時津風親方問題は、そもそも年寄株制度など相撲協会のありかたの議論にひろがっていくように思います。
日本相撲協会のHPによると
■目的と運営
財団法人日本相撲協会は、公益法人として自らの寄附行為とその細則により運営されています。我が国固有の国技である相撲道を研究し、相撲の技術を練磨、その指導普及を図るとともに、これに必要な施設を運営しながら、相撲道の維持発展と国民の心身の向上に寄与することを目的としています。なお、協会の運営は理事会の決議により決定いたします。■協会の構成員
力士を引退して年寄名跡を襲名継承したものがその運営にあたり、各相撲部屋は力士を養成する場として、協会に登録された力士を指導養成します。また、入門する力士志望者、および一般の希望者を指導しています。勝負を裁く行司、土俵の構築や力士の呼び出しや競技の進行をつとめる呼出、力士の髪を結う床山、および若者頭、世話人も協会に所属して養成されています。運営の一部は一般職員がその業務を行ないます。
とあり、「協会員紹介」をみると親方衆が「理事」とあいて名を連ねています。
でも、財団法人(=公益法人)で「力士を引退して年寄名跡を襲名継承したもの」しか理事になる資格がないというのはいいのでしょうか。
財団自体が「相撲道の発展」を目的としているので力士OBとか三役経験者に限るのならまだわかりますが、(1億円くらいするといわれる)年寄株を買わないと理事の候補者にもなれないというのはおかしいと思います。
少なくとも理事になるために業界団体で流通している権利を億単位の金を払って取得しなければいけないような財団法人というのは他にないのではないでしょうか。
新「時津風」親方9日に誕生
(2007年10月7日(日)06:13 スポーツニッポン)
伊勢ノ海親方(元関脇・藤ノ川)は「(後継者発表は)9日までありません。特例として猶予期間を与えているし、十分時間を使って検討するでしょう」と話したが、ある関係者は「既に引退の準備に入っている」と明かした。継承手続きの期限は9日と定められており、それまでに現在所有している年寄名跡「錦島」を弟弟子の十両・霜鳳か、一門の他の力士らに譲渡。9日の理事会で承認を得ることになる。
にもあるとおり、年寄株を譲り受けることが相撲協会の会員(しかも「解雇」されうる会員)になるための条件になっているようです(今回時津風親方が「解雇」されましたがそもそも本当の雇用契約だとすると雇用の前提として多額の物品・権利の購入を強制するのは問題です。)。
さらに、年寄株の譲渡を受けたとしても協会の承認を得られなければ意味がないとすると、万が一承認を受けられなかった場合を譲渡契約の解除条件にしておかないと(普通のビジネスなら)危険です。
実際は根回し(や逆に協会からの指導?)が事前になされるのでしょうが、そうだとすると実質的には親方株は相撲協会が親方に「退職金」を払ってやれ、と後継の親方に強制するというしくみに他ならないように思えます。
公益法人についてはその運営の透明性などがここ数年課題となっていたはずで、財団法人公益法人協会(これ自体屋上屋の典型のような団体名ですが・・・)のサイトにある公益法人白書(公益法人に関する年次報告)からによると
(指導監督体制の充実、ディスクロージャー)
政府は、公益法人に対する厳正な指導監督をさらに徹底するため、平成13年2月、「公益法人の指導監督体制の充実等について」の申合せを行いました。
その内容は、次のようなものです。
① 各府省に公益法人指導監督官を置くなど指導監督の責任体制を確立する
② 立入検査について少なくとも3年に1回実施するなどの充実を図る
③ 一定規模以上の公益法人に対する外部監査要請等について所要の措置を講ずる
(情報公開の状況)
・法人サイドのディスクロージャー
「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成8年9月20日 閣議決定)及びその後決定した「同 運用指針」において、公益法人は、①定款(社団法人)又は寄附行為(財団法人)、②役員名簿、③社員名簿(社団法人のみ)、④事業報告書、⑤収支計算書、⑥正味財産増減計算書、⑦貸借対照表、⑧財産目録、⑨事業計画書及び収支予算書を主たる事務所に備え付け、請求があった場合には、原則として一般の閲覧に供することとされています。
となっています。
今回のように協会からの育成費水増しなども発覚すると、文部科学省としては日本相撲協会だけでなく親方衆の部屋運営まで監督や外部監査に入らざるを得なくなるのではないでしょうか。
結局時津風親方の行為は「かわいがり」か「リンチ」かはともかく、結果としては自傷行為になってしまったのではないかと思います。