユウちゃん、ヨシオさんは、いわゆる霊感的なものがあるらしく、色々見えるらしいです。
ところが僕は本当に何も見えないです。
なので、今でも引っ叩いたり、話しかけたりするだけです。
 残念なのは今でもユウちゃんは仕事が終わるとゲロを吐きます。
僕のせいなので、いつも申し訳ない気持ちで一杯になります。
で、明日も実は一個仕事が入り、終わったら遊びに行こうと考えてます。













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