07/1/8海保
うっかりミス
●うっかりミスとは
うっかりミスにつきましては、皆さんも個人的に色々な体験をなされているのではないかと思いますし、私もうっかりミス屋さんで、毎日毎日うっかりミスばかりやっております。
うっかりミスは、人間であることのあかしであるかのようにさえ思えてしまいます。
うっかりミスの現れは多彩ですが、その根本には、注意のコントロール不全があります。したがって、注意のコントロールを自分できちんとできれば、ある程度うっかりミスを防ぐことができます。
●うっかりミスの特徴のいくつか
うっかりミスの特徴の一つ。
それは、一瞬のうちにしかも無意識のうちにやってしまうこと、そして、多くのミスは、ミスするとすぐに気が付くことです。
誤字を書いた、しかし、それに気がついて、消しゴムで消す、ということなります。
このように、やってしまってから気が付いてすぐに訂正できるところに一つの特徴があります。したがって、ミスはするものとの前提で確認の水準を高めにすることで、事故への直結を防げます。
うっかりミスの特徴その2.
人間の行動速度と仕事の速度とが同期している場合には、うっかりミスはそれほど怖い事はありません。手で物を運ぶとか、金槌で釘を打つような状況ですと、人間の行動の時定数(変化への対応速度)と仕事のそれとがほぼ同期してますから、うっかりミスをしてもすぐにそれを訂正することによって元に戻すことができます。
ところが、機械を使った仕事をするようになりますと、人間の行為の時定数と機械の持っている時定数とに物凄いギャップが出てしまいまして、一瞬のミスが大事故につながってしまいます。
車の運転を考えてみてください。一寸脇見をした。信号無視をした。ブレーキを踏んでも間に合わないということになります。
このような事態では、うっかりミスそのものを起こさないようにしないといけないわけですが、非常に難しいことがおわかりかと思います。
ヒヤリハット事例の共有によって予測力や状況認識力を高めたり、技能を高めることによって、人間の行動速度・時定数を高めるしか方策はありません。
ただ、これをあまり強調いたしますと、例の精神論の復活になってしまいます。「たるんでるからエラーをするんだ」「精神を集中すれば事故は起こさない」と言うような話になってしまいがちです。
うっかりミス対策の王道は、うっかりミスは誰もがいつでもするという前提で、ミスをしても大丈夫な仕掛けを作っておくことです。これについては、後ほどふれます。
そのことを確認した上で、それでもこんなことに留意すると注意の自己コントロール力が少しは高まりますということを申し上げてみたいいと思います。
●注意の自己コントロール力を上げる
対策その1「仕事に必要な注意力を注ぐ」
当たり前のことですが、神話のごとき言説「集中せよ、さすれば仕事の能率はあがる」があまりに広く知れ渡っていますので、あえて、こんな対策を挙げておきます。
対策その2「注意の3x2特性を知る」
これについては、次のスライドで確認してください。
対策その3「10の注意のうち、3は管理用に取っておく」
注意は仕事が必要とする量だけ注げばよいのですが、さらに、その3割くらいは、注意の管理用にとっておくくらいの心がまえがあってよいと思います。複眼集中の状態を確保するためです。
対策その4「休憩の自己管理をする」
休憩は注意量の補給には必須です。あまり集中して仕事をしていると、つい休憩するのも忘れてしまいます。結果として、注意不足の状態に陥ってしまい、うっかりミスをしてしまいます。
自分なりの休憩管理を工夫する必要があります。
●うっかりミスを前提に安全環境を設計する
先ほど申し上げましたように、うっかりミスは、人間である限り誰しもがおかします。そのことをしっかりと認識した上で、その上で一つは注意の自己コントロールをして事故に繋げないという話しをしてみました。
もう一つは、安全工学です。
技術としてうっかりミスをおかしても大丈夫な物理的な仕掛けを、環境の中、組織の中に作り込んでおくことになります。これがうっかりミス対策の王道です。
フール・プルーフ(危ないことをするときは余計な操作を一つ追加)とか、インターロック(決められた順序を自然に守るように)であるとか、あるいは、最近心理学の方で使われているアフォーダンスとかです。
たとえば、アフォーダンス(affordance)について一言。
私が水が飲みたいとします。そうすると、このコップと水差しの大きさや形が水を飲む行為を自然に引き出すようになっているのが見えてきます。これがアフォーダンスです。
アフォーダンスについてもう一つ。
ドアのノブです。ドアのノブを回して引くか、回して押すかをアフォードするのが難しいのです。丸い形状で回すことはアフォードするですが、押すか引くかをアフォード出来ません。
たとえば、パニック状態になりますと、回して駄目ならもっと回す。押して駄目ならもっと押すと言う事が起こりますので、こういうところでのアフォーダンスも大事です。
これ以外にも、冗長性、多層防護なども、うっかりミスに対する対処のための安全工学上の仕掛けとして使われています。
●あなたのうっかりミスのしやすさは