日々の恐怖 8月20日 エプロン(1)
小学校に入った年だったと思うから、多分7歳の時だと思う。
近所の仲良しの男の子や女の子5人ぐらいで、近くの木材置き場で遊んでた。
昭和の時代、あまり危険だという意識もなく、子供たちの恰好の遊び場だった。
みんな運動神経もそこそこ良くて、積み上げられた木材の上をぴょんぴょん飛び乗って移動していくような、元気な子たちばかりだった。
私もみんなと一緒に木材の上と飛び回って遊んでいたら、ふいにスコーンと足元が抜けるような感覚があって、身体が落ちて行った。
そして柔らかい湿った土の上にドスンと落ちた。
顔をしかめて起き上がったら、360度回りが真っ暗で何も見えない。
ここの木材置き場に穴とか洞窟とかそんなのあったっけ、とか思いながら、その時はまだ脳天気に出口を手探りで探してた。
でもほんの少し経った時にハッと気が付いた。
なんの音も聞こえない。
仲間以外にも遊んでるグループがいたし、夕方だったからお母ちゃんが呼びに来る声なんかも聞こえてたのに。
何にも見えないし、何にも聞こえない。
急に怖くなって、心細くて、友達の名前を順番に大声で呼んだ。
でも誰も返事してくれなくて、どうしたらいいか分からなくてワンワン泣いてた。
泣いて泣いて、泣きつかれてゼーゼー言いながら、ブラウスの袖でグッと涙をぬぐった瞬間に、目の前がふわっと明るくなった。
そしてお母ちゃんや近所のおばちゃんたちが、私の名前を呼んで探してるのが見えた。
“ 良かったー助かったー!”
と思ってお母ちゃんの方に駆け寄って行ったけど、私に気付かないのか、遠くを見ながら私の名前を呼び続けている。
「 お母ちゃん、早く帰ろうよ!お腹空いたー!」
って言いながらエプロンを引っ張るんだけど、全然気付いてくれない。
“ もう!早く帰らないと魔法使いチャッピーが始まっちゃうのに!”
って思って、エプロンの裾を思いっきり引っ張ったら、レースの所がビリッて破れた。
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