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危険から社会と人を護る護心術

2007-01-10 | わかりやすい表現
06/1/7海保

ワードマップ 
安全・安心の心理学
危険から自分と社会を守る護心術
07年2月頃発売予定

海保博之・宮本聡介(常磐大学)著  *******
はじめに

「安全と水はただ」(山本七平)だったはずの日本の伝統的な「安全・安心社会」を脅かす犯罪、災害、事故が多発している。
世論にもそれが敏感に反映されている。たとえば、世論調査によると、
・日本人の86%が「10年前より安全な国でなくなった
 (2004年Gallup調査HPより) 
・「今の日本は安全・安心な国か」に対して55.9%が
 「そう思わない」としている(内閣府、2004)
 高リスク社会に対応するための個人的、社会的な諸施策もとられようになってきた。
 犯罪も災害も事故も、最後に被害を受けるのは人である。そこに心理学がかかわってくる。本書では、そのかかわりを考えるためのキーワードを拾って、心理学の立場から考えてみた。
 何がなんでも人の心の問題、あるいは心理学の問題に還元してしまう「心理主義」、あるいは「心理学化」には、問題の解決をも個人の心だけに求めてしまう危うさがある。しかし、人の心への配慮なしの制度的、法律的、組織的な安全、安心対策にもまた危ういところがある。
なお、あたかも「ゼロリスク社会」をめざすかのような極端な「管理」施策も一部ではみられる。「角を矯めて牛を殺す」ことになってしまうのも、まずい。「リスクとの共存」ができる社会をいかに作り出すかに周知を集めるべきであろう。
本書は、序も含めて5つの部から構成されている。
 序では、安全・安心の心理学の周辺を探ることで、安全・安心の問題を多彩な視点から論じてみた。
1部では、危険予知の心理と題して、あらかじめ想定される危険を予知し、それに備えることで、安全・安心を確保することにかかわるキーワードを取り上げてみた。
2部では、安全保持の心理と題して、安全、安心できる状態をできるだけ長く保持するための心の課題にかかわるキーワードを取り上げてみた。
3部では、犯罪、災害、事故に直面したときの対処にかかわる心理学のキーワードを取り上げてみた。
4部では、後処理で発生する心の諸問題にかかわるキーワードを取り上げてみた。

 なお、本書は、前著(田辺と共著)「ワードマップ ヒューマンエラーーー誤りからみる人と社会の深層」(新曜社)の発展的な本としての位置づけになる。1996年発刊されて以来まだ版を重ねているので、合わせてお読みいただければ幸いである。
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くたばれ、マニュアル!書き手の錯覚、読み手の癇癪」新曜社

2007-01-10 | 安全、安心、


海保博之 2002 「くたばれ、マニュアル!書き手の錯覚、読み手の癇癪」新曜社 1800円 より

エピローグ 

---マニュアルに学ぶドキュメント・リテラシー


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 プロローグでは、マニュアルの問題表現のいくつかを挙げて、「こんなマニュアルはくたばれ」をやってみた。

 エピローグでは、反対に、一冊のマニュアルのはじめからから終わりまでを想定して、優れたマニュアル表現から学べることをガイドラインとして提示してみた。広く文書設計一般にも応用可能なガイドラインにもなっている。それぞれの具体例は本書を参照してほしい。なお、ガイドラインはすべて横書きを想定している点に留意されたい。******************************


8.1 見返し(表表紙の裏)を見返す


●でき上りイメージを見せる

・あまり細かいところまでは見せないで、一目でわかるようにする

・内容は、その製品にしかできない機能を使って作成したもの、ユー ザの知的好奇心を刺激するものがよい

・ビジュアルに表現で直感的にわかるようにする

●その製品の特徴を知らせる

・ポイントとなる特徴点だけを数点以内にしぼる

・「これだけは絶対に」というものに限定する。

●機能一覧を見せる(これは、裏表紙の裏でもよい)

・内容的にも、表示の上でも、きちんと分類し、階層化して示す

・本文の参照ページも入れておく


8.2 見返しと目次の間はメタ情報の提供に使う


●マニュアルの体系の中でそのマニュアルがどこに位置するかを示す

●読み方を示す

・章全体の概要と関係を示す

・誰がどこをどのように読むかを示す

●表記上の約束を示す

・約束しなくとわかるな表現を工夫することが王道

・必要最低限の約束だけにしぼる


8.3 全体概観、参照を助ける目次にする


●全体を概観できるようにする

・全体を「見開き2ページ」以内に収める

・章の数も5-7章くらいまでにおさめる

●内容がわかる章、節タイトルをつける

・専門用語の使用は厳禁

・ユーザ/仕事に配慮したタイトルをつける

●ユーザのしたいことにマッチする構成にする

●情報を探しやすくする

・目次のレイアウトを階層化する

・階層の深さは3階層(章・節・小見出し)がよい

・項番(章、節、小見出しに付ける数字)を使う



8.4 仕切りとしての章扉を有効に活用する


●章扉は仕切りである

・奇数ページに入れる

・パラパラめくりでも目につくようにする

●章の内容がわかるようにする

・章の概要を入れる

・章の内容をイメージできるイラストを入れる

・節、小見出しのタイトルを入れる



8.5 各部の名称を教える


●ユーザにとって意味のない(役に立たない)名称ははぶく

●名称を羅列するだけでなく、整理分類して提示する

●名称を示すには、テクニカルイラストで、直接示す(凡例は使わな い)

●イラストを描く視点は、ユーザ側、そして、機械の右/左斜上に置く

・不必要に視点を変えたイラストは描かない

・側面や背面を描くときは、その旨をはっきりとわかるようにする

・全体を描く描く視点と部分を描く視点は一致させておく

●機械の全体を常に見せる

・一部分を示すときには、全体のどこにあたるかを示す


8.6 機械の組立て操作を説明する


●出来上がりを絶えず意識させる

●身体、とりわけ手の絵は豊富な動きの情報を担っているので有効に 活用する

●矢印も動きの表現には効果的

●ときには連続絵も効果的


8.7 カタカナ語をわかりやすくする


●原綴りを一度は示す

●2単語以上のカタカナ用語は、区切りをはっきり

・かなや中ポツ(・)を入れて区切る

●3語以上の英語をカタカナ語の連続で表現しない

・漢字やひらかなを混ぜる


8.8 専門用語をわかりやすくする


●専門用語を使わなくとも済まないかも考えてみる

・用語を覚えてもらう利点があるかどうかを考える

・「ここを押す」のようなビジュアル表現で済まないかを考える

●基本的な用語については、あらかじめモニターを使ってでも熟知度 を調べておく

●具体名は絵で、機能概念は解説する

●解説をする

・初出の箇所や脚注で、あるいは用語解説欄で用語の意味を解説する

・やや冗長なくらいの説明をする。

・できるだけ日常用語を使って説明する。

・機能、制約、使い方、構造のどれを中心に解説するかを考える。

・他の用語との関係(上位、下位、対比、類似など)を示す

・ダイアグラムや概念図などのビジュアル表現を使う

・たとえや具体例も使う


8.9 操作をわかりやすく説明する


●ユーザがその機械にごく普通に期待する機能群(デフォルト機能群) だけを、早く使わせる

●ユーザのタスクの世界に立ち戻ってマニュアルを構成する

●操作を指示するには、ビジュアル表現を有効に使う

・動きを説明する絵には手の絵や矢印を入れる

・時間的に前に起こることを表現するには、レイアウト上では、「左 に」「上に」置く

●文章表現も併用する

・1文1動作で

・絵と文とは内容的に重複してもよい

●操作例を入れる

・ユーザの馴染みの例を使う

●操作の意味を書く

・リード(冒頭説明)の中に、「目標」「全体」を示す

●操作と結果を仕分けて書く

・操作の記述と結果の記述は、見た目にもはっきり分けて書く

●操作のステップを適度に細かく

・「セットする」「選択する」といったマクロ化表現は要注意

・サ行変格活用動詞(カタカナ用語の動詞的使用)は、専門用語と同 じ注意が必要

●ユーザに視点を置いて書くのが鉄則

・ユーザの操作は能動態で、システムからの反応は受動態で書く


8.10 禁止/注意表現を効果的に


●想定される危険はできるだけ書いておく

●メリハリ(減り張り)をつける

・禁止/注意の危険の程度に応じて目立つ程度を変える

・内容の区別化をする

・危険(danger)」「警告(warning)」「注意(caution)」に分ける

・一目でわかるようにする

●禁止/注意の理由(why)と対処(how)を書く

●冒頭のまとめ書きに加えて、禁止/注意したい個所にも書く(現場主 義)


8.11 トラブルからユーザを救う


●トラブル時の情報提供は、子供でもわかるような表現にする

●事象(what),原因(why),対処(how)を書く

●タスク場面ごとに書く

・内容的な重複はあってもよい

●ユーザを責めない

●「undo(もとに戻れる)」「redo(もう一度できるように)」操作 を目立つように


8.12 索引からの参照を助ける


●索引に記載する言葉はキーワードに限る

・索引用語を選ぶ箇所は、章、節、小見出しのタイトルのなかにある(あるいは、それらに対応する)キーワードである

●ノンブル(ページ番号)はページ右下に

●装置・部分名は、初出箇所のみを示す

●機能名は、出てくるところをすべて拾い、主要な説明のあるページ をゴシック体で強調する

●索引を階層化する

・合成語は前の用語でも、後ろの用語でも引けるようにする

●「あかさたなあ…」を強調した上で、「いうえお」まで表示する

●検索ルートは、多くて悪いということはない

・本文中でも必要に応じて参照個所を示す

・本文中で索引用語をゴシック体にすることもありうる


すぐ腹が立つが、すぐおさまる」

2007-01-10 | 心の体験的日記
最近の特徴的な心性である。
「気に入らないー>腹が立つー>しかし、それを抑える」
このループが結構、活発に機能している。
抑えがきかないことは、めったにないが、うっくつした感じで心におりのごとく残っていることもある。

最初の「気に入らない」が何に由来するのかが不明。
もしかすると、潜在的権威主義かなー。
だとすると、かなりいやらしい老人になるコースを歩んでいることになる
注意したほうが、よい。


子どもをひらめかせる学級作りの考えどころ

2007-01-10 | 教育
03/10/31kaiho 教育研究・04/2月号
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30文字/1行 x25行x2段 x4p=6000字
このフォーマットで 200行で6000文字
海保博之・筑波大学心理学系教授

「子どもをひらめかせる学級作りの考えどころ」

教師たちが、声を大きく、口早に間なく、説教調となり、子どもとの間の問答を忘れ、子どものつぶやきに耳を貸さず、子どもからの発想を無視し、合の手に「ガンバレ、ガンバレ」「早ク、早ク」と言い続ける、---(片岡徳雄「子どもの感性を育む」NHKブックスより)

●幼児はひらめきの天才?
 「子どものひらめき」について何か書いて欲しいとの依頼を受けてすぐに思い浮かんだのは、朝日新聞の朝刊に不定期掲載される「あのねー子どものつぶやき」(投稿)であった。
 そこには、子どもが展開するおもしろ小話が掲載されている。そのほとんどは、たとえの妙である。たとえば、
 ・白いタイツが足先に引っかかって伸びたのをみて「しほの足が  おもちになっちゃった」(4歳)
 ・鉄塔を見て。「あっちにもこっちにも東京タワーがあるねエ」  (5歳)
 ・座薬をみて「これ、おしりにつけるミサイルでしょう」(7歳)
 びっくりするくらい見事なたとえばかりである。幼児はひらめきの天才かとも思ってしまう。
 たとえは、構造的な類似、あるいは一部の特徴の類似に注目して、未知のもの、あるいは、よくは知らないものに、自分の持っている知識を結びつけることによって成立する(図1参照)。


3 図1 たとえの構造


 4.5歳頃には語彙(知識)が爆発的に増加しはじめる。その知識を存分に駆使しての外界認識がたとえのひらめきとなっている。
 このあたりが、発達的には、ひらめき思考のはじまりではないかと思うが、内容的にはまだ浅いひらめきである。
 
●ひらめきとは
 ところで、ひらめき思考の特徴はどんなところにあるのだろうか。
 まず第一に、ひらめきは、一瞬におとずれる課題解決、あるいは認識であるということ。
 ただし、あれこれ考えに考えた上でのひらめきと、深い思考なしのひらめきとがある。いわゆる創造活動の過程での啓示(ひらめき)は前者、幼児のたとえは後者である。
 第2の特徴としては、ひらめきは既有の知識をベースに起こるということ。
 幼児のひらめきは、頭の中にある既有の知識をストレートに外界認識に使ったものであるが、多くのひらめきは、既有の知識要素間の新たな連合の成立から生まれる。その連合が、水平的にも垂直的にも、充分にかけ離れているときに(図2参照)、それは、ひらめきとなる。それが、幼児のたとえ思考のように、内容的に浅いときは突飛でおもしろいとなり、新たな知識の生成となるときは、世の中を動かす創造的発明・発見となる。


3  図2 知識要素の水平的、垂直的な連合
4     (海保「連想活用術」中公新書より)

 第3には、納得感を伴うこと。
 ひらめいた瞬間に「わかった」「これは絶対に正しい」といった感覚を伴う。ただし、あくまで本人の主観的な感覚であり、つねに正解ということではない。
 第4は、ひらめきは、周囲になにがしかの驚き、時には感動を与えること。それが前出のような新聞での長期の投稿連載を支えている。

 ひらめきの一般的な特徴を4つ指摘して、その中で子どものひらめきの特徴をしてみた。これを踏まえて、ひらめきが乱れ飛ぶ学級にするためにはどうしたらよいかを考えてみる。
 ただし、やや面倒なのは、朝から晩までひらめいている学級とばかりはいかないことである。時には、おそよひらめきとは無縁な学習も強いなければならないのが教室の現実である。それでも、学級全体の雰囲気、教師のちょっとした言葉かけの中に、ひめいてほしい、という暗黙のメッセージがあればと思う。

●ひらめきを促す学級作り
 子どものひらめきのほとんどは、客観的にみれば、創造的な知識生成とは無関係の、たわいもないものである。
 しかし、「たわいもない、したがって---」と考えて、そうしたひらめきを抑制したり正したりするか(正解志向)、「たわいもない、しかし、---」と考えて、そうしたひらめきをもっと促すか(創造性志向;注1)によって、学級の知的雰囲気はまったく変わってくる。たとえば、言葉かけ一つとっても、こうなる。
○「たわいもない、したがって、--」と考えるタイプの教師だと、
 ・それでいいかなー?
 ・よーく考えてから手を挙げて
 ・ちょっとおかしいなー
○「たわいもない、しかし、--」と考えるタイプの教師だと、
 ・おもしろい
 ・いいところに気がついた
 ・もっと思いつくことはないか

 さらに、ひらめきを促すであろう学級の知的雰囲気作りのうまい教師の特徴を挙げてみると、
○子どもに対して
 ・子どものすべてに対して受容的
 ・教え込むより子どもの思いを引き出すほう
 ・ポジティブ・バイアスがかかった(叱責、否定より賞賛、肯定  が多い)評価をする
○教師自身
 ・何事にも一工夫がある
 ・知的好奇心が旺盛
 ・あいまい耐性が強い(正解を急がない)
 
 ここでクイズを2つ。こうした子どもの奇抜な、というより、ある意味では自然なひらめきに対する教師の対応が、ひらめき学級作りになるかならないかを決める。
(1)「まんじゅうが20個あります。3人の子どもに同じずつ分けると、いくつずつになって、あといくつ残りますか?」
(2)「26人の学級で7人ずつの組をつくって、かけっこをします。何組できますか?」に、ある子どもが、「4組」と答えた。どうしてか?(「ひらめき」解答は末尾に)

●ひらめかせる学級作り
 ひらめきを促すだけではだめで、実際に子どもにひらめかせることも考えなければならない。言うまでもなく、ここが一番難しい。
 プラトン著「メノン」(岩波文庫)には、メノンの面前で、ソクラテスが、ただ質問をするだけで、数学的知識が皆無の召使に幾何の問題を解かせてしまう問答の一部始終が載っている。ソクラテスの問答法とか、産婆術とか呼ばれているが、子どもにひらめかせるには、こうしたができることが理想であろう。これを教室の中で30人、40人の子どもを相手にできるのがプロの教師ということになるのであろう。
 ここまでは無理としても、ひらめかせる学級作りとして、次の2つくらいの工夫、心がけは必要であろう。
1)ひらめき体験を随時、随所で
 ひらめき体験は、唯一の正解をひらめかせる体験(「ああそうか体験」)と、あーでもない、こーでもない、と艱難辛苦させた上でのひらめき体験(啓示体験)とがある。
 いずれも大事でじっくりと体験させたいところである。
 「ああそうか体験」をうながすためには、前述したソクラテスの問答法がヒントになる。それは、要するに「スモールステップでの逐次的な発問やヒントによる解へのガイド」である。これについては、「この問題には、こういう発問、ヒントをこの順で」という形で、それぞれの教師が長年にわたり蓄積してきているノウハウがあるはずである。
 もう一つのひらめき体験である「啓示体験」をうながすには、まずは、オープンな発問で、子どもの想念、連想を活性化させることである。 
 そのほとんどはがらくた想念、たわいのないものであるが、その中にダイヤモンドが時折、出現する。そのときに、それがダイヤモンドであることを即座に指摘してやることが、もう一つ教師がしなければならないことである。
2)ひらめき技法の活用をうながす
 ひらめきは子どもの頭の中で起こることではあるが、それを外から支援する技法がいろいろある。そうした技法があることを教えて活用させてみることもあってよい。
 そうした中でもっとも馴染みのあるのは、図解であろう。
 図解をしていく過程で、想念が焦点化されて、ひらめくこともあるし、図解したものを見ることからひらめくこともある。図解には、全体-部分関係、部分間関係の構造が目に見えるからである。
 さらに、KJ法などの各種の創造性開発技法を教えることも、子どもを啓示体験へと導くのに効果的かもしれない。図3にその一つを挙げておく。


3 図3 多視点発想をうながす訓練技法(オズボーンによる)


 また、教室は集団思考の場でもある。ここでも、集団発想技法としてよく知られている「ブレーン・ストーミング」なども活用することを教えることもあってよい。「自由な発現」「批判厳禁」「仲間のアイディアとの連合」「論理無視」「質より量」の原則のもとでのグループ発想の経験は、ひらめき訓練としてだけでなく、教室の知的雰囲気も変えることが期待できる。

●ひらめいたあとも大事
 浅い、深いを問わなければ、ひらめくことは、どんな子どもでもそれなりにできる。ひらめきを体験することだけでも、充分に教育的な意義はあると思うが、より一層その効果を高めるためには、ひらめいた後の教育的なフォローも大事になってくる。
 多くの発明・発見物語が教えるように、ひらめきのほとんどは、よくよく考えてみるとごみ箱行きである。100に一つ、千にひとつが、価値のあるひらめき(発明・発見)につながる。
 したがって、ひらめいたものを評価する環境が大事になってくる。 ひらめきには「これはいける」「これはおもしろそう」といった納得感が伴うので、自己評価にまかせると、思い込みエラーの世界に入り込んでしまう恐れがある。
 これを防ぐには、外からの評価が必要となる。その役割の多くは教師が担うことになるが、仲間からの評価も有効である。
 ただし、ここが難しいところであるが、外部評価が強くなりすぎると、ひらめきそのものが抑制されてしまう。これでは、本(もと)も子もなくなってしまう。
 これを防ぐには、一つには、評価をポジティブ・バイアスのかかったものにしておくことであろう。つまらないひらめきは無視し、斬新でおもしろそうなひらめきにだけ評価の目を向けるような雰囲気作りをしておくことであろう。
 2つには、ひらめきを論理(理屈)によって後付けさせる習慣を付けておくことである。補助線一本で解がひらめいても、それが解であることを証明させるようにさせることである。「どうして、そう思ったのか」「それでうまくいくのか」「もっと他にないか」などなどの言葉かけが必要である。

●クイズの答(中野昇「ルールの納得と教師の力量」児童心理、No.183より)
(1)「2つずつくばって、あとに14個残る。一度に食べられるまんじゅうは2個くらい。あとで食べるために残りはとっておく。」
(2)「26人全員がかけっこに参加するのだから、余った5人を1組にしなければならないから。」
●(注1)創造的発想には、次の4段階があることが知られている。
(1)準備期 (2)孵卵(ふらん)期 (3)啓示期 (4)検証期。ひらめきは、(3)啓示期に起こる。
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