回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

2020年09月26日 14時16分08秒 | 日記

先日、山道を車では走っていたら急に霧が出てきて視界が10メートルほどまで低下した。前の車のテールランプはすぐそこになるまで見えない。と言うことは自分の後ろを走っている車も同じような状況だろうから、追突されるのではないかと心配になる。こういう時は後ろが安全運転のドライバーだということを祈るしかない。後ろを気にしている余裕はないから、とにかく前方に神経を集中するしかなかった。

対向車はというといきなり霧に中から飛び出してくるようでこれまた怖い。すれ違うとすぐに霧の中に消え去ってしまう、まるで亡霊のようだ。そんな山道を30分ほど走って、峠を越えたら間もなく霧が文字通り霧消してほっとしたことがあった。その時は昼間だったからまだ良かったものの、夜だったらどうなったことかと思うと背筋に冷たいものを感じる。

最近の飛行機はもはや有視界飛行ではなく、計器に頼って飛行するが、着陸となるとやはり視界がどれだけあるかが問題なようだ。これまでに何度か霧による欠航や目的地変更を経験したことがある。その一つが、ロンドンからルクセンブルグへ移動しようとしたとき、ルクセンブルグ空港が霧のために着陸できず、近くと言うことでベルギーのリエージュに夜遅く到着したこと。ホテルはルクセンブルグに予約してあるし、翌日の仕事もあるので、車で移動しなければならない。いったんベルギーに入国してからだったので陸路の場合には特に国境での手続きはなかったように思う。

国が違うと言っても実際には人の往来はこの地域は自由だったので、1時間ほどでルクセンブルグまで到着した。ルクセンブルグは峡谷の間にあるような起伏に富んだ地形なので、気候の具合によっては良く霧が発生するらしい。しかし、近くに多くの空港があるので、仮に到着地変更となっても余り不便は感じない。例えてみれば成田空港と羽田空港の距離感のようなものだ、それに、東京などと違ってそれぞれ人口の少ない街なので交通渋滞もない。

ひとけのない、両側が森のようになっている夜の高速道路を走るのはどこかに趣がある。黄色い照明灯が霧の中に消えていく景色の中では、何か考え事をするのにも最適だ。その時は、かねてからの知り合いのドイツの銀行家R氏と会うためだった。ドイツ人銀行家と言うと長身のエリート風、そして傲岸と言う先入観を持つが彼は中背のいたって庶民的な、むしろ実直なイギリス人と言う雰囲気の人物だった。

R氏は自分とほぼ同年代だったが既に2回離婚の経験があり、その時は単身(独身?)でルクセンブルグの子会社の社長をしていた。彼とは10年来の知己だったので、遅い到着にもかかわらず夕食を共にし、その後すこしホテルのバーで酒を飲んだ。とりとめのない話に終始したのだが、彼の整った顔立ちを見ているとどうしてそんなに結婚、離婚を繰り返すのか理解できなかった。しかし、一般的に私生活のスキャンダルを嫌うドイツの銀行界で彼が順調に昇進しているところを見ると、おそらくは円満(?)に事が進んだのだろう。彼との仕事では馬が合うというのか、いつもお互いにフォローしあうような関係だった。会議に席などで、こちらの意見には、彼はどうしても反対と言うのでなければ最初に賛成の声を上げてくれたし、こちらも同様だった。無理なくそういうことができたのは不思議でもある。

温和な銀行家の顔と離婚を繰り返す私生活がどうにも結び付かない。彼はどことなく穏やかな霧でもかかっているような男だった。

(Wikipedia)

コメント (4)
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