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日々の恐怖 3月23日 漁に出る(4)

2021-03-23 20:55:14 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 3月23日 漁に出る(4)




 波の上で霧に巻かれると、本当に何も見えなくなるんです。
吹雪に巻かれるホワイトアウトと同じくらい恐ろしいんです。
 そしたら宿のオヤジが船を止めまして、最後尾にどっかりと腰を下ろして、念仏なんかあげてるんです。

” ナンマンダブ、ナンマンダブ・・・・・。”

って。
すっかり怖くなっちゃって、船べりで無様にガタガタ震えました。
 本気で怖い思いしたのは2回目です。
チビルとか言う次元じゃなく、もうほんとにパンツの中にでかいのをぶちまける勢いです。
 どれくらい震えたか分かりませんが、さっきから聞こえてきた声が、

「 おーい!」

から、

「 まってくれ~!」

にかわって、

「 たすけてくれ~、おいてかないでくれ~。」

になったんです。
 で、そこでピンと着たんです。
これ、ドザエモンの声だって。
 恥も外聞もなくガタガタ震えてたら、今度は船のヘリを誰かが叩くんです。

” バンバン!バンバン!”

凄い音です。
 そして、相変わらず生臭い臭いがしてます。
それなりに波のある状態でしたが、波のうねりとは違う揺れが唐突に船を突き上げました。

” グラッ!”

と揺れた感じで慌てて船にしがみ付いたら、自分の指先になんとも言えない、

” グニャ!”

って感じの感触がありました。








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