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43文字 32行 5~10枚
東京成徳大学応用心理学部教授
1章第3節記憶型エラーのタイプとその防止対策
はじめに
「To err is human」というように、人間のあらゆる機能にエラーはつきものである。そのエラーが生存にとって不要なものなら、5万年もの人類の進化の歴史の中で、エラーをもたらす機能は陶太されているはずであるが、脈々と生き残り続けてきたのは、エラーが生存戦略として不可欠だからとしか言いようがない。
エラーに内在する生存戦略とは、ポジティブ面とネガティブ面がある。ポジティブ面は、創造的生存戦略である。現状を打開し新たな世界を切り開くためには、エラーしながらのトライアルが必須である。
ネガティブな面は、人間の持つ限られた資源の有効活用を保証するために、当面不要な資源を節約する戦略である。これがもっぱら事故に関わってくる。
本稿では、こうした立場から、人間の頭の働きの中核をなす記憶のエラーについて考えてみる。
人間の記憶は、覚えること(、符号化、記銘)、覚えておくこと(保存、貯蔵)、そして、思い出すこと(検索、想起)の3つの局面がある。それぞれの局面でエラーが発生する。
本稿では、短期記憶と長期記憶のそれぞれについて、この3局面でのエラーを取りあげて、その防止策を提案する。
1.3.1 記憶型エラーとは
記憶のモデルとしても最もよく知られているのが、2貯蔵庫モデルである。図1に示すように、意識的に情報を記憶したり処理する短期記憶貯蔵庫と、短期記憶で記憶されたり処理された情報を長期間にわたり貯蔵し、必要に応じで検索のための情報(知識)を提供する長期記憶貯蔵庫とである。
図1 2貯蔵庫モデル 北尾編集本からとること
それぞれの貯蔵庫で、記銘、貯蔵、検索の3局面にどんなエラーが発生するのか、それは、貯蔵庫のどんな特性が原因になっているのか、それを事故につなげないための方策はどんなものが考えられるかを検討してみる。
表
記銘 貯蔵 検索
短期記憶 音の類似 干渉(順行、逆行) 後入れ先出し
貯蔵庫 チャンキング
長期記憶 意味の類似 編集エラー 不活性化エラー
貯蔵庫
1.3.2 短期記憶における記銘エラーとその防止策
1)音の類似によるエラー
短期記憶は、音韻主導の処理をする。したがって、音の類似したものどうしのエラーが発生しやすい。しかも、日本語は同音語が多いので、さらに音によるコミュニケーション・エラーは深刻である。混同エラーが行いように、冗長な表現をすることにある。
例 「あがるーさがる」を比較されたい。ラジオによる株価ニュースや、高度の上げ下げの管制指示が、冒頭のたった一音での弁別になっている。
2)チャンキング・エラー
チャンキングとは、符号化するときに、視覚的、音韻的、意味的なまとまりを作
ることである。例1は、意味的なチャンクがわかりにくくなっているものであるが、
これも、例2のように分かち書きをすれば、それが視覚的チャンクをつくりやす
くして、さらに例3のように漢字かな交じり文にすれば、意味的チャックが見える
ので、エラーを減らせる。
例1 うらにわにはにわにわとりがいる
例2 うらにわには にわ にわとりがいる
例3 裏庭には、二羽、鶏がいる
1.3.3 短期記憶における貯蔵エラー
1)容量オーバーによるエラー
短期記憶に一度の貯蔵できる情報の量は、チャンクにして7個程度である。それを超えると情報の脱落エラーや混同エラーが起こる。
チャンクの見える化と、長期記憶への転送を促すために、情報の提示間隔を適度にあける配慮が必要である。
2)干渉エラー
短期記憶では、リハーサルをしながら逐次的に情報を保存していく。それが容量を超えると、とりわけ中間にある情報の前後がお互いに干渉しあって、情報の脱落や混同が起こる。ここでも、情報の提示間隔への配慮が必要である。
例 初対面での自己紹介が連続して続くと、真ん中あたりの人の情報が一番覚えられない。
1.3.4 短期記憶における検索エラーとその防止策
1,3.5 長期記憶における記銘エラーとその防止策
1.3.6 長期記憶のおける貯蔵エラーとその防止策
1.3.7 長期記憶のおける検索エラーとその防止策
まとめ
● 人間の記憶のモデル
2貯蔵庫モデル
●人間の記憶型エラー
である。資源の限られた
端的に言うなら、創造的な生存を営む
人間の記憶にエラーはつきものであるのだが、それではエラーまっとうな記憶と区別して
1.3.2 記銘時エラーとその防止策
1.3.3 貯蔵時エラーとその防止策
1.3.4 想起時エラーとその防止策
1.3.5 まとめ