大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 8月15日 狂った世相(1)

2016-08-15 19:00:07 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月15日 狂った世相(1)




 以前の帰省で親に聞いた話です。
まずは私が体験したエピソードです。
私がまだ実家にいたころ、近所のスーパーにセルフレジが設置された。

『小さいお子様には操作させないで』

みたいなことが書いてあった。
混雑時に子供にやられると更に混むからだと思う。
 そこで並んでいると、

“ 見たことあるな~。”

程度の近所の子連れ女性が後ろに並んだ。
 子供は小学校1年生くらいの男の子でカートに乗ってる。
まず、

「 俺がやる(セルフレジを)。」

と言いだし、女性が、

「 今日はお母さんがやるから。」

と言うと、

「 っっざけんじゃねーぞ、ババァ!」

と絶叫。
小さな子供の突然の暴言に時間が止まった。

「 黙ってやらせりゃいいんだ、ババァ!」

と、母親を

“ バッチーん!”

と殴る少年。
更に周囲が固まる。
 私は、

「 え?
ナニコレ?
この年で家庭内暴力?
それとも男の子ってこんなもん?」

とプチパニック。
更に、

「 死ね!死ね!」

とカートに乗ったまま母親を蹴りまくる少年。
 でも母親は、

「 蹴ったら痛いよ。」
「 卵割れちゃうでしょ。」

とか言うだけ。
 その騒ぎに横を通った子供が立ち止まったんだが、その子が手に子供が好きそうな食玩を持っていた。
それを見た暴力男児は、

「 あれもってこい!」

と母親に命令。

「 買わないよ。」

と母親が言うと、卵を手にとって床にグシャ!

「 こんなくっだらねーもん買う金あるんだろがあああ!」

と絶叫絶叫。
語尾が全部絶叫。

「 卵がなかったらオムライス作れないよ。」
「 うっせええええええ!」
「 ババアのメシくっせーんだよ!いらねええ!」
「 殺すぞババア!生きたまま燃やすぞ!」

そこらの不良も真っ青の暴言の数々を吐く少年だった。
それに、全く意に介さない母親。
卵は、そのまま。
 異常な空間に耐えきれず、さっさとレジを済ましたが、振り向くと従業員さんがモップで床を拭いており、母親が頭を下げていた。
その間もカートから降りた少年は母親を蹴っ飛ばしていた。











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日々の恐怖 8月14日 酒盛り

2016-08-14 22:10:33 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月14日 酒盛り 




 今から20年程前に聞いた話です。
当時、若いカップル2名が夜の8時頃、ある港でデートしてました。
そこは小さい漁船が停まる港で、普段から何隻か停まっている所でした。
夕方6時頃に待ち合わせ、歩きながら話をしている内に、気が付いたらその港で二人で話をしていたそうです。
 蒸し暑い8月の夜に、

“ 二人は帰ろうかな・・・?”

と思っていたのですが、一隻だけ明かりが付いて賑やかな雰囲気の大きめの漁船(15名は入れそうな大きさだった)から、

「 にいちゃんにいちゃん、ちょっとおいで」

と、小太りのおじさんが呼んでいたので、二人は、

“ 何かな・・・?”

と漁船に入ると、そこは大人7名くらいで酒盛りしている最中でした。

「 にいちゃんなんかは、付き合ってるわけ?」

等ひやかしの言葉を交えつつ、おじさんがたは、

「 飲め飲め!」

と焼酎を差し出してきました。
 当時の二人はお酒はビールぐらいしか飲んだことがなく、酒はこんなに不味いのかと思ったそうです。
しかし10分もしないうちに、彼女のほうがうつむき今にも泣きだしそうになり、彼氏へ、

「 もう・・・帰ろう、お願いだから・・・。」

と小声で呟きはじめました。
 彼氏は、酒は不味かったものの、大人が酒盛りをする雰囲気を楽しんでいました。
島唄(奄美では奄美の唄が多く、年配者たちは酒が入るとこぞって唄ったりしたそうです)を唄い、拍手と指笛で囃し、大変盛り上がっていたのですが、彼女があまりにも態度が豹変し、突然、

「 もう帰る!」

と泣きながら感情を出して、船から走って橋を渡り堤防を走って行きました。
 突然の事で驚いた彼氏は走って追いかけて、200m程はなれた国道沿いで彼女を捕まえて、

「 何やってるわけ?
おじたちに失礼だろ?」

と彼女を捲くし立てました。
 彼女は走った事と泣いていた事もあり、息を切らせながら、

「 うっうっ・・・・。」

と嗚咽を漏らすだけでした。
 5分程経ち、落ち着いた彼女が、

「 あんた、なんで気が付かんわけ?」

と、今度は怒りをあらわにし、彼氏につめよりました。
 意味が分からない彼氏は、

「 やー(方言であなた)何が言いたいわけ?」

と彼女に尋ねました。
 するとまた泣きはじめた彼女が、どうにか聞き取れる声で、

「 拍手・・・、花・・・、コップ・・・、お酒・・・。」

とだけ言い、彼氏がそれでも意味が分からない顔をしていると、

「 拍手!手が・・・、手が手の甲を合わせて拍手してた!
花!枯れたのと新しい白菊の花しかなかった!
コップ!飲み口が割れて、コップ自体外で何年も放置したみたいだった!
お酒!焼酎はあんな味じゃない!
あれは注いで何年も経った腐ってる味!」

と泣きながら怒りだしました。
 それを聞いて彼氏が、

「 確かめて来る!」

と、船着場へ走っていくも、そこに先ほどの船は無く、普段通りに小さい漁船が停まっているだけでした。
 手の甲を合わせて拍手ってのは、自分たちは死霊だよと表明している。
死者の宴会に紛れ込む話はヨーロッパじゃよくある世間話です。
死者が騒ぐ夜というのはある。
 自分は会社へバイク通勤を禁止されてるので、本社近くの墓地の納骨堂沿いの道に停めるが、たまに納骨堂が賑やかそうな空気を持ってる夜がある。
満月の夜など、大勢の人が騒いでいるような気がします。













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日々の恐怖 8月13日 かっぱ

2016-08-13 17:19:15 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月13日 かっぱ




 小学生のとき、理科の先生が夜更けの帰り道でかっぱのような生き物に襲われたと言った。
用水路沿いを歩いてたら突然背後から襲われ、組伏せられたあと、片手をつかまれ、すごい力で引きずられた。
 先生は無我夢中で、胸ポケットにあったボールペンを生物の腕に突き立て、怯んだところを近くの民家に逃げ込んだ。
その家の主人に事情を話し、武装して恐る恐る見に行くと、生物はすでに立ち去ったあとで、弁当箱を入れてあった巾着袋が持ち去られていたという。
 生物の風貌は暗くてよくわからなかったが、背は小学高学年くらい、肌はヌメヌメしており、声などは発しなかった。
とにかく力は半端じゃなく、大学時代柔道で鳴らした先生でもまったく太刀打ちできなかった。
 こんな話を朝のホームルームで、半ば半狂乱の先生から聞かされた。
俺達は震え上がり、女子は泣きわめいた。
それほど真に迫った語り口だった。
 先生は職員会議にこの話題を出したらしく、児童の集団下校と、大人の引率、パトロールを徹底するよう訴えたらしい。
 しかし、まったく相手にされず、先生は半ばゲリラ的に保護者会でこの話を出し強く訴えたが、やはり一笑に付されてしまった。
うちの母ちゃんもその場に居合わせたが、すごい剣幕だったらしい。
 ほどなくして、先生は休職させられてしまい、お別れ会も無いまま学校を去った。
一連の騒動について語ってくれる先生は誰もおらず、すぐに風化した。
 その生物の目撃談は先生の一例だけだったが、

「 誰も信じてくれない!
だが、先生は見たんだ!
何かあってからでは遅いんだ!
みんな用水路には近づくな、一人で歩くんじゃない!」

と、俺達に言い聞かせた先生の話が、俺には嘘や幻には思えない。
昭和のある田舎での話です。












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日々の恐怖 8月12日 全寮制(2)

2016-08-12 18:18:45 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月12日 全寮制(2)




 噂っていうより学校設立から15年ほど経って、目撃したという先輩や宿直講師があとを絶たないって事実が存在してた。
その女の幽霊は小さな赤ん坊を抱いていて、悲しそうな顔をしてこちらを見つめてくる。
子供の首が360度回ってこちらを見て笑うとかだった。
 俺は、その話を聞いてぞっとした。
子供の頃、窓から子供をおんぶした女の人が俺らを見てた場所が、まさにその渡り廊下だったからだ。
 そしてその話を更に決定付けたのが、うちのばあちゃんの話だった。
寮に幽霊が出るって話を帰ったときにしたら、ばあちゃんマジメな顔して、

「 場所はどのへん?」

って聞いてきた。
 俺は紙に学校の見取り図を書き、1年の寮棟と洗濯室を結ぶ渡り廊下の場所を指さした。
そしたらばあちゃん、真顔でこう言うんだ。

「 あの学校が建つ前のあの場所は小高い丘になっててな、心中する人があとを絶たなかったんだ。
その中に身元のわからない人もいて、その場所だよ、母親が小さい子の首を締めて道連れに心中したのは。
無縁仏として、たしか近所の寺で葬ったことがあったんだよ、昔。
亡骸は、子供の首が反対側向いてたっていうよ。
絞めたというより回して殺したんだろうな。
自害までして、あの女の人は成仏できまいって・・・・。」

俺、その話を聞いてホントのことかって凍りついたよ。










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日々の恐怖 8月11日 全寮制(1)

2016-08-11 18:56:11 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月11日 全寮制(1)




 俺が入学した高専は俺が生まれた年、昭和に出来た学校なんだけど、山裾の何もない丘を切り開いて作られた学校だった。
 そこは俺んちのすぐ近所で、子供の頃にはその校舎の電灯に集まってくるカブト虫やクワガタ虫に夢中になって、夜明けと同時刻に弟と二人、敷地の中に忍び込み、昆虫採集に夢中になっていた。
 あれはある晩のことだった。
晩というかもうすぐ夜が明けるといった未明だ。
 弟が突然、

「 やべえっ!」

って言った。

“ どうしたんだろ・・・?”

と思って弟が見てた方に顔を向けると、校舎の窓から青白い顔をした女の人がこっちを見ていた。
それも、背中に赤ちゃんをおんぶしてる感じだった。
 俺ら、よく忍び込んでは見巡りの守衛から見つかって逃げまくっていたので、それも学校関係者の人なのかと思って一目散に逃げ帰った。

 それから10年ほどして、その学校に俺が入学することになるわけだけど、入学してわかったのは、この学校は2年まで全寮制で、寮生は希望入寮者含めて4年までいる。
それと、俺らが子供の頃にカブト虫採集に忍び込んでいたのは寮内の敷地だったことだった。
 自宅が学校の目と鼻の先にも関わらず、俺は全寮制のしきたりで寮に入ることを強いられた。
 それで、寮に入るとどこでもあることだろうけど、先輩たちから寮内のルールや秘密なんかを教わる。
俺が聞いてびっくりしたのは、1年坊主の寮棟から洗濯室まで行く途中の渡り廊下に、髪の長い女の幽霊が出るって噂だった。












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しづめばこ 8月10日 P446

2016-08-10 19:54:21 | C,しづめばこ



しづめばこ 8月10日 P446  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”



大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


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日々の恐怖 8月9日 着信(2)

2016-08-09 18:10:42 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月9日 着信(2)




 オートロックのシステムには防犯のため、インターホンにカメラが付いている。
そしてそれは、これまた防犯のためか、呼び出されないと部屋からでは起動できなかった。
私は念のため、“鍵忘れたの?”と返信を試みた。
もしホントにKだったなら随分意地の悪い返事だなと思いはしたが、不安だった。
 四通目が来た。

“ ご め ん
あ け て ”

駄目だ、これはもう変な人かもしれない。
 でも受信されてきた登録名はKの名だ。
Kのイタズラ説も頭をよぎりはしたが、どう考えてもKらしくない。
 頭がぐるぐるした。
変質者なら開けてはならないが、このマンションの他の住人が帰ってくるなりして入り口を開けてしまえば入られてしまう。

“ どうすればいい?
警察に通報・・・?”

でも何事もなかったらただ恥かきなだけだし、住人であるKにも悪い。
2、3分か、それとももっと経っていただろうか。
 返事も行動も出来ず迷っている私の耳に、インターホンの音が届いた。
部屋の入り口からだった。
1階からではない。
チャイムの音が違うからすぐにわかる。

“ 来た。
誰かが・・・・。
出なくてはならない。”

 私は硬直していた。
五通目のメールは来ていない。
 鍵が開く音がした。
扉が開く。
玄関からまっすぐの廊下から部屋のドアはよく見えた。
 Kだった。

「 どうして開けてくれなかったの?」

訊かれた言葉に閉口している私に、Kは少し怒っているようだった。

「 インターホン鳴らしたのに・・・。
どうしたの?
変なテレビでも見た?」

よっぽど私は蒼白な顔でもしていたんだろう。
Kは私の顔をのぞき込んで笑った。
 そのあと、案の定食事を食べていなかったKと一緒に遅い朝食をとったが、あまり喉を通らなかった。
私は妙なメールについてKに訊いたが、Kは知らないと言う。
 私は少し不機嫌になり、証拠だと言わんばかりにメールを見せようと携帯を開いた。
不思議なことにメールはいくら探しても見つからなかった。
Kは脅かすつもりならもっとマシな話しにしろと笑ったが、私にとっては冗談じゃなかった。
 そして、Kは、

「 そういえば一階に見かけない女がいたっけ。」

とぼそりと言った。
 あれっきり、私はKのマンションには何となく近づけなくなり、Kとも少しずつ疎遠になって今では会っていない。












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しづめばこ 8月8日 P445

2016-08-08 18:13:11 | C,しづめばこ



しづめばこ 8月8日 P445  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”



大峰正楓の小説書庫です。
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日々の恐怖 8月7日 着信(1)

2016-08-07 19:20:34 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月7日 着信(1)




 私が特別変なものを見た、とか聞いたってことでもないんですが、なんか未だに後味のよくない体験だったもんで、話をさせてもらいます。
 一年くらい前の話なんだけど、当時私には付き合っている人がいた。
便宜上、仮にKとしとく。
 その前日の日から、連休だったこともあって私はKのマンションで二人きりの宅飲みをし、バカ騒ぎをしながらそのまま泊まりこんだ。
そして私が朝、目を覚ますと隣で寝ていたはずのKが何故かいない。
 ふと机の上を見ると、チラシの裏に急いで書いたような書き置きがあった。
細かい内容は覚えていないが、どうも休み明けまでに纏めなきゃならない書類を忘れたので会社に取りに戻る。
それから、適当にある物を食べていいことと、昼までには戻るってな感じのことが書かれていた。
 時計を見ると、丁度昼だった。
外は曇りなのか雨なのか、窓から入る光は鈍く暗かったことを妙に記憶している。
 そのときの私は少し空腹ではあったが、書き置きの文面どおりならそろそろ帰ってくる頃だろう。
Kが帰ってきてから一緒に食事をとろうと思い、私はKを待った。
 テレビを見ながらダレていると、携帯に着信があった。
Kからのメールだ。

“ も う す ぐ だ よ
ま っ て て ”

いつもはちょっと長ったらしくて絵文字を多用したメールを寄越すKだが、そのときの内容は完全にこれだけだった。
 よっぽど急いでいたのか。あるいは電車の中にいて、携帯を出しているのに引け目を感じてたった数文字だけでメールを送信したのかもしれない。
私は小心者のKなら有り得るな、などと思いながら少し笑った。
 一通目から10分程度経った時、二通目の着信があった。

“ き た よ ”

ホントそれだけだった。
 そういやKは長くて絵文字いっぱいの文章だけでなく、小難しい漢字が好きで、ひらがなばっかのメールってのも珍しかった。
それに、急いでるにしたって自分ちに帰るのに、来るって表現になんかズレたモノを感じた。
 ちょっと違和感があった。
一通目もそうだったけど、無駄な字間があったし、それに、もう着いてるならメールなんか寄越さず早く上がってくればいいだろ。
まぁそんなの些細なことだったし、私は軽く"じゃあ待ってるから"的な返信をしてKを待った。
そしたら三通目だ。

“ ご め ん
あ け て ”

私は鍵でも忘れて上まで入れなくなったのかと思った。
 言い忘れたが、Kのマンションは1階の玄関にロックがかかるシステムになっていて、自宅の鍵で開けるか、インターホンで住人に開けて貰わないと入れない。
 少し抜けたところのあるKは忘れ物などしょっちゅうだ。
でも、それならばインターホンで私を呼び、開けてくれと言えばいいのに、なぜ・・・。
徐々に大きくなる違和感。
 玄関口に立っているのは、もしかしてKではないのかもしれないと感じ始めていた。
せめて、一階でインターホンさえ押してくれれば顔を確認できるのに。














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日々の恐怖 8月6日 シャワー室

2016-08-06 18:30:38 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月6日 シャワー室




 昔、うちの学校はプールに併設して古いコンクリートのシャワー棟があった。
入り口はひとつで、中に入ると左右に男女別の扉があって、その奥は脱衣所みたいなロッカー室、さらにもうひとつ奥がシャワー室(敷居がなくてノズルだけがずらっと並んでいる)という構造だった。
男女のロッカー室・シャワー室はちょうど左右対称になっていて、天井のところの20センチぐらいだけ男女で吹き抜けになっていた。
 その男子シャワー室の中に、夜一番最後まで残っていた水泳部の奴らが深夜まで閉じ込められた。
そいつら曰く、いつの間にかシャワー室と脱衣所の間の引き戸が開かなくなっていたらしい。
 部活動終了の報告は先に帰った部長がやっていたため、しばらく後に当直に電源が落とされて真っ暗になった。
運悪くみんなタオル一枚持ち込んでいなかったので濡れた体を拭くことも出来ず、シャワーの温水はやがてタンクの備蓄を使い切って水に変わり、晩秋の夜を震えながら過ごした。
 それで、真っ暗になってから数時間後、突然女子シャワー室のほうからガラガラと引き戸を開ける音がした。
そして、ペチペチとタイルの床を人が歩く気配がする。
 当然、閉じ込められた男子たちは大声で助けを求めたわけだが、どういうわけかその足音の人物はそれに全く反応することなく、蛇口をひねってシャワーの水を出し始め、真っ暗闇の中で3分ほどシャワーをばしゃばしゃと浴び続けた。
さすがに不気味になった3人が、そこにいるのは誰だと素性を聞いても無視し続けて、最後はキュッと水を止めて、入ってきたときと同じように水音を立てながら引き戸を開け閉めして、その場からいなくなった。
それでも、続くロッカー室の扉や、建物自体の扉を開け閉めする音はいつまで経っても聞こえなかった。
 結局そいつらは、深夜の2時ごろに家族の通報から始まっていた捜索で助けられたんだが、女子シャワー室の一件から救出までの間に2回もしくは3回、引き戸を隔てた自分たち(男子)のロッカー室からロッカーの扉を閉めるような金属音が聞こえたという。
 引き戸は救出時にはちょっと引っかかっただけで特に問題なく開いたらしい。
立て付けが悪かったのでは、とのことだった。
 しかし出入り口の扉はというと建物、男子ロッカー、女子ロッカーのすべてが閉じて鍵がかけられており、扉の音を立てずに出入りすることはちょっとありえない状態だった。
そして、その鍵束は男子ロッカー室内のベンチの上と、職員室の2箇所にしかなかった。
 この話が出てからというものシャワー棟は気味悪がられるようになり、それまで唯一女子シャワーを使っていた女子バスケ部は、シャワーを浴びずに帰るようになった。
 しばらく後になって別の場所にシャワー付きの部活棟が出来上がり、古いシャワー棟は取り壊され始めた。
今後、メディアセンターという建物が出来るということで、俺たちの卒業時には更地になっていたが、それから10年近く経った今も、何故かそこには何も建っていない。













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日々の恐怖 8月5日 足音

2016-08-05 18:14:21 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月5日 足音




 うちは1階店舗、2階住居の家族経営の商店だ。
昼夜飯は2階で祖母が作っていた。
 11時、18時頃になると2階からドンドンと足音が聞こえ、

“ ああ、ご飯作ってるなぁ。”

とひと息つくのが日常だった。
祖母は右脚がちょっと不自由なので、その足音もちょっとクセがあった。
 祖母が病気であっさり亡くなり、しばらくすると11時頃だけ2階からドンドンと音がするようになった。
なぜか、

“ あっ、ばあちゃんの足音だ。”

と嬉しくなった。
 あるとき11時頃、両親と3人で話してる時にまたドンドンと足音がした。
父がビックリして、

「 誰もいないだろ?」

と聞くので、私が、

「 ばあちゃん、飯作りに来たんじゃね。」

と言い、母が、

「 いつもこうやっておかあさんが教えてくれてから、お昼作りにいくのよ。
上がっても、誰も見えないけど。」

と笑顔で言った。

“ 何だ、母も聞こえてたんだ。”

と嬉しくなった。
 しかし、父が、

「 お前らがそうやってばあちゃん捕まえてると成仏できないんだから、ゆるしてやってくれ。」

と言われて、

“ ハッ!?”

とした。
それからドンドンは全く無くなった。











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日々の恐怖 8月4日 ザザンボ屋敷

2016-08-04 18:47:52 | B,日々の恐怖





  日々の恐怖 8月4日 ザザンボ屋敷




 学生時代に、女の友人のアパート(1階部分)に泊まった時の話です。
午前3時頃、女同士の長いおしゃべりに疲れてコタツでザコ寝していたら、外からガタンガタンという音がした。
隣の家の物音だと思い無視していたが、音は止まない。
 その部屋は1ルームの部屋で、外に面して大きな出入り出来るような窓がある。
大きな窓だったのでちょうど良いサイズのカーテンが見つからず、下の部分が20cmくらい空いていた。
 暗闇の中、目が慣れてきて窓の所を見ると、誰かが必死で窓を外から開けようとしているのが見えた。
怖すぎて声が出なかったが、ずっと必死に窓をこじ開けようとしているズボン部分が見える。
 開かないのがわかると、カーテンが足りない部分の窓から部屋の中を覗き込んだ。
その覗いた人物は、ミッキーマウスのお面をかぶっていた。
寝ている私の目の高さと、ミッキーマウスのお面の中の目が会った時に思いっきり叫んだ。
友人をたたき起こし警察に電話した。
あれ以来ミッキーマウスがトラウマになってます。
 その後、貧乏な友人は引っ越す事が出来ず、どうにか不審者を撃退しようと、ベランダ部分に外から見えるように、大きな白い紙に赤い筆文字で、

“ 不審者に告ぐ、覗けばお前を末代まで呪う”

と書いて貼ってました。
実話っす。
 その頃、ザザンボとかバリゾーゴンとかいう、変な日本の怖い映画のポスターを街で見かける事が多く、近所の小学生にその友人宅は、ザザンボ屋敷と呼ばれてました。












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日々の恐怖 8月3日 クリニック(2)

2016-08-03 18:41:59 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月3日 クリニック(2)




 ですが次の日の朝、朝食を済ませたあとに私も同じものを見たのです。
少しぽっちゃりとした、とても可愛らしい女の子、2歳くらいでしょうか。
栗の木のかげをちょろちょろと走り回っていました。
 私が足を引きずって(産後、腰が痛かったのです)窓に近づくと、女の子の姿は見えなくなってしまいました。
私は、

“ 地元の子供が、山の林づたいに遊びに来たのかしら?
でも、こんな朝早くにたった一人なんて・・・。
妙だなあ・・・?”、

と思いました。
 それから私は順調に体が回復していったのですが、子供の体調が良くなく、用心のためとして私達は少し長く病院に引き留められました。
 入院というのは長引くと暇なものです。
することもないのでなんとなく窓の外を眺めていると、外で動くものがあります。
それはたいていはリスでしたが、例の女の子の場合も何度かありました。
 窓ガラスは開けられないので、私は彼女に話しかけることはできません。
親御さんが心配していないのかな、と少し気にはかかっていました。
 子供の体調も改善し、もう数日で退院となった頃でした。
夜、子供を抱いて授乳していると、私は妙な感覚をおぼえました。

“ 誰かが私を見ている?”

そんな視線を感じたのです。
それにしても、個室には私と子供の2人きりです。
窓には厚いカーテンが閉まっています。
 私は、

“ 変だな・・・。”

と思いつつ過ごしていたのですが、その後も2晩に渡って見られているという気がしていました。
 ついに退院の朝、手続きを済ませて、顔見知りになった年配のナースさんに挨拶をしました。
その際にようやく、

「 朝早くに庭へ遊びに来ている女の子、あれは地元の子なんでしょうね。」

と話題を振りました。
 するとナースさんは笑顔で、

「 そうね、近所の子が遊びに来ているのね。」

と言いました。
 そしてクリニックを出発しようとした直前、私はベッドの下にサンダルを置き忘れたことに気が付き、駐車場に夫と子供を待たせて一人取りに行ったのです。
すると、清掃の係の方と年配のナースが話している所に通りかかりました。

「 あの部屋、また出たって。
この病院で生まれた子じゃないから大丈夫だと思っていたけど、やっぱりダメだったのね。どうしてもお母さんのことが忘れられなくて、それでまた探しに来ているんだわ。」

部分的に聞いても悲しい顛末について、詳細を問う勇気はありませんでした。
 サンダルを見つけて、私はできるだけ足早にクリニックから車に乗り込みました。
あのクリニックで、何があったのでしょうかね。











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日々の恐怖 8月2日 クリニック(1)

2016-08-02 18:45:20 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月2日 クリニック(1)




 ある晩秋、私は初めての子供を出産しました。
ところが不運にも病院に適当な空きベッドがないらしく、分娩室から直接、隣町の私立クリニックに搬送する、と言うのです。
もちろん差額などの自己負担はありません。
出産後でぼんやりして何も考えられなかった私は、力なく同意して救急車に揺られてそのクリニックに到着しました。
 そのクリニックには初めて訪れたのですが、とても静かな場所でした。
土地はかなりのんびりした田舎の小さな町で、クリニックのすぐ裏手には山がありました。
山にはたくさんの栗の木が生い茂り、クリニックの庭にもたくさんの栗が生えていたのです。
 私は1階の小さな個室をあてがわれました。
ベッドに横たわったまま窓の外を眺めると、そこからもたくさんの栗の木が見えました。
他にすることもないので、ぼうっとその栗の木々を眺めていると、ふと視界の隅で動くものがありました。
 それはまるまると太った、赤茶色のリスでした。
私はふっと笑顔になり、こんな静かな所に搬送してもらえて、案外良かったのかもしれない、と思いました。
 その静かなクリニックは、正規の値段で入ったら他の病院よりかなり高額であったと思います。
実際、私が出産をしたクリニックと比べても結構なお値段でした。
 毎回の美味しい温かい食事に間食付きで、設備も新しく清潔で、全ての職員さんがとてもおおらかで親切でした。
遠方だったので実家の両親は来ず、夫だけが毎日私と赤ん坊に会いに来ました。
 その夫がある時、

「 あれ、窓の外に人がいるよ。」

と言います。

「 リスでしょう?
きっと、栗の木のうちのどれかに住んでいるのよ。
私も見たよ。」

と私が言うと、

「 いや、もっと大きい子供みたいに見えたけどなぁ・・・。」

夫はそういって首を傾げます。
その時、私たちは全く気に留めませんでした。












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日々の恐怖 8月1日 伯母

2016-08-01 18:32:44 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月1日 伯母




 去年の夏、伯母から聞いた話です。
伯母の家の近所に、Aさん、Bさんというおばあちゃんが住んでいた。
2人はとても仲がよく、AさんはしょっちゅうBさん宅に遊びに行っていた。
ところがある日、Aさんが病気で急死してしまった。
 葬式も終ったある日の夜、Bさんちの玄関チャイムが鳴ったので応対に出たが、誰もいない。
家の周りは田んぼなので、誰かいたらすぐわかるが、見回しても誰もいない。
よく考えるとその時間は、よくAさんが遊びに来てた時間だった。
 それから毎日、その時間になるとチャイムが鳴る。
段々怖くなって、チャイムが鳴っても応対せず、玄関のドアを開けることもしなくなった。
 すると今度は、家の中を誰かが歩きはじめた。
廊下をギィィ、ギィィとゆっくり歩くその足音は、生前のAさんのそれと同じだった。
 Bさんは心の中で必死で、

“ あんたはもう死んだんよ、ここに来たらイカンのよ・”

と祈ったが、全く効き目がない。
 それどころか、Aさんが可愛がっていた猫までが、Bさん宅に入り浸るようになり、いつもAさんが座っていた場所で丸くなっている。
 この話をBさんから直接聞いた伯母曰く、

「 Bさんの顔ね、なんか変なんよ。
こわばってて、生気がないっていうか、なんかどよんとしてて、何とも言えん変な顔になってるんよ。
私は幽霊なんか信じてないけど、それでもBさん見たときは、この人ヤバいなって思ったよ。
何かに憑かれてる人って、ああいう顔になるんやねぇ・・・。」

その後Bさんがどうなったのか聞いてみたが、

「 さぁ・・?
ここ半年くらい会ってないからわからんわ。
生きてはおるみたいやけど・・・。」

とのことでした。











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