事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「天久鷹央」シリーズ 知念実希人著 新潮文庫(版で読みました)

2024-07-16 | ミステリ

これで“あめくたかお”と読みます。わざと男性とも女性ともとれる名前に設定していますが、この医師にして名探偵は女性です。しかも、かなり問題のある

病院内で不可解な事件が起こる。はんぱではない奇矯な性格ではあるが、有能な医師である天久が、その医療知識とセンスで一刀両断に謎を解いてみせる。

たとえば、病室にアルコールを持ちこめないはずなのに、なぜか患者が酩酊してしまう。この謎は魅力的だ。患者が人気作家である設定が効いている。

しかし、他の作品では事件が解決してもどうもすっきりしないことも多い。それはおそらく、天久の(というか医師である知念実希人の)医学的知識が後出しじゃんけんのように思えるからだと思う。医療従事者以外には絶対に推理不可能じゃないかと。ということでこのシリーズは、ミステリとしてよりも、医学小説として読んだほうがストレスを感じないかも。

それから、わたしがこのシリーズを読むのは、月に一度の医者通いのとき。やたらに混みあう医者なので、待ち時間が長い長い。だから本を持ちこむのが必須なのに、たまに忘れちゃうのね。

そんなときは司書に頼んでこのシリーズを学校図書館から借りてるの。ところが問題は、このいかにもライトノベルな装丁。いやーいい年をした男が、待合室でこの本をバッグから取り出すのはすごく恥ずかしいのでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ミステリ作家の自分でガイド」本格ミステリ作家クラブ編 原書房

2024-07-06 | ミステリ

読者の意表をつくのが本格ミステリなのだから、自作をみんなひねくれた紹介の仕方をしていておかしい。その芸にのって、この人の作品を読んでみようかと何度も思わせられました。

有栖川有栖山口雅也、千街晶之の座談会は無類の面白さ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「よろずのことに気をつけよ」川瀬七緖著 講談社

2024-04-22 | ミステリ

法医昆虫学捜査官シリーズでおなじみ川瀬七緒の、江戸川乱歩賞受賞作。

呪い、を研究する学者と、祖父の死に呪いがからんでいるのではないかといぶかしむ学生のコンビが、(軽口をたたきながら)事件に挑んでいく。

……正直に言います。ものすごく面白かった。こっちもシリーズ化してくれたらよかったのに。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ちぎれた鎖と光の切れ端」荒木あかね著 講談社

2024-04-20 | ミステリ

此の世の果ての殺人」で、23才で江戸川乱歩賞を受賞した俊英の受賞第1作。このミステリも圧倒的に読ませる。どれだけの才能なんだ。

1部と2部に分かれていて、1部は絶海の孤島で起こる連続殺人。前の殺人の第一発見者が殺されていくのはなぜか。この第1部と2部の関係性がこの作品のキモになっている。荒木あかねおそるべし。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「きこえる」道尾秀介著 講談社

2024-04-19 | ミステリ

いけない」シリーズで、最後の写真でストーリーをひっくり返してみせるなど、果敢な挑戦がうれしい道尾秀介。今回はQRコードを掲載し、音声でひっくり返してみせる。

このアイデアもすばらしいと思ったが、その音声がよくきこえないんだよね。ひょっとしておれのスマホのせい?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ギャンブラーが多すぎる」ドナルド・E・ウェストレイク著 新潮文庫

2024-04-15 | ミステリ

「ウェストレイクの小説は、わたしが何度でも読み返す数少ない本のひとつ。『戦争と平和』やプルーストなんて戯れ言は忘れて、無人島に持って行くべき本だ」
ローレンス・ブロック

ドナルド・E・ウェストレイクの作品を読むのって何年ぶりだろう。運の悪い泥棒のドートマンダー(殺さない、というシャレ)のシリーズや、リチャード・スターク名義の悪党パーカーなど、読者を喜ばせずにいられるか、という気合いがうれしい職業作家だったのである。

新潮文庫がロス・トーマスにつづいて未訳作品を発掘。訳者もおなじみの木村二郎さんだ。

タイトルがよかったせいでかなり売れたと編集者は「本の雑誌」で語っていたけれど、わたしのような世代は、ウェストレイク作品をもっと出してくれたら必ず買いますよ。こんなに面白いんだもの。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「許されざる者」レイフ・GW・ペーション著 創元推理文庫

2024-04-11 | ミステリ

北欧ミステリの大家が描く、CWA賞受賞作。有能で鳴らした元警察官僚が倒れ、しかし懸命に少女殺害事件を追う。途中で気づきました。わたし、これ1回読んでる(笑)

こういうことがこれから増えていくんだろうなあ。だから犯人はわかっているし、その後の展開も知っている。でも面白い。それは、初老の男の回復の物語だから。自分が年を取って、この方面で楽しめるようになりました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マイベスト2023 ミステリ篇

2024-03-13 | ミステリ

このミステリーがすごい!篇はこちら

さて、それではマイベスト2023年。本日はミステリ篇。わたしのトップテンは以下のとおりとなっています。

1 「存在のすべてを」塩田武士著 朝日新聞出版

2 「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ著 早川書房

3 「可燃物」米澤穂信著 文藝春秋

4 「木曜殺人クラブ」リチャード・オスマン著 早川書房

5 「愚者の街」ロス・トーマス著 新潮文庫

6 「此の世の果ての殺人」荒木あかね著 講談社

7 「リバー」奥田英朗著 集英社

8 「777(トリプルセブン)」伊坂幸太郎著 角川書店

9 「11文字の檻」青崎有吾著 創元推理文庫

10 「ナイフをひねれば」アンソニー・ホロヴィッツ著 創元推理文庫

次点はディーヴァーの「真夜中の密室」、大沢在昌の「黒石」あたりだろうか。

問題は第1位の「存在のすべてを」で、このミステリーがすごい!では20位内にすら入っていない。逆に本の雑誌では、ミステリ担当の池上冬樹さんがトップにすえている(そして彼は「頬に哀しみを刻め」をまったく評価していない)。写実派の画家を主人公にすることで、ある人物の半生をみごとに描き出した傑作だし、ミステリとして上等だと思うんだけどなあ。

すでに亡くなっているロス・トーマスだけれど、立風書房から出ていた作品がたくさんあるので、ハヤカワや新潮社が版権を買って再発してくれないかしら。

ど新人である荒木あかねは、2作目を読んだばかりだけれど、これまた面白いのでした。すごい新人が登場したんだなあ。

次回は非ミステリ篇

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マイベスト2023 このミステリーがすごい!篇

2024-03-10 | ミステリ

 

2022年篇はこちら

今年のマイベストはスタートがかなり遅れてしまいました。というのも、キネマ旬報のベストテンが発表になるころを見計らって始めるのに、キネ旬が月2回から1回の発行になり、なんとベストテン発表は増刊号でやるのだそうだ。それに気づかなかったわたしが不覚でした。

さて、発売は去年の暮れ、宝島社の「このミステリーがすごい!」の特集からいきましょう。このランキングでわたしが読んでいるのは

【国内篇】
1位 「可燃物」米澤穂信著 文藝春秋

3位 「あなたが誰かを殺した」東野圭吾著 講談社

6位 「木挽町のあだ討ち」永井紗耶子 新潮社

12位 「11文字の檻」青崎有吾著 創元推理文庫

15位 「777 トリプルセブン」伊坂幸太郎著 KADOKAWA

19位 「ローズマリーのあまき香り」島田荘司著 講談社

書店から息子が電話をかけてきて

「米澤穂信の可燃物って面白いの?」

「まあ、ベストワンだからなあ」

過剰に警察小説であることを装ったあの作品だから、彼にはあまり向いてないのかとも。

【海外篇】
1位 「頬に哀しみを刻め」S.A.コスビー著 ハーパーBOOKS

2位 「ナイフをひねれば」アンソニー・ホロヴィッツ著 創元推理文庫

4位 「愚者の街」ロス・トーマス著 新潮文庫

うーん、例によってこれだけです(笑)。

さて、次号ではわたしのベストをお伝えするけれど、ある作品について、わたしとこのミスとは全然違う評価を。そりゃもうびっくりするぐらい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「頬に哀しみを刻め」S.A.コスビー著 ハーパーBOOKS

2024-03-07 | ミステリ

このミステリーがすごい!ベストワン作品。子どもを惨殺された二人の父親の復讐の物語。と聞けばありきたりに思えるでしょうが、殺された二人がゲイで同性婚していたあたりが現代。人種差別、同性愛者差別を次第に克服していく父親たち。

しかしミステリーとしては少し不満が残る。“真の悪役”が判明する経緯が弱いし、父親たちはストレートな暴力で危機を脱してばかりいる。

そうは言ってもタイトルの意味(涙のこと)や「復讐は憎しみに上等な服を着せただけだ」というセリフなど、滋味深い作品ではある。

これを、医者の待合室で延々と読み続けるわたしも渋い(T_T)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする