海保著「学習力トレーニング」岩波ジュニア新書 (04/2/20発売) ページの都合で削除したコラムです。本を購入された方は、これを各章の後ろに張りつけてください。より一層、役立つはずです。
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1章コラム「場面別、注意の自己コントロールのための指針」 拙著「パワーアップ集中術」(日本実業出版社)の目次を挙げてみます(一部省略と変更あり)。これは、場面別に注意をうまくコントロールするための具体的な指針になっています。 一般向けになっていますが、勉強をするときの指針としても有効なものがたくさんありますので、参考にしてみてください。 ●根気を永続きさせるための指針 *飽きずに集中するコツ 1 急激な変化をしない環境を用意する 2 早朝を有効に使う 3 バイオリズムをつかむ 4 通勤・通学時間を活用する 5 時間を分割する 6 やる内容を分割する 7 初頭効果,終末効果を利用する 8 小刻みに結果をチェックする 9 終ったらほうびを 10 好奇心を常にたやさない 11 要求水準をコントロールする 12 大きな目標をときどき思い出す 13 むずかしいものにこだわり過ぎない 14 目や耳からの刺激を利用する 15 「ついで」主義を実行する ●精神を一点に集めるための指針 *一瞬にして対象にのめりこむコツ 1 余計なものを整理する 2 決まった環境を利用する 3 勉強によって場所を変える 4 集中できそうな時間を決める 5 集中儀式を工夫する 6 最初はじっくりやること 7 復習のウォームアップ効果を利用する 8 好きなことから始める 9 何かをしたら何かが起こる環境を設計する 10 注意をそらされるものに注意を向けてしまう 11 一点集中のしすぎに注意する 12 「落ち込み」からの脱出法を用意する ●周囲の雑音にビクともしないための指針 *気を散らさないコツ 1 環境に馴れれば気も散らない 2 周囲の刺激と親しむ 3 人間関係を良好にしておく 4 悪環境を逆利用する 5 雑用の効果を知る 6 メモ,手紙を活用する 7 情報管理を工夫する 8 情報に流されないようにする 9 情報を選択する 10 どうでも良いことは徹底して捨てる 11 「とらわれ」から解放される 12 「ながら族」も捨てがたい ●瞬発力を発揮するための指針 *勝負に勝つコツ 1 一人になる 2 徹底してリラックスする 3 別のことにも集中してみる 4 少しずつ調子を上げていく 5 集中してリラックスする 6 開き直って無我の境地に入る 7 遊び上手になる 8 ユーモアやジョークを活用する 9 あがりを利用する 10 ことばによる気合いを利用する 11 追いつめられる状態を演出する 12 一心にそのことだけを考える 15 生活のある部分で禁欲する 16 うまくいった時のことを思い出す ●知的パワーを充実させるための指針 *すぐれたアイデアをものにするコツ 1 問題意識なくして発想なし 2 集中すると意外な発想が生まれてくる 3 九の集中と一の弛緩を繰り返す 4 休憩の効果を利用する 5 棚上げ効果を利用する 6 頭の中のものを外に出す 7 会話の中からヒントをつかむ 8 頭の内と外のやりとりを活発にする 9 からだを動かす 10 適度の不安状態を演出する 11 ともかくすぐにとりかかる 12 別の視点から考えてみる 13 データ集めは拡散・集中で 14 連想を使う
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2章コラム「記憶力」 コラム「目的別、効果的な記憶をするための指針」 これまで、記憶について、あちこちの雑誌などに書いてきました。その中から、役立ちそうなものをいくつか選んで、記憶のための指針をリストアップしてみます。 ●日常生活でのもの忘れを防ぐ(楠見孝らを参考) ・5感、手足をフルに使う ・頭の中で何度も反復する ・繰り返し思い出す ・置き忘れは、置いたときの状況を順にたどってみる ・50音順に思い出しみる ・メモをとる ・カレンダーなどに書き込む ・目立つように特別な場所に置く
●外国語を覚える ・目的を明確にする ・文法をきちんと学ぶ ・毎日勉強する ・見るもの聞くものすべてを外国語で置き換える ・文脈の中で学ぶ ・いろいろの媒体を利用する ・ともかく使ってみる
●漢字ど忘れ対策 「ど忘れ状態に陥ったときの対策」 ・無理に思い出そうとしない ・思い出せることを書き出してみる 「日常的など忘れ対策」 ・画数の多い漢字は細部まで正確に書いて覚える ・熟語で覚える ・手書きの機会を増やす **********************
3章「問題解決力」 コラム「数学の学習法についての包括的な指針」 以下に挙げる指針は、福島県立原町高校教諭・長谷勝幸氏が筆者の指導で書き上げた修士論文(筑波大学教育研究科提出)「高校数学における学習スキルと信念・意欲と学業成績との関係」からのものです。氏の許可を得ましたので、やや長くなりますが、引用してみました。 元々は、数学の学習法のチェックリストとして作られたものですが、ここでは、それを指針として表現し直し、さらに部分的な変更を加えてみました。 1)数学の知識習得のための指針 「習熟」 ・似た問題をいくつか解く。 ・ある問題の解き方をわかったならば,関係する応用問題を解くようにしてい る。 ・できるだけ多くの問題を解く。 ・「解けない」問題は,後でもう一度考えてみる。 ・公式の使い方を問題を解きながら覚える。 ・わかる問題でも解いてみる。 「理解」 ・解答を読むとき,「なぜその解き方が出てきたか」を理解しようとする。 ・解答を読むとき,「解答のところどころで何をやっているのか」を考える。 ・問題の内容や解き方についてイメージを浮かべる。 ・問題の解き方を「自分なりの言葉」でまとめる。 ・公式,定理の証明を理解しようとする。 ・記号や式の意味を理解しようとする。 「まとめ方」 ・問題を解いた後で,何を学んだか振り返る。 ・章や節の「ポイントは何か」を考える。 ・同じような問題を学習しているとき,解き方の違いに注意する。 ・同じような問題を何題か解いたとき,それらに共通なことは何かを考える。 ・以前自分が覚えた内容と今勉強している内容との間にどんな関係があるのかを考える。 「探求」 ・問題を解いたとき,先生や友達に解き方を説明できるくらいにしようとする。 ・解き終えたとき,もっと良い方法がないか考える。 ・解けなくて解答を読むとき,「なぜ解けなかったか」を考える。 2)問題を解くときの指針 「問題の内容理解」 ・問題文をしっかり理解してから問題に取り組む。 ・この問題は「何がポイントなのか」を考える。 ・この問題は,どの分野の問題であるか考える。 ・問題の中の「言葉で書かれている条件」を数式に直す。 ・問題の中の「与えられたもの」と「求めようとしているもの」の関係を考え る。 ・問題に含まれている「隠れた条件」を探す。 ・問題の中にある式の意味を理解する。 ・問題文の中にある言葉の定義を考える。 ・図が書けるときは,図を書く。 「解くための計画」 ・問題が解けないとき,何かそれに似た問題を解いてみる。 ・はじめは1つの条件だけで問題を考えてみて,後で他の条件について考える。 ・いくつかの解法を考えて,一番良さそうなものから順に試してみる。 ・できるだけ解く前に,答えを予想する。 ・問題の結論から逆に,問題を考える。 ・問題の解き方を考えるため,できるだけ問題を単純にする。 「解き方」 ・問題に使えそうな解き方をできるだけ思い出す。 ・同じような問題を以前解いたことがないか考える。 ・問題のどこか一部でも,解くことができないかやってみる。 ・「変数に適当な数値を代入する」など,問題を具体的に考えてみる。 ・「四角形のときは正方形,文字に0とか1を代入する」など,特別な場合(数 値)を考えて解を 確認する。 ・問題の中の条件が互いにどんな関係にあるか考える。 ・問題を解いているときに,条件を満しているかどうか注意する。 ・問題の解き方の手順を考えてから,解き始める。 ・できるだけ簡単な解き方がないか考える。 ・計算を簡単にできないかどうか考えるようにしている。 ・今やっていることが解に近づいているかを考える。 ・計算ミスがないかどうか注意して解いている。 「解いた後の確認」 ・解き終えたとき,問題文の中の条件や数値を全部使ったか確認する。 ・解き終えたとき,間違いがないか確認する。
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4章「自己洞察力」 コラム「自分自身の考えを批判的に吟味するための指針」 「クリティカル・シンキング(入門編、実践編)」(E.B.Zechmeisterら著、宮元博章ら訳;北大路書房)という本があります。 クリティカルシンキングとは、「自分の考え方を批判的にみずから吟味することで、より妥当な思考ができるようにしよう」というものです。思考についての自己洞察の具体的な方策の典型です。 以下に示すのは、その本の中で提案されている90個の原則の中から学習力の向上に役立ちそうなものを拾ってみたものです。一部、表現を変えてあります。 本当は、もっとたくさん引用したいのですが、いかに訳者許可ずみとはいえ、このあたりが引用してよい限界です。ぜひ、本のほうを一読されることをすすめます。なお、この本に基づいた同じ訳者のマンガ入り解説本(「クリティカル進化論」北大路書房)も出ています。 原則45「効果的な学習計画を立てるためには、最初に全体を 見通 して、学習が容易な部分と困難な部分とを見分けよ。」 原則49「学習の最中や終了後に、本当に理解しているかどう かを 自分でテストせよ。」 原則51「記憶を過信してはならない。記憶はものごとの正確 なコ ピーではなく、推論によって再構成されたものなのだ。」 原則52「自分がどのような推論によって答を出したのかをよ く考 えよ。」 原則58「問題を解き始める前に、プランを立てる時間をとる こと。」 原則61「複雑な問題に取り組む時には、下位目標を設定せよ。」 原則62「解決の途中で、プランの再調整、遠回り、後戻りが 必要 なこともある。そのことを念頭において、解決過程を モニタリン グせよ。」
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5章「失敗力」 コラム「失敗タイプ別の生活指針」********* 図は、「失敗に対して厳しいかどうか」と「自分は失敗が多いほうかどうか」という2つの観点から人を類型化してみたものです。 どの型が良くて、どの型が悪いということはありません。 自分の型を知ってその特徴を活かす方途を考えればよいのです。遊び心で、自分のタイプを判定してみてください。 ちなみに、日本は、「丁寧型」「ねちねち型」、アメリカは、「創造型」「おっちょこちょい型」が支配的だと思います。 1 2 3 図 失敗に強い人、弱い人 pp 4 タイプ別、一言アドバイス
●「創造型」「おっちょこちょい型」へ ・あなたを理解してくれる味方を増やすこと ・失敗しても事故にならない仕掛けを用意しておくこと
●「ていねい型」「ねちねち型」へ ・時にははめをはずしてみること ・人の失敗には寛容になること
●「てきぱき型」「うるさ型」へ ・時には気持ちゆったりとすること ・自分の有能さに溺れないこと
●「じっくり型」「ぼんやり型」へ ・助けられる上手になること ・仲間への迷惑にも思いをはせること
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6章「時間管理力」 コラム「自分を時間の主人公にする7つの指針」 次の7つの指針は、R。J。ザイヴアート著(小川捷子訳)「「幸せ時間」ですべてうまくいく!」(飛鳥新社)より引用させてもらったものです。(その本では指針ではなくステップとなっています。)社会人用の時間管理術ですが、中高校生諸君にも参考になると思います。 指針1「人生の目標をはっきりさせる」 指針2「世の中での自分の役割をはっきりさせる」(表現変更) 指針3「一番重要な仕事は何かをはっきりさせる」 指針4「年間の目標を紙に書く」 指針5「優先順位に従い1週間の予定を立てる」 指針6「日々の仕事を能率的に片づける」 指針7「やる気のなさをやる気に変える」
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7章「文章表現力」 コラム「効果的な文章表現のための指針」 2冊の本から文書作りに役立ちそうな指針を拾ってみました。 一つは、拙著「くたばれ、マニュアル」(新曜社)からのものです。取扱説明書(マニュアル)をわかりやすくするために考えたものですが、その中には、一般の文書作成にも有効なものがあります。 もう1冊は、市川伸一「勉強法が変わる本」(岩波ジュニア新書)の目次から拾ったものです。小論文を書く時に有効な指針です。なお、市川伸一先生は、筆者と同じ、認知心理学者です。先生の本も大変参考になりますので、一読をおすすめします。
●マニュアル(取扱説明書)からの指針 1)操作支援(操作を指示する) ・1文1動作で ・操作ー結果ー操作のサイクルを示す 2)参照支援(情報を探しやすくする) ・出来上がり索引を使う ・目次はユーザのすること(タスク)を考えて作る ・読み手の視点から書く 3)理解支援(わかりやすくする) ・操作の目標、全体、意味を先に示す ・専門用語の使い方を慎重に ・読み手は関連知識を持たないと想定する ・情報の階層化と表現の階層化をはかる 4)動機づけ支援(読んでみたいと思わせる) ・親しみを表現する ・出来上がりを最初に示す ・実益を感じさせる ・長い文書はその読み方を示す 5)学習・記憶支援(覚えるべきことを覚えやすくする) ・基本操作だけを習熟させる ・何が憶えるべきことかを示す ●小論文を書く時の指針 「書く前に」 ・ものを書く立場に身を置いてみよう ・比較的自由な小論文でウオーミングアップ ・素朴な考えをどう深め、広げていくか 「書く時に」 ・課題の意図を読み取る ・自分にひきつけて考える ・誤りやすい論旨展開に注意する ・できれば具体策を出す ・構造がわかりやすい段落構成にする ・自分が感じた素朴な気持ちを分析してみる ・問題を外に広げてみる
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8章「発表力」 コラム「説得を効果的にするための指針」 本文では、説明的な発表のほうに重点が置かれました。発表には、自分の思いを相手にぶつけて説得することもあります。その技法について、拙著「自己表現力をつける」(日本経済新聞社)から、指針にふさわしいものを拾ってみました。
●説得を効果的なものにするための4つの原則 ・相手の気持ちに配慮する ・静かな迫力を示す ・説得する内容の価値を信じていること ・相手のためになると信じていること
●説得を効果的なものにするための7か条 ・親しみを見せる ・実益を先に示す ・知的好奇心に訴える ・情報を少なめにする ・議論する ・人、状況をみて説く ・広告宣伝の手法(アイドマの法則)も使ってみる 注意を引く(Attention) 利益に訴える( Interest ) 欲求を刺激する( Desire) 記憶してもらう( Memory) 買いにきてもらう( Action)
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9章「会話力」 コラム「プロカウンセラーの聞く技術」 ベストセラーでロングセラーの東山紘久著「プロカウンセラーの聞く技術」(創元社)の目次のリスト(一部表現を変更)を挙げてみます(許可済み)。 これはカウンセリング事態での「聞く」技術ですが、聞けることは話せることに直結と考えれば、このリストは会話を効果的なものにする指針にもなっています。「耳を傾けよ。さもなくば汝の舌は汝を聾者にするであろう」(アメリカの諺)です。 目次のすべてを挙げたいところですが、内容がイメージできないものやカウンセリングに固有のものなどは除きました。さらに、勝手に3つのカテゴリーにまとめてみました。
●聞き方 ・聞き上手は話さない ・相づちを打つ ・相づちの種類は豊かに ・相手の話に興味をもつ ・素直に聞くのが極意 ・寡黙であれ ・話し手の波に乗る ・共感する
●尋ね方 ・教えるより教えてもらう態度で ・Listenするな、Askせよ ・聞き出そうとしない
●話し方 ・自分のことは話さない ・聞かれたことしか話さない ・情報以外の助言は無用 ・言い訳しない ・話には小道具がいる ・沈黙と間の効用を知る ・評論家にならない
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