日々の恐怖 3月23日 漁に出る(4)
波の上で霧に巻かれると、本当に何も見えなくなるんです。
吹雪に巻かれるホワイトアウトと同じくらい恐ろしいんです。
そしたら宿のオヤジが船を止めまして、最後尾にどっかりと腰を下ろして、念仏なんかあげてるんです。
” ナンマンダブ、ナンマンダブ・・・・・。”
って。
すっかり怖くなっちゃって、船べりで無様にガタガタ震えました。
本気で怖い思いしたのは2回目です。
チビルとか言う次元じゃなく、もうほんとにパンツの中にでかいのをぶちまける勢いです。
どれくらい震えたか分かりませんが、さっきから聞こえてきた声が、
「 おーい!」
から、
「 まってくれ~!」
にかわって、
「 たすけてくれ~、おいてかないでくれ~。」
になったんです。
で、そこでピンと着たんです。
これ、ドザエモンの声だって。
恥も外聞もなくガタガタ震えてたら、今度は船のヘリを誰かが叩くんです。
” バンバン!バンバン!”
凄い音です。
そして、相変わらず生臭い臭いがしてます。
それなりに波のある状態でしたが、波のうねりとは違う揺れが唐突に船を突き上げました。
” グラッ!”
と揺れた感じで慌てて船にしがみ付いたら、自分の指先になんとも言えない、
” グニャ!”
って感じの感触がありました。
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