強い風のせいで夜中に目が覚めた。建物の端を突っ切ってゆく強い風が虎落笛のような音を立てている。自然災害では、突風のうちに入るのだろう。家屋の屋根が吹き飛ばされたり木が倒れたりして道路が寸断されるのは良くあることだ。日本の台風やアメリカのハリケーンのようなものがその典型だろう。風と言う身近な自然現象でも時として牙をむく。
家の前の公園には正門から入ったところの両側に2列づつ、合計46本のポプラが植えてある。ポプラは成長が早いので、開拓地の風除けのためには便利な木だ。アメリカから移植されたポプラが防風の役目を果たしているのは北海道で、観光写真でも良く見かける。ただ、ポプラは決して強い木ではなく猛烈な風が吹くと倒壊してしまう。また、木そのものも材木としては不適だ。たぶん柔らかすぎて強度や耐久性に欠けるから、家などの材料には使われない。
樹形を整えるのが早いので短時間で良い景観を作る一方、大きくなりすぎたり、そのために倒れる危険性が増すのも早い。この公園のポプラは数年前に一度に、樹高三分の二ほどの高さで切り戻したおかげで安定感が増している。切り戻した直後はいささか不格好だったが今では全く違和感はない。自ら樹形を整える復元力と言うのか、自然、植物の生命力を感じる。特に、強い風が吹いた後に弱った小枝があたりに落ちていてそこから少し生々しい樹液の匂いが漂ってくることがあり、あたかも自身の体の一部を犠牲にして本体を守っているように感じることもある。
空を覆うようにして立つポプラ並木はなかなか壮観だ。だからゴッホもいくつかのポプラ並木の絵を描いたのだろう。風にもまれながら、葉を裏返しにして風を凌ぐ姿はたくましく、またいかにも頼りがいがあるように見える。公園の入り口で訪問者をしっかり守っているように。
青空を背景に、風が少し弱まった朝の公園のポプラ並木。
夕暮れのポプラ並木(ゴッホ)
ポプラの小道(ゴッホ)