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日々の恐怖 11月11日 妹(2)

2020-11-11 20:57:43 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 11月11日 妹(2)




 妹が成人した頃には、彼女の様子に違和感を感じることもなくなったという。

「 いい話じゃないですか。」

私は心からそう言った。
しかし、Kさんはどこか浮かない顔でため息をついた。

「 先日、久しぶりに妹に会ったんです。
今度結婚するんだと言うので、祝いに飲みに行ったんですよ。
少し照れくさかったけど、意外に話が盛り上がって、お酒も進みましてね。」

楽しい話のはずなのに、Kさんの顔はますます暗くなり、私は不安を感じた。

「 子供の頃の思い出話で盛り上がっていた時です。
妹が、

『 お兄ちゃん、昔大怪我して、頭を縫ったことがあったよね。』

と言い出しました。
 怪我は何度もしましたが、頭を縫うほどの怪我をしたのは、七歳の時の一度きりです。
妹は続けて、

『 玄関でふざけて飛び降りて、段差で頭打っちゃったんだよね。
私近くで見てて、びっくりしたよ。』

と。
怪我の原因はその通りでしたが、妹はその時、生まれてないんですよね。」

 他人から聞いた話を、あたかも自分で経験したかのように思い違いをすることは、ままあることだ。
妹も、両親などから聞いた兄の怪我の話が心に残り、そのような勘違いをしていたのではないか。

私がそう言うと、

「 そうだといいんですが・・・・・。」

とKさんはもう一度ため息をついた。

「 僕が怪訝そうな顔をしたからでしょうね、妹は、しまったというような顔を一瞬だけしました。
その時の顔にね、久しぶりに例の違和感を感じたんです。
僕の妹は、こんなだったかなって・・・・。
まぁ、酔っ払いの感覚なんて、あてになりませんよね。」

Kさんはそう言って、力なく笑った。







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