一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

上村一夫『関東平野』

2007-02-19 | 乱読日記
昨日の立美堂つながりでマンガの話を取り上げようとするとキリがなくなってしまうのですが、何か一冊取り上げるとしたら、上村一夫の『関東平野』だと思います。

これはジャンル的には「劇画」(今も言うのかな?)にあたります。
作者の上村一夫は「昭和の絵師」と異名をとった人で、独特のタッチで描く女性の画(参照)で劇画ファンの間では有名な作家です。
昔由美かおるの主演で話題になった『同棲時代』(子供の頃の僕でも名前だけは記憶があります)の原作者としても有名です。

実はこの本を読んだ動機はかなり不純です。
当時はAVはおろか上質なエロ本などもなく、中高生にとっては専門のエロ劇画(ただ、これは置いている書店が限られてました)や濡れ場の多い大人向けの劇画はなかなか魅力的な存在でした。

この本を手に取ったのは高校生の頃は、『同棲時代』の作者の本だから・・・などという不純なものだったと思います。

話は自伝的な話で、終戦直後の千葉県の片田舎で育った作者と幼馴染の銀子という女の子の格好をした男の子を中心に、戦後の混乱期の欲望をストレートに出した人間模様を描いています。

読んでいて風景の画の美しさと、そこでの人間模様の業の深さ、そしてそれを美しく描いてしまう力量に圧倒された記憶があります。

上村一夫は45歳で夭折してしまいましたが、昨年没後20周年記念で復刻版が出たと知り、思わず購入してしまいました。


今読むと改めて味わいの深い作品です。


PS 
wikipediaをみると『寄生獣』の岩明均は上村一夫のアシスタントだったそうです。

また、オフィシャルサイト(没後20年でコンテンツが人気があるところがすごい)を見ると「寺内貫太郎一家2」のタイトルバックを手がけていて、本人も酔っ払いの役で出ていたんですね。
コメント (5)
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