一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

達人と精密機械

2007-10-13 | キネマ
ザ・シューター/極大射程 を観ました。

原作の『極大射程』は、2000年「このミステリーがすごい!」の海外作品部門で第1位になったときに読んで非常に面白かったので映画館で観ようかと思っているうちにDVDになっていました。

原作の設定では主人公はベトナム戦争での海兵隊狙撃手だったのですが、映画ではエチオピア平和維持軍に派遣された海兵隊の狙撃手という設定になっています。

ただ、時代設定を変えながらも原作のプロットを生かしたよくできた脚本になっています。
また、狙撃シーンの映像も(実際の狙撃は見たことがないのですが)リアリティがあり、人が沢山死ぬのに抵抗がなければ楽しめる映画です。

残念なのは、主人公が原作の「精密なライフルがだけあればいい」(確か原作にはそんなフレーズがあったような)というような求道者的な姿勢で描かれておらず、有能な海兵隊員の域を出ていないところです。
原作では森林の中で敵のスナイパーを発見するコツについて「自然界には直線はない。だから直線でできたものを探す」と(これまたうろおぼえですが)いう科白に、まるでガウディか村野藤吾のようなことをいうなと感心したのですが、映画では主人公はひたすら狙撃の名人としてでか描かれています。
そして、オクラホマの自然の中で暮らす男と都会の組織の対比など、原作の背景に流れるトーンも欠けています。
設定の違いから仕方ないのかもしれませんが、最後の5分に追加されたシーンで、結局ランボー風な終わり方になってしまっているのが残念です。

映画単独で見れば及第点かもしれませんが、原作の方がはるかにお勧めです。
原作者のスティーヴン ハンターは同じボブ・リー・スワガーを主人公にしたシリーズ(さらにはその父親アール・スワガーの人生まで遡るのですが)を数作書いていますがいずれもスリリングかつストイックな主人公の造形が魅力的です。






コメント (2)
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