国内の事故やスポーツなどで脊髄の中枢神経が傷つく脊髄損傷。慢性期脊髄損傷患者の人数は20万人以上おり、毎年5千人超が新たな患者になっていると推計される。哺乳類の脳や脊髄の神経はいったん損傷すると、損傷部にかさぶたのような物体ができて再生を妨げるため、ほとんど元に戻らない。近年では集学的医療の進歩によりその平均余命は飛躍的に向上しているが、損傷脊髄そのものを治療する方法は、いまだ確立されていない。
京都大の高田昌彦教授や大阪大のグループが発表(1月5日付けの英専門誌電子版に掲載)。
脊髄損傷で手・指がマヒ(運動機能を失った)したサルに対し、神経の再生を促す抗体を投与したところ、指の機能を回復させることに成功した。
グループは脊髄損傷後に、損傷部に増加し神経の修復を妨げる”RGMa”というタンパク質に着目。このタンパク質の働きを抑える抗体をマウスから作製し、サルに使用した。いずれも手の指がまひした脊髄損傷直後のアカゲザル4頭に対し、4週間にわたりチューブを使って直接患部に抗体を投与。その結果、約2ヵ月半後には、小さな隙間に入れた餌を指でつまみ上げる細かい動作ができるようになり、損傷前に近い状態まで運動機能が回復した。グループは、傷ついた神経が投与後に再生し、筋肉の動きなどを支配する神経と接続したことを確認した。健康なサルと比較すると、少なくとも8割以上の機能が回復した。
この研究グループは田辺三菱製薬とヒト用の抗体を開発。脊髄の中枢神経が、がん転移による圧迫で損傷した患者に対し、早ければ年内にも阪大が中心となって臨床試験(治験)を始める。
◆RGMa(Repulsive guidance molecule-a)
胎生期における網膜の神経細胞の軸索誘導や神経管の閉鎖に関与。
神経細胞の突起伸長の阻害、細胞接着、細胞遊走など多彩な機能をもつ細胞膜たんぱく質。免疫応答を制御する機能もある。
京都大の高田昌彦教授や大阪大のグループが発表(1月5日付けの英専門誌電子版に掲載)。
脊髄損傷で手・指がマヒ(運動機能を失った)したサルに対し、神経の再生を促す抗体を投与したところ、指の機能を回復させることに成功した。
グループは脊髄損傷後に、損傷部に増加し神経の修復を妨げる”RGMa”というタンパク質に着目。このタンパク質の働きを抑える抗体をマウスから作製し、サルに使用した。いずれも手の指がまひした脊髄損傷直後のアカゲザル4頭に対し、4週間にわたりチューブを使って直接患部に抗体を投与。その結果、約2ヵ月半後には、小さな隙間に入れた餌を指でつまみ上げる細かい動作ができるようになり、損傷前に近い状態まで運動機能が回復した。グループは、傷ついた神経が投与後に再生し、筋肉の動きなどを支配する神経と接続したことを確認した。健康なサルと比較すると、少なくとも8割以上の機能が回復した。
この研究グループは田辺三菱製薬とヒト用の抗体を開発。脊髄の中枢神経が、がん転移による圧迫で損傷した患者に対し、早ければ年内にも阪大が中心となって臨床試験(治験)を始める。
◆RGMa(Repulsive guidance molecule-a)
胎生期における網膜の神経細胞の軸索誘導や神経管の閉鎖に関与。
神経細胞の突起伸長の阻害、細胞接着、細胞遊走など多彩な機能をもつ細胞膜たんぱく質。免疫応答を制御する機能もある。