●実習で「社会」を体験する
昔は、実習と言う時は、専門に入っていくためのプレ研究トレーニングである。実験や調査のミニチュア版を体験する場が実習であった。これは、今でも続いている。卒業論文、ひいては大学院での専門教育につながる大事な授業の一つである。
1単位あたりに費やす時間も講義、演習の1.5倍である。研究(実習)のプロセスを通して、その学問の研究スタイルや研究文化を体得することになる。
ところが、最近は、大学のキャリア支援強化の一貫としての実習をおこなうところが増えてきた。将来の就職を見越した社会の現場での実習である。
教育機関で過ごす期間がどんどん延長している。また、それに比例するかのように、コンピュータが作り出す仮想現実の世界に浸る時間も増えている。結果として、「現場」「実社会」に触れる機会がないまま、いきなり社会に放り出される。これでは、学生もたまったものではない。
その衝撃を緩和するために、学生のうちから社会の現場に出てみていろいろの経験、とりわけ将来の職業選択に役立つ経験をさせようとの趣旨である。キャリア形成プログラムなどと呼ばれて、文部科学省や厚生労働省も強力に後押してしている。
いずれも実習も実体験不足の最近の学生にとっては、その効果のほどははかりしれないものがある。