小飼弾さんのブログで紹介されていたのがきっかけ(だったと思う)で読んだ本『未来を予測する技術』
これは、地球全体の気象状況などを丸ごとシミュレーションできるレベルのスーパーコンピューターを世界で初めて開発した日本の研究者(正確にはそのセンター長)の書いた本です。
前半はコンピューターやスーパーコンピューターの歴史、それらが単なる演算速度などの直線的な進化の過程でなく、斬新な設計思想によるブレイクスルーがあったことなどがわかりやすく解説されています。
ここの部分だけでも読む価値はあります。
そして後半は著者が所長を勤める「地球シミュレーションセンター」のスーパーコンピューターにより、さまざまなシミュレーション(=未来を予測する技術)が可能になり、また、課題は何か、ということが書かれています。
このコンピューターにより、地球を大気は100km、海洋は30kmのメッシュに分けて地球の気象変動を「地球丸ごと」解析することが可能になりました(技術的には数キロメッシュまで可能だとか)。
その結果、たとえば2004年7月の東京を襲った熱波の気流の流れを逆に辿ると地中海の東岸辺りに熱波の源流があることがわかるそうです。(ガザ地区での爆弾テロや軍事行動は他人事ではないわけです。)
一方で、シミュレーション技術の進歩は新たな課題に直面します。
上の気象シミュレーションは、気流や海流というマクロなスケールの動きを計算しているのに対し、実際の気象現象はマクロな大気の流れとはまったく異なる微粒子のミクロな物理プロセスに左右される雲に影響されます。
しかし水蒸気のサイズはミクロン以下で、大気のサイズは最大10万平方キロもあるため、それらを同時に丸ごと解析することはでない(そういうコンピューターを作ること自体が未来においても不可能)ということです。
このマクロとミクロの機械性能では埋められないギャップを埋めるのが計算のアルゴリズム(=人間の知恵)です。
その対応は大きく言って①様々なマクロ状態をパラメーターとして与えた場合のミクロシミュレーションをあらかじめ行っておく、②マクロの状況とは独立に突発的に起こるミクロ相での変化については、その変化の起こりそうな相の近傍のマクロのグリッドについてのみミクロシミュレーションを行う、という2つの方法があります。
そして著者は今後そのマクロとミクロの間をつなぐアルゴリズムを進化させることで、未来を予測する技術は発展することを示唆して未来への希望を語っています。
そういう科学読み物としても十分面白いのですが、ナマグサな世界に生きている私としては「マクロとミクロを知恵でつなぐ」というところが個人的には印象深かったです。
組織でもマクロ(経営戦略)だけが先走ってミクロ(従業員個々の行動やインセンティブ)が追いつかないケースや、ミクロの議論からのボトムアップを優先した結果合成の誤謬に陥ってしまいマクロ的にはとんでもない意思決定をするケースはままあります(一連の偽造事件などは典型かと。)。
また、組織の特性だけでなく、個々の管理職のマネジメントのスタイルもマクロ寄りの人とミクロ寄りの人に分かれるような感じがします。
そして自分のスタイルにない部分を補完してうまくバランスをとった意思決定をするというのはなかなか難しいことです。
シミュレーションにおける上の①と②の解決は、組織運営の世界においては、①は「こういう経営の意思決定をしたら従業員・現場はこう考えるだろう」という検証をし、②は不具合が起きがちな現場に特に目を光らせる、ということになるかと思います。
これらはマネジメントにおいてよく言われていることなんですよね・・・
そして実は一番大事なことは「マクロとミクロをすべて丸ごとシミュレーションできるようなコンピューターは未来永劫できない」--どんなに精緻な予測も限界があるということ=「完全」を目指しても限界があるということ--それは「無理をするな」であったり「謙虚になれ」という示唆ではないかと思いました。
これは、地球全体の気象状況などを丸ごとシミュレーションできるレベルのスーパーコンピューターを世界で初めて開発した日本の研究者(正確にはそのセンター長)の書いた本です。
前半はコンピューターやスーパーコンピューターの歴史、それらが単なる演算速度などの直線的な進化の過程でなく、斬新な設計思想によるブレイクスルーがあったことなどがわかりやすく解説されています。
ここの部分だけでも読む価値はあります。
そして後半は著者が所長を勤める「地球シミュレーションセンター」のスーパーコンピューターにより、さまざまなシミュレーション(=未来を予測する技術)が可能になり、また、課題は何か、ということが書かれています。
このコンピューターにより、地球を大気は100km、海洋は30kmのメッシュに分けて地球の気象変動を「地球丸ごと」解析することが可能になりました(技術的には数キロメッシュまで可能だとか)。
その結果、たとえば2004年7月の東京を襲った熱波の気流の流れを逆に辿ると地中海の東岸辺りに熱波の源流があることがわかるそうです。(ガザ地区での爆弾テロや軍事行動は他人事ではないわけです。)
一方で、シミュレーション技術の進歩は新たな課題に直面します。
上の気象シミュレーションは、気流や海流というマクロなスケールの動きを計算しているのに対し、実際の気象現象はマクロな大気の流れとはまったく異なる微粒子のミクロな物理プロセスに左右される雲に影響されます。
しかし水蒸気のサイズはミクロン以下で、大気のサイズは最大10万平方キロもあるため、それらを同時に丸ごと解析することはでない(そういうコンピューターを作ること自体が未来においても不可能)ということです。
このマクロとミクロの機械性能では埋められないギャップを埋めるのが計算のアルゴリズム(=人間の知恵)です。
その対応は大きく言って①様々なマクロ状態をパラメーターとして与えた場合のミクロシミュレーションをあらかじめ行っておく、②マクロの状況とは独立に突発的に起こるミクロ相での変化については、その変化の起こりそうな相の近傍のマクロのグリッドについてのみミクロシミュレーションを行う、という2つの方法があります。
そして著者は今後そのマクロとミクロの間をつなぐアルゴリズムを進化させることで、未来を予測する技術は発展することを示唆して未来への希望を語っています。
そういう科学読み物としても十分面白いのですが、ナマグサな世界に生きている私としては「マクロとミクロを知恵でつなぐ」というところが個人的には印象深かったです。
組織でもマクロ(経営戦略)だけが先走ってミクロ(従業員個々の行動やインセンティブ)が追いつかないケースや、ミクロの議論からのボトムアップを優先した結果合成の誤謬に陥ってしまいマクロ的にはとんでもない意思決定をするケースはままあります(一連の偽造事件などは典型かと。)。
また、組織の特性だけでなく、個々の管理職のマネジメントのスタイルもマクロ寄りの人とミクロ寄りの人に分かれるような感じがします。
そして自分のスタイルにない部分を補完してうまくバランスをとった意思決定をするというのはなかなか難しいことです。
シミュレーションにおける上の①と②の解決は、組織運営の世界においては、①は「こういう経営の意思決定をしたら従業員・現場はこう考えるだろう」という検証をし、②は不具合が起きがちな現場に特に目を光らせる、ということになるかと思います。
これらはマネジメントにおいてよく言われていることなんですよね・・・
そして実は一番大事なことは「マクロとミクロをすべて丸ごとシミュレーションできるようなコンピューターは未来永劫できない」--どんなに精緻な予測も限界があるということ=「完全」を目指しても限界があるということ--それは「無理をするな」であったり「謙虚になれ」という示唆ではないかと思いました。
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