老舗やブランド品の偽装が相次いで発覚しています。
比内地鶏の薫製を偽装 秋田の業者「10年前から」
(2007年10月21日(日)03:20 朝日新聞)
秋田県の特産で、「日本三大地鶏」の一つとして知られる比内地鶏で、加工商品として出荷した薫製の肉や卵に、比内地鶏でない鶏を使用した疑いがあるとして、秋田県は20日、同県大館市の食肉加工会社「比内鶏」(藤原誠一社長)を景品表示法などに触れるとして立ち入り調査した。同社は偽装を認めているという。
BSE問題以降(鳥インフルエンザ前)の地鶏ブームのときに、「そんなに急に地鶏が育てられるわけないよな」と思っていたので、まあ、そんなこともあるか、という感じです。
赤福については、関東ではあまりなじみがないのと、個人的には甘いものはあまり食べないうえに、出張の土産などでは定番から少しはずしたものを選びたがる性格なので、あまり縁がありませんでした(その意味では「白い恋人」も同じです。)。
下の記事を見ると、内部告発者保護のために調査に手間取ったということがあるようです。
<赤福>消費期限偽装 3年前から問題視 内部告発受け、大阪工場で調査
(2007年10月20日(土)15:25 毎日新聞)
老舗和菓子メーカー「赤福」(三重県伊勢市)の消費期限偽装問題で、04年7月と8月、店頭からの持ち帰り商品の再包装に関する内部告発とみられる情報提供を受けた大阪市が、赤福大阪工場(大阪市淀川区)を調査していたことが20日、分かった。(中略)
大阪市によると、04年7月ごろ、「赤福が大阪工場で商品のリパック(再包装)をしている」との情報が匿名で寄せられた。ただ、通報者は自分が特定されるような調査はやめてほしいと強く要望。(中略)
このため、大阪市は特定の目的によるものでない平常調査という形を通報者に提案、調査の過程で偽装を確認できれば問題にできると伝えた。その後7月と8月の2度にわたり、調査を行ったが、偽装は確認できなかった。通報者の立場を重くみて三重県などにも伝えていなかったらしい。
関係者は「当時から赤福内部でも消費期限偽装を問題視する動きがあったが、口にするのはタブー視されていたのかもしれない。この時確認できるか、三重県などと連携ができていれば、もっと早く不正をやめさせることができたのだが」としている。
けっこうこの手のことをやっている食品メーカーは、今後(または赤福同様富士や事件発覚以降などに)偽装をやめたとしても、過去の行為の内部告発に悩み続けることになります。
独占禁止法改正により導入された課徴金減免(リーニエンシー)制度という自首をするとお咎めを軽くするしくみを導入しています。
しかし、ブランドのある食品会社などでは、たとえ厚生労働省が「自首をしたら過去の分はお咎めなし」と言ったとしても、消費者に対するイメージダウンは避けられません。
つかまった会社は「外部も入れての調査、経営者も含めての責任追及、再発防止策の策定」という三点セットで再起がはかれますが、「まだつかまっていない会社」はかえって身動きが取れない、という状況にあるのではないでしょうか。
「今後は偽装をやめろ」などという正式な社内通達を出すわけにも行かないですし・・・
教科書的には、潔く過ちを認めて再起を図るというのが正解なのでしょうが、消費者が自首を前向きに評価してくれるかどうかはわかりませんし、そのときのダメージも予測できません。
また、上場企業だと取締役は辞任だけでなく代表訴訟リスクもあり、一文無しになる可能性もあります。
そういう状況で「摘発されない可能性」を考えたりするとなかなか自首もしにくいように思います。
この状況をリスク・リターンで考えると軽微な偽装は自首したほうが得で、自首したとしても企業イメージが決定的に毀損するような悪質な偽装は自首しない方が得(=悪質な偽装ほど隠蔽するインセンティブが働く)になります。
他人事だと理屈で切れてしまいますが、自分が未摘発の偽装をしている会社の社長の立場だとすると、素直に「自首しよう」とは言えない感じもします。