著者は、主にアーリーステージの会社への投資と育成を「ハンズオン」というスタイルで行っている現役のベンチャーキャピタルリストです。
「ハンズオン」とは本書によると「投資先企業に対して積極的な経営関与を行う」スタイルを言います。
(このへんの世界には明るくないのですが、逆に言えばお金をドンと(またはちょびっと)突っ込んで「果報は寝て待て」というスタイルのベンチャーキャピタルも結構いるということなんでしょうか。)
話を元に戻すと、著者は自らの経験から、(本書はタイトルにもあるように)企業の継続的な成長には「愚直な積み重ね」が大事である、ということを様々な形で説いています。
いわゆるよくあるビジネス本が「成功の秘訣」を説くのに対し、著者はこういいます。
成功を望む起業家は、勝因と言う青い鳥を探しがちです。しかし勝因は結果から逆算した寓話であり、実際にはほとんど役に立ちません。成功のために本当に重要なことは、成長に至るまでの歩み方です。
本書の特徴は、「愚直な積み重ね」がいかに大事かを説くのでなく、それが如何に難しいか、を著者の実体験から語っているところにあります。
たとえば「仮説と検証が重要」と言うのでなく、仮説を立てる際にどのようなバイアスがかかるか、仮説をそのまま実行しないことがいかに多いか、結果を冷静に検証することがなぜ難しいか、そして検証の結果を次の仮説に生かせないのはなぜか、について様々な切り口で説明してくれます。
本書は99の節に分かれています。
それぞれに起業や企業経営だけでなく人生にも役立つような教訓が数多く含まれているので、その中から、自分の心に響く言葉をいくつか見つけることができれるのではないかと思います。
僕が一番印象に残ったのは
わかったのであれば、変わっていなければいけない
という言葉です。
行動を変えさせる側、リーダーシップ論から言えば、行動が変わらなければ「わかった」ことにはならない、という言い方になりますしし、現に節のタイトルはこっちでしたが、僕は逆に本文の中にあるこの言葉に、自分自身への戒めとして心に響くものがありました。
余談ですが題字・装丁が長友啓典、イラスト(下の写真の表紙の右側にバンザイしている人の絵)が黒田征太郎、というコンビも僕の世代的にはうれしいです。
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