中国共産党の御用学者 李稻葵によると中国指導部が、今の中国支配層の存続を図るべく、英国の歴史ー過去400年を、特にフランスとの違いを中心に研究を開始したという。これは薄熙来の提唱した毛思想への揺り戻しー革命への恐怖から出たものだが、同時に今年中に一人っ子政策や農民工制度の修正など中国経済の軟着陸政策を発表しようとしている習近平政権の動きと歩調を合わせたもの。もちろん、薄熙来の判決が見込まれる中、少しでもその衝撃を和らげるための理論武装の面もある。
李稻葵によれば、大英帝国の盛衰、特にフランスや米国、ドイツなどとの戦争の歴史および東インド会社に始まる植民地獲得の手法は中国にとって参考になるということだ。米国との独立戦争の轍を踏まない、ということで、実は米国への対抗なのかもしれない。また、植民地獲得の研究は南シナ海や尖閣列島のどの武力奪取にも役に立つと読んでいる。
しかし、かつて七つの海を支配した英国貴族には、それでもイートン校からオックスブリッジへと脈々と流れるnoblesse obligeが存在したが、賄賂と汚職にまみれ、ひたすら自己の蓄財と権力欲の実現、そして祖国を見捨てて家族を海外に脱出させることしか頭にない中国共産党指導部が、大英帝国に学べとは、まるで、1964年に、農業は大寨に学べ、工業は大慶に学べ、と叫んだ国らしくいかにも面妖である。