大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 8月2日 地味な子(3)

2020-08-02 19:03:23 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 8月2日 地味な子(3)



 しばらく息をついてから再出発しようとすると、前方数十メートル先に人がいた。
あの男だった。
男は舗装された歩道ではなく、獣道を通ってM子を先回りしていたようだった。
M子は必死に来た道を引き返して逃げ、その日はバイト先近くの満喫で一夜を過ごした。
 真相は、あの男は所謂”丑の刻参り”をやっており、M子はそれを目撃してしまったらしい。
丑の刻参りは、他人に見られると自分に呪いが返ってくるらしく、もし見られた場合は見た者を殺すしかないそうだ。
 自分の顔が男に覚えられていることを恐れたM子は、満喫近辺の美容院が開いてすぐに駆け込み、ヘアースタイルとメイクをしてもらった。
服も手近にあった店で出来るだけ真逆の印象になるものを購入し、鞄も買い換え、自転車は捨てた。
 それからというものM子は男が自分を殺しにくることを恐れて、当時のM子とは真逆の姿をし続けていると言うのだ。
 その話を大真面目にするM子を、酒の入っていた私は笑い飛ばした。
どう見ても被害妄想乙で、心配症にしてもやりすぎだと。
 そう言う私の顔を見つめて、M子は申し訳なさそうに言葉をつづけた。

「 あの男は今でもあの町にいて、私のことを探している。
Rさんは気を付けた方がいい。
当時の私と少し似ているから・・・・。」








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