1第7回 集中力の変動によるミスを防ぐーーー持続・受動
●集中力は変動する
集中力x持続時間=一定
ですから、集中力のレヘルがそれほど高くなくてすむなら長時間の持続ができます。野原の一本道ならクラシックを聞きながらの2時間くらいのドライブは平気、でも町中の車も人も多いところでは、せいぜい、1時間くらいでぐったりとなります。
さらに、もう一つ、忘れてはならないのは、集中力は状況に応じて変動することです。したがって、集中力の変動をメタ認知によってモニター(監視)できないと、状況が必要とする集中力が不足したり、逆に余分な集中力の発揮して飽きを誘ってしまいミスをすることになります。そのあたりの事情の概略を示したのが図です。
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• 図 状況に応じて変動する集中力
●「ながら仕事」は集中力を持続させる
仕事に必要な集中力を機械のように正確かつ定常的に持続させることは無理だとすると、さてどうしたものか。ここでは、「ながら仕事」を取り上げてみます。
「ながら仕事」をする人は多いかと思います。とりわけ、最近は、音楽がポータブル(持ち運び可能)になりましたので、手軽にできるようになりました。
一人仕事では、この「ながら仕事」は能動的な集中力の持続には効果的な方策の一つです。
「物音ひとつしない静謐(せいひつ)な環境が集中力には必要」は神話です。そんな環境からはすぐにでも脱出したくなります。
「ながら作業」では、能動的な集中力が下がりそうなると、バッククラウンドが集中力を押し上げてくれます。さらに、周囲からの雑音を遮蔽してもくれます。
●集中力の変動ミスを防ぐための集中対策
①習慣を活用する
「いつもと同じ」の力は馬鹿になりません。これがあるからこそ、外目には大変な仕事と思われることでも、なんなく出来てしまいます。
集中力の持続も、「いつもと同じ」ならいつものレベルと質で可能となります。
もちろん、それでも、というより、それだからこそのマンネリによる集中力低下ミスもありうるのですが、それはまた別途に考えるとして、まずは王道を行くことです。「いつもと同じ」ことをきっちとすることが肝心です。
②バックグランドとメインが自然に分かれるようにする
心理学の定番デモに、図地反転図形というのがあるのはご存知だと思います。バックグランド(地)とメイン(図)とが時々、自然に入れかわってしまう図形です。
「ながら仕事」がこうなってしまっては、どうにもなりません。バックグランドとメインがきっちりとわかれたまま進行する必要があります。
そのためには一つは、メインのほうにやや低めでも集中力が向けられてそれを持続させる配慮が必要です。
それには、まず仕事の内容への配慮があります。
「ながら仕事」は、たとえば、2時間くらい連続して行なう定常的な仕事がふさわしいことになります。たとえば、高速道路での運転、流れ作業、データ入力のような仕事になります。というより、「ながら仕事」は、そういうものに限定すべきです。そうすれば、集中力は幾分低めでも大丈夫です。
もう一つの配慮は、バックグランドのほうの設計です。あまり変化しない静かで少しだけ時折、集中力をひきつけるような環境を用意することになります。音楽でも、歌謡曲のようなものは意味が入りこんだり、好き嫌いがありますから、好ましくありません。クラシック音楽、それも、ベートーベンよりモーツアルトに(ここは自身がありません!)となります。
③「ながら仕事」を多重課題にしない
第5回で取り上げた多重課題と「ながら仕事」との違いは、多重課題では、いずれの仕事も大事なのに対して、「ながら仕事」では、バックブラウンドが従(ながら)、仕事が主と、明確に頭の中で区分されていることです。
運転などではラジオを聞き「ながら」はごく一般的ですが、重大ニュースでも飛び込んでこない限り、この「ながら運転」はミスにはつながりません。
問題は、「ながら」のほうがメイン(図になってしまうことがあることです。カーナビの操作などです。状況が一気に多重課題化してしまい、集中力コントロールができなくなってしまいミスとなります。走行中は操作できない設計にすることが必要ですが、その不便さに耐えられるかが問題です。