日々の恐怖 11月5日 バンガロー
昔、友人数人と山にキャンプに行き、バンガローに泊まったときのことです。
山といっても、一応ちゃんとした施設もあり、一日色々遊んで楽しかったです。
それで漸く夜、さあ寝ようかという時間になりました。
就寝の支度をしていると、友人Yが結構ガマンしていたみたいで、トイレの大に行って来ると言って出て行きました。
みんな疲れていたようで、支度が終わると瞬間で寝ていました。
自分も寝そべりながらウトウトしていました。
その時、不意にバンガローのドアが強めの勢いでガタッと開きましたた。
さっきトイレに出掛けたYが、ドアから顔だけ出してこちらを覗いていました。
それが、どうも様子がおかしいのです。
服装や髪型はどう見てもYですが、目が不自然に垂れているのです。
人間の目を、位置はそのままで角度だけハの字にしたみたいでした。
自分が、
「 Y・・・?」
と声を掛けました。
それとほぼ同じタイミングで、そいつがこう言いました。
「 何で助けてくれへんかったんや。」
それは、Yの声でした。
「 え?何が・・・・?」
と思う間もなく、そいつはドアを閉めました。
タッタッタと走り去る音が聞こえました。
他の友人は誰も起きていないみたいで、俺は意味不明で怖くてしばらく眠れませんでした。
しばらくすると、またドアが開いて人が入ってきました。
恐る恐る見ると、Y本人でした。
「 いや~、漏れそうで危なかったよ。」
と笑いながら布団に包まりました。
意を決して顔を見ましたが、間違いなく俺の友人のYでした。
翌朝、Yにそれとなく、昨夜トイレに行った時と帰りに、誰かとすれ違ったりしなかったかと聞いてみましたが、別に誰とも会わなかったとのことでした。
俺は特に誰かを見捨てたりした経験もないし、あの言葉の意味がまったく分からなかったです。
目が異様に垂れ下がったあの顔は、今でもたまに夢に出てくる時があります。
誰かが間違えて入ってきたのか?そうだとして、あれは本当に人間だったのか?
Yはもちろん今も健在で、たまに会ったりしていますが、この話は彼にはしていません。
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