イギリスでは、再度のコロナウイルス感染拡大を受けて一旦緩和されてきた行動制限がまた厳しくなる。ロックダウン(都市封鎖)の後段階的に緩和されてきて最近では30人までの集会は許容されてきたがこれが再度厳しくなり、14日からは6人超の集会は禁止されることになった。いったんは収まったかに見えたイギリスの感染者数、8月中は一日当たり1000人程度まで減少していたのが、このところは3000人へと急増し、政府としてはこのまま放置すれば再度爆発的な感染が発生することを恐れたため。
これにより、例えば誕生会や、夕食会やその他の集まりは6人まで、に制限される。一方、政府は外食産業の復興のためにむしろ外食を奨励しているので、微妙なかじ取りだ。コロナの拡大は避けなければならないが、一方で外食産業も守らなければならないという、いわば二兎を追う戦略になっている。要するに大人数の集まりは駄目だが、少人数なら外食を勧めるような。ただ、学校、職場、必要なコロナ対策をした結婚式や葬式、団体競技などはこの制限の対象外となった。
この規制強化はイギリス全土、屋内か戸外かを問わずまた年齢も問わずに適用される。これにより、レストランやパブでは1か所で6人を超える人数での食事は出来なくなる。ただし、その詳細はまだ明らかになっていない。なお、違反者に対して、警察は初犯の100ポンドから累犯で最大3200ポンドまでの罰金を徴収する権限が与えられることになった。
こういう制限がなされると何だかかつての混みあったレストランが懐かしく思われてくる。いつも話し声で賑やかで、テーブルに着くまでに何度も体をひねらなければ通れないような人気のイタリアンレストランで思い出したのは、ロンドンの盛り場であるソーホーにあるQuo Vadis(クオ ヴァディス)。
この店の名前は、ゴーギャンが絵で「我々はどこへ行くのか?」と問いかけているのとは逆の、ラテン語のQuo Vadis(クオ ヴァディス)「あなたはどこに行かれるのですか?」という、聖書の中の聖ペテロとイエス・キリストとの会話からきている。
このレストランの味には定評があり、それだけでも日本から来た客をもてなすのに十分ふさわしいが、それ以上にこのレストランの上階にはカール・マルクスが妻子とともに住んでいた2部屋があり、頼めば食後に見学もできる、と言うのも引き付けられるところだった。ロンドンにいた当時(1980年代)はその2間は明りもなく家具もほとんど置いてない殺風景な部屋だったが、そこはマルクスが貧窮のなか、大英博物館に通って資本論を書き上げたところであり、かつてマルクスを学んだひとたちの興味を引いたのだと思う(その当時はまだソ連が存在していた)。ウエイターがローソクに明りを灯して階段を先導しこの部屋まで案内くれたのは良く記憶に残っている。
その後ロンドンへは何度も行っているが、どういう訳かこのレストランを訪ねたことはない。ただ、このレストランのホームページを見ると3階には個室がいくつか用意されていて、最大45人までの各種のパーティが出来る、とある。そしてその名前が「マルクスの部屋」となっているから、ひょっとしてあの部屋はいまでは改修されたのかもしれない。ただ、14日以降この部屋の収容人数は6人までに制限されるのだろうが・・・