宮地明人さんは1974年生まれ、岩見沢の画家。
今回の特別企画展では、2003年から近作まで大作14点と小品26点を展示していますが、とにかくうまい。
最初に展示してあるのは03年「Black Eye」(キャンバス、アクリル。1940×1620ミリ)。寒冷地用とおぼしき大きな帽子をかぶった女性を画面の下半分に配し、上方には、板などが張り渡されているように描かれています。
薄手のテープで . . . 本文を読む
(承前)
村上芳正は1922年(大正11年)長崎生まれ、2022年11月8日歿。
筆者は恥ずかしながら名前を知りませんでしたが、会場ですぐにピンときました。彼が装画を描いた原田康子「挽歌」の文庫本を持っており、その原画が展示されていたからです。
いささか生硬な線、肉付け感と陰影に乏しい肉体描写などから、おそらく独学だろうと想像していましたが、果たしてその通りでした。
(筆者はデッサン講師な . . . 本文を読む
(承前)
中村善策(1901~83)は小樽生まれの洋画家で、戦前は二科に出品、戦後は日展参事、一水会運営委員として活躍しました。明快な色彩と、独特な構図による風景画で知られます。
市立小樽美術館は改修後、展示室が三つになり、2階がメインの展示室で、1階を中村善策記念ホール、3階を一原有徳記念ホールとしています。この会期中は2階も中村善策の絵が飾られており、珍しく2室での大展開となっています。 . . . 本文を読む
札幌の松川修平さんの個展に行き、久しぶりに彼の絵を見ることができて、うれしかったです。
いまだから正直に言いますが、2008、09年に彼の絵をはじめて見たとき、その後長く描き続けていく人だとはあまり思っていませんでした。
当時から、誰にも似ていない、個性的な絵を描いていたのは確かです。
その頃は、人物の描き方やシチュエーションがいっぷう変わっていたのですが、20年代に入り、画風はさら . . . 本文を読む
ユニット「故郷2nd」の新作「超獣戯画 野生の立場」がおもしろいです。
墨一色で描かれた絵巻物の中味も良いのですが、それを見せるための大きな器械をわざわざ作るところがすばらしい。
右手のハンドルを回すと、絵巻物が右から左へと展開していきます。
絵巻物は一つの大きな輪になってシームレスにつながっている、シンプルな仕組みなので、巻き戻したりする必要はありません。
絵柄はもちろん、あの名高 . . . 本文を読む
札幌市には10の区がありますが、いわゆる区民芸術祭・舞台発表的なものとは別に、団体公募展の会員などによる絵画展を毎年開いているのは北区だけです。
いつも書いていますが、公募展で主流の100号クラスと、よく見かける小品との中間にあたる10~30号くらいの作品を見ることができるのも特徴だと思います。
冒頭画像、右は西村一夫さん(道展会員)「作品 FRO-213」(30号)。
オイルパステルで . . . 本文を読む
江別在住の工藤悦子さんは主体美術と新道展の会員。
大がかりな個展はそろそろ最後では―という声を聞いて会場に駆けつけましたが、誰ですかそんなことを言った人は。
たいへんお元気なので、安心しました。
以前、隔年か3年おきに札幌時計台ギャラリーで個展を開いていた頃と、ほとんど変わっておられないと感じました。
工藤さんの絵の特質は、美しい曲線のフォルムもさることながら、その精妙なマ . . . 本文を読む
歌舞伎で用いられている「伎」という文字。
複数の辞書によると「技/技巧」とともに「技なす人」、またその「技」の中に盛り込まれた「滑稽さ」や「愉しむ/愉しませる」という「あそび」の要素も併せ持っています。「仲間」という意味も。
本展は11人の版画作家による展覧会ですが、版画というジャンルが一般にイメージする版材を刻み紙面へ「移す/写す」などといった「複数化/置換/間接的」という行為から現代では録音や . . . 本文を読む
札幌のベテラン抽象画家による2人展。
さいとうギャラリーの手前の部屋(南側)のうち、縦長の部分(冒頭画像で左側)を赤石さんが、左に張り出した部分(冒頭画像で右側)を丸藤さんが、それぞれ使い、十数点ずつの絵画を出品していました。
この2人を含む3人展は過去にありますが、2人展は初めてとのこと。
赤石さんは、すべての作が「A walk」という題です。
支持体はキャンバスではなく、 . . . 本文を読む
会場の奥に小さなデッサンが掛けてありました。
「彫刻家N氏の像 非売」
とあります。
先ごろ亡くなった二部黎さんです。
二部さんはあちこち転居した人でしたが、空知管内長沼町の前、夕張市清水沢の閉校した学校跡をアトリエにしていた時代があったそうです。その頃に描いたものだとのこと。
二部さんはニット帽のイメージが強いのですが、じつは20年以上も前から禿頭だったのですね。
あらためて故 . . . 本文を読む
美術全集や教科書のように、きれいに「日本画の世界」をまとめて見せた右側の展示室に対し、左手の、所蔵品展に用いられることの多いスペースでの「揺さぶる絵」展は、なかなか攻めています。道立近代美術館・釧路芸術館に加えて、豊橋市美術博物館や東京国立近代美術館からも作品を借り、戦後、著しく変化を遂げた日本画の諸相を見せているのです。
キュレーター(道立近代美術館の学芸員)が図録で述べているように
「本 . . . 本文を読む
「「スーホの白い馬」の画家 赤羽末吉」と題する特別展が、9月から11月7日まで道立文学館(札幌市中央区中島公園)で開かれていました。
この絵本作家の画業については見識のある方が説明するでしょうから、ここではよけいな批評をつけくわえることは差し控えます。また「スーホの白い馬」は、モンゴルの民話ではなく、戦後の中国共産党の階級闘争史観が混入しているのではないかという、説得力ある意見があることについ . . . 本文を読む
吉川勝久さんは札幌の全道展会員。
故玉村拓也さんの跡をついで、「GEM木版画展」に出品する道新文化センターの講師を務めていますが、意外にもこれが初の個展だそうです。
玉村さん同様、木版画らしい肥痩のある元気な線が画面に走りますが、最大の違いは、玉村さんがキュビスムに影響されたとおぼしき、直線を多用した画面なのに対し、吉川さんの作品には、風のように曲線がぐるぐると躍っていることだと思います。 . . . 本文を読む
全国的な水彩の団体公募展のうち道内では、日本水彩画会(日水)と水彩連盟の二つが毎年支部展を開き、見応えのある展示を続けています。
水彩連盟は毎年4月に国立新美術館(東京・六本木)で公募展を開催しています。北海道支部展は秋なので、来春出す作品をまず見せて先輩や同僚の意見を仰ぐ人も、半年前に東京で展示した作品を持ってくる人もいるようです。
冒頭画像の左は、竹津昇さん「父のいたところ」。F100 . . . 本文を読む
山崎亮さんは札幌の道展会員。
以前は札幌時計台ギャラリーで1年おきに個展を開いていました。2004年の個展からは、空から見た風景をメインの画題に、オーソドックスな画風で筆を執り続けています。
「山崎さん、昔は海底でしたよね」
と言うと、いったいそれはいつの話だという顔をされてしまいました(苦笑)。
冒頭画像の3点はいずれも「飛行機雲」。
「ユーミン」こと荒井由実(松任谷由実)の初期を代 . . . 本文を読む