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わかりやすさとコミュニケーションの心理学

2010-05-18 | わかりやすい表現
07・9・25海保

わかりやすさとコミュニケーションの心理学
はじめに
コミュニケーションにおいて、わかりやすさは唯一絶対の要件ではない。正確さや内容の充足性、さらには、相手への説得性など、最適なコミュニケーションが満たすべき要件はたくさんある。
 本書では、コミュニケーションにおけるわかりやすさを取り挙げることにしたのは、次の2つの理由からである。
 一つは、到る所で、「異文化接触」が必然となってきたことである。たとえば、裁判員制度では、これまでがっしりと法律で守られてきた司法の世界にまったくのど素人が入り込んで共同作業をすることになる。さらに、文字通りの言語文化の違う異文化の人々との接触は日常的になってきている。そうした様々な接触面で、わかりやすさをどのように作り込むが焦眉の急となってきている。
 2つは、わかりやすさについての認知心理学の知見が蓄積してきたことがある。わかりやすさは、ごく日常的な用語であるだけに、お題目のごとく唱えれば、それで終わりのようなところがある。もっと人の頭の中の情報処理のメカニズムにまで立ち入った論究が必要である。それがここ20年くらいの認知心理学の知見の蓄積によって可能となってきた。
 
 全体を2部に分けてみた。
 1部は、やや固くなるが、コミュニケーションの心理学の基礎である。 
 2部は、実践心理学講座の1冊にふさわしく、実践的なコミュニケーションの心理技法を、文書、プレゼンテーション、対話、さらに電子メディアを介したコミュニケーションのそれぞれについて、わかりやすさを核として紹介してみた。

 これまで出版されている類書をどれほど超えたものになっているか不安であるが、わかりやすさと心理学とによって、少しは新しみが出せたのではないかと思っている。

2008年9月 海保博之