毎年 この日になると 妻は夫に尋ねます。
「 今日は 何んの日じゃったかねぇ? 」
「 え~とぉ‥‥ 〇〇の給料日じゃったね 」
長年勤務した 会社の名前を答える夫です。
お昼前に帰ると
「 こんばんは メシでも食いにいくか 」
半日経って 今日が 何んの日じゃったかを 思い出したようです。
昨日は結婚記念日で それが何度目かは 子どもの歳を繰らないと
浮かばんようになりました。
お互いの誕生日にした外食は いつの間にやらやまっており 唯一残っている結婚記念日の
外食も ラーメン店 お好み焼き 回転寿司と 運動ぐつで行く店ばかりとなり ワインの乾杯
など もちろんありません。
今回は夫の希望で 中華になりました。
26歳と23歳の若いカップルは 41年前の昨日 多くの人たちに祝福されていっしょになりました。
2人の門出を祝ってくれた4人の親も 3人はすでになく 今は妻の母だけが残り 息子は今年
不惑の年を迎えます。
さかのぼること 41年前のこととなります。
火ばしのように痩せた男は 妻の条件として とにかく ふっくらした女性を選びたかったそうで
その条件だけは満たしておった女は それまでにモテたことがなかったため 生まれて初めて受けた
プロポーズに すっかり頭がのぼせて 深く考えることなく ええよ OKと言いました。
ときは流れ41年経ち かつてのふっくら妻は その段階を通り過ぎた大デブとなり こちらもかつての
火ばし男は 受診のたびに メタボを注意される体型となって 歴史はちゃんと刻まれました。
お互い見つめ合うまなざしもなく お互いをねぎらう言葉もなく 担担麺を食べながら夫が発した
「 辛いもんを食べたら えらい 頭から汗が出るねぇ 髪が薄うなったがじゃろか 」
それを聞き 妻が発した
「 いかん いかん 8時からインテルの試合がある 早よぉ 帰らにゃいかん 」
「 長友がスタメンで出るき いのぉ いのぉ! 」
ここだけは新婚時と同じく ぴったりと息が合い 老夫婦の結婚記念日は終わりました。