大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月30日 線路

2015-03-30 19:44:56 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 3月30日 線路



 俺の曽祖父は、国鉄時代、汽車の運転手をやっていた。
生前、そんな曽祖父からよく聞いた昔話がある。

 曽祖父の仕事は、もちろん汽車の運転なんだけど、どうしてももうひとつやらされる仕事があって、その仕事をやる日はもうイヤでイヤでしょうがなかったそうだ。
要するにまぐろ拾いである。
まぐろ拾いっていうのは、電車による自殺で、体がばらばらになってしまった人のパーツを拾い集めることだ。
 時代は終戦後で、きたないとかきれいとか、違法合法なんて概念はそっちのけ、みんな生きるのに必死だった頃だ。
生きるのがつらくて死を選んでしまう自殺者も、もちろん多かったそうだ。
 曽祖父は運転手なので、基本的には汽車の先頭車両で、いつも前方を見ていた。
だから、飛び込んでくる人が丸見えなんだ。
飛び込んでくるならまだしも、一番最悪だったのは、線路の上に3、4人の家族で寝ているのを見てしまったときだとか。
 それで、線路脇に立って電車を見てる人はいっぱいいるけど、これから飛び込もうってヤツは、どんなに離れていても、顔が見えなくても、すぐわかるんだって。
なんでも、立ってる姿の上に、そいつの目が見えるんだって。
そいつの頭の上に、悲しそうな両目がぼやけて見えるんだって。

「 飛び込むヤツはこういう目をしてるんだ、わかるんだ。」

って言ってた。
 それで曽祖父はある日、線路脇に飛び込みそうなヤツが見えたから、また目の前で死なれるのがどうしてもどうしてもイヤで、ブレーキを早めにかけたんだ。
予想して、飛び込む前からかけてたんだ。
 案の定飛び込んできたその男は、まだまだ若いヤツで、飛びこんだ時に勢いがあったせいか、うまいように飛ばされちゃって、線路脇のくさむらで、のたうちまわってたんだって。

“ よかった、生きてる!”

と思った曽祖父は、すぐに汽車をとめて急いでその男のところへ走って行った。
すると、男は、

「 汽車がとまった、運転手、とめやがったなぁ~。
なんでとめた、なんでとめた。
恨みます、恨みますよ。」

って泣きながら叫びまくって、ゲロを吐いて、うわごとみたいに曽祖父をすっげぇ責めたんだって。
 だから曽祖父は、

「 バカいうな、死ぬんじゃない。」

とか色々説教してから、その男を同僚にまかせて、自分はそのまま運転席に戻った。
 そしたらその男、数日後にまた汽車に飛び込んで死んだんだ。
その男が飛び込んだ汽車っていうのが、曽祖父の運転してた汽車の最後尾車両なんだって。
 曽祖父は、その男と知らずにいつも通りそのマグロを拾ってたんだけど、後からそれを知って、あまりに悲しくて腹が立ったそうだ。

“ あいつ、死に損なった俺の汽車をわざわざ狙ってたんだろうな。”

だって。










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