一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『日中戦争下の日本』

2007-10-18 | 乱読日記

著者の問題意識は以下に集約されています。

私たちは、戦争責任を問う前に、日中戦争をめぐる「社会システムの不調」の原因を明らかにし、「多様なファクターの累積効果」として、日中戦争が拡大した過程を追跡するべきである。

そして『日中戦争下の日本』 というストレートなタイトルにふさわしく、200ページ程度の量の中で丹念に史実を拾い、政党や、労働者、農民がどのように自発的に戦争に協力していき、大政翼賛会を作り(それは戦前デモクラシー、政党政治の紆余曲折の結果として語られます)、そしてその体制が崩壊していくかを描いています。

労働者は資本家に対して、農民は地主に対して、女性は男性に対して、子供は大人に対して、それぞれが戦争をとおして自立性を獲得することに掛け金を置いたからである。国民は、被害者である前に、ましてや加害者意識を持つこともなく、戦争に協力することで、政治的、経済的、社会的地位の上昇をめざした。

しかし、戦争末期は戦況の悪化と物資不足により、平準化の目標が生活の向上から、上の人間を引きおろす、という「下方平準化」の方向に進んでしまいます。


(著者はそうは言っていませんが)日本人全体としての戦中派の人の「被害者意識」というのはこの辺に端を発しているのかな、とふと思いました。


 






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