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アルツハイマー病の兆候を血液や鼻の粘膜から診断する

2018-12-25 | 医学
 アルツハイマー病の兆候を血液や鼻の粘膜から診断する手法が相次いで開発されている。
 京都府立医科大学の徳田隆彦教授と建部陽嗣助教らは、「リン酸化タウ」とくっついて光る物質を目印にする測定法を開発した。光の強さで量がわかり、0.1ミリリットルの血液があれば検出可能、と言う。
 アルツハイマー病は発症が近づくと、脳内に「リン酸化タウ」という原因たんぱく質が蓄積する。原因たんぱく質は血液や鼻の粘膜に含まれるが微量で、早期の診断には現在、背中から針を刺して脳脊髄液を採取する必要があり、患者の体への負担が大きい。診断検査で、患者と症状が出ていない人の数十人を調べたところ、約8割の精度で区別できた。検査の費用は1万~2万円で、2時間ほどで結果がわかるという。徳田教授は「3~4年で大規模な臨床試験(治験)を手がけ、精度を確かめたい」と話す。
 鼻の粘膜には、においの刺激と脳に伝える神経細胞が伸びており、これを通じて「リン酸化タウ」が少しずつ漏れ出ている。
 滋賀医科大学の遠山育夫教授らの技術は綿棒で鼻の粘膜をこすり取って検査する。似たたんぱく質の中でタウたんぱく質が占める割合を精密に調べるとともに、BSE(牛海綿状脳症)検査や創薬研究などで使われる酵素免疫測定法(ELISA)を改良した。患者25人と健康な高齢者24人で比べたところ、「リン酸化タウ」は患者に多かった。7割程度の精度で見分けられるという。現在は製薬企業と協力し、さらに感度を高める技術の開発を進めている。2019年には、新技術を使った臨床試験を始める計画。
 ◆アルツハイマー病
 アルツハイマー病は、脳の神経細胞が減少、脳の中で記憶を司る「海馬」を中心に脳全体が萎縮、脳に「老人斑」というシミが広がる、脳の神経細胞に糸くず状の「神経原線維変化」が見つかる、などの変化が現れる。根本的な治療法はないが、早い段階で見つかれば薬や生活習慣の改善で進行を遅らせることができるケースもある。
 原因の一つに、脳の中にアミロイドβと呼ばれるタンパク質がたまり出すことが知られている。アミロイドβが脳全体に蓄積することで健全な神経細胞を変化・脱落させて、脳の働きを低下させ、脳萎縮を進行させる。蓄積は、発症する20~30年前からである。
 因みに、アルツハイマー病をはじめとする認知症患者の鼻腔内に、アミロイドβ(Aβ)やタウ蛋白、リン酸化タウ蛋白が含まれている事が分かった。
 ◆アルツハイマー病患者数
 WHOの統計によれば、2010年のアルツハイマー病患者は約3560万人で、2030年には約6570万人、2050年には1億1540万人に増える見込みだ。
 日本における、65歳以上の認知症患者数は462万人(2012年)と推定され、2025年には700万人を超えるとみられる。認知症の6割~7割がアルツハイマー病が占めるとされる。