日々の恐怖 6月17日 嫉妬(2)
その年の片付けの際、彼女はこっそりお雛様と三人官女の一人の首を取り替えた。
人形の頭は胴体と細く短い棒で繋がっており、少し引っ張るとすっぽりと抜けたため、犯行は簡単だった。
頭と胴体がややちぐはぐになってしまった人形を、素早くそれぞれの箱にしまう。
いつもそうしているように、人形の頭は傷が入らないよう薄い紙で覆って、箱を閉めた。
「 今年はよく手伝ってくれるねぇ。」
祖母のそんな褒め言葉に少々後ろめたさを感じながらも、彼女は自らの手で箱を納戸にしまった。
さて次の年。内心ワクワクしながら平静を装い、彼女は例年のように雛人形の飾りつけに参加した。
あえて人形の箱は触らず、祖母と母親の反応をこっそり観察していたのだが。
“ あれ・・・?”
祖母が丁寧に箱から取り出したのは、いつも通りのお雛様だった。
美しい衣装にふさわしく、大きくふくらました髪型に金色の飾り、なにより高貴な顔立ち。
彼女はこの日に備え雛人形の顔立ちを予習していたので、それが三人官女のものではないことはすぐにわかった。
“ いたずら、バレてたのかな・・・・?”
もしかしたら、祖母は彼女の思惑などとうにお見通しで、人形を元どおりに戻していたのかもしれない。
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