事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件」倉知淳著 実業之日本社文庫

2024-02-09 | ミステリ

わははははは。まさしくタイトルどおりの密室殺人を構築してくれました。笑ったなあ。さすが倉知淳

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「愚者の街」ロス・トーマス著 新潮文庫

2024-02-03 | ミステリ

え、と驚く。年末に発売された「このミステリーがすごい!」に、ロス・トーマスがランクインしていたのである。わたし、大ファンだったのだ。

で、過去形で語っていることからもおわかりのように、彼はすでに故人だ。しかも前世紀のうちに亡くなっている。

この、稀代のミステリ作家の作品は、早川書房がアメリカのミステリアスプレス社と提携し、ハヤカワ・ミステリアスプレス文庫という叢書にたくさんラインナップされていて、むさぼるように読んだのだった。

「神が忘れた町」「黄昏にマックの店で」「モルディダ・マン」「八番目の小人」そして「五百万ドルの迷宮」……一癖も二癖もある登場人物たちが、一癖も二癖もある行動をとり、ストーリーは読者の予想のはるかに先を行く。

とにかくセリフがキレッキレですばらしいのだ。彼は脚本家としても高名で、フランシス・コッポラ製作、ヴィム・ヴぇンダース監督という癖の強いクリエイターたちの意図がよじれまくったおかげで迷作となってしまった(わたしは大好きだが)「ハメット」も書いている。

先日、痛風のために寝込んだとき、トーマスの代表作である「女刑事の死」を読み返して、そのあまりの面白さにクラクラ来てもいたの。

そんなとき、新潮社はなにを思ったか未訳だったこの「愚者の街」を文庫で出してくれたのである。ありがたいありがたい。

「これ、買うよ」

と書店の外商にすぐにオーダー。読み始めたらやっぱり面白い。街のふたつの勢力を焚き付け、お互いを消耗させるという展開はハメット調。ああ面白かった。なんと新潮文庫はドナルド・E・ウェストレイクの新刊もだしてくれている。買う!(もう買いました)

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「負けくらべ」志水辰夫著 小学館

2024-01-25 | ミステリ

志水辰夫の19年ぶりの現代小説だとか。もうそんなになるのか。そのあいだに「青に候」「夜去り川」「引かれ者でござい」など、数々の時代小説で魅了してくれたのでもうそっち専門でいくのかと思ってました。

そこを曲げて、現代小説に再び向かわせた小学館の編集者がまず偉いということでしょうか。そして彼の現代小説は熱烈に迎えられた。

なにしろ腰巻きには北方謙三、佐々木譲、夢枕獏、大沢在昌、馳星周、今野敏の推薦文がそろいぶみ。みんな、待ってたんだなあ。

もちろんわたしだってうれしい。鶴岡が舞台の「背いて故郷」に興奮し、「深夜ふたたび」を読んで今度のクルマはフォルクスワーゲンゴルフにしようと決心し、去年の痛風で休んでいたときは映画化された「行きずりの街」を、痛みをこらえながら見ていたくらい好きなのである(笑)。

この新作も読ませる。これまでとちょっと違うのは主人公がすでに老齢だということ。そしてある特殊な能力をもっていること。

内閣調査室の下部組織でその能力を活かしていた主人公が、ラストで壮絶な暴力に遭遇するあたり、いつものシミタツ節です。またの新作をお待ちしております。

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「郊外の探偵たち」Suburban Dicks ファビアン・ニシーザ著 早川書房

2023-12-23 | ミステリ

二段組400ページj超。デッドプールのクリエイターだけにジョークやワイズクラックの連発で面白いのだけど、結局読み終えるのに10日もかかってしまいました。

5人目の子どもを妊娠中で、非常にふくよかな(笑)ユダヤ人元FBIプロファイラーと、落ち目の中国系新聞記者がタッグを組んで(というわけでもないか)インド人青年が射殺された事件と、郊外の宅地に人間の骨が埋められていた事件に挑んでいく。

自分が優秀であることを承知しながら、子どもの世話のために事件に十分に取り組めない主婦という造型はうまい。アメリカの郊外は、農業者としてイギリスとドイツの白人が入植していたのに、そこへインド系や中国系が進出しているというのがストーリーの核。テーマはわりにシリアスです。

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「幽玄F」佐藤究著 河出書房新社

2023-12-22 | ミステリ

傑作。三島由紀夫をモチーフにした……的な紹介があったので身構えてしまいました。わたし「天人五衰」読んでないし。しかしこれは圧倒的な航空小説であり、ミステリでもある。夜中に読み始めてやめられず、翌日はフラフラ。佐藤究おそるべし。

間に「トップガン マーヴェリック」があったことをむしろ利用したのではないか。なわけないか。主人公の天才的なパイロットが、それではどんな人生観を持っているのかはあの映画の真逆だし。

日本映画界に『F』を使った作品をつくる財力があれば、ぜひとも主演は日本のトム・クルーズ(勝手に断定)である西島秀俊でお願いします。っていうか「テスカトリポカ」はなぜ映画化されないのだろう。

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「木曜殺人クラブ」「木曜殺人クラブ 二度死んだ男」「木曜殺人クラブ 逸れた銃弾」リチャード・オスマン著 ハヤカワ・ミステリ

2023-12-21 | ミステリ

このシリーズを手に取ったのはどうしてだろう。どうやら、わたし向きではないかという雰囲気がありありだった気が。ミステリ好きではあるけれど、そのなかでもウィットに富んだタイプがわたしは大好き。

とにかく仕込まれたユーモアが半端ない。どころか、犯人当てミステリとしてもみごとなものだ。わたし、違う人物が犯人だと確信していましたもの。なめてて悪かった。

登場人物たちは引退者用施設の入居者。つまりはおじいちゃんおばあちゃんである。元労働運動家、看護師、精神科医とその妻(彼女の経歴はしばらく明かされない)が、木曜日に集まって未解決事件について話し合う……設定からしてゾクゾクする。

そして彼らだけでなく、老いというものがどんな意味を持つのかを常に問いかける小説でもある。ああどうかもっとこのシリーズは続いてほしい。少なくともわたしが老いて死ぬまでは

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「ナイフをひねれば」The Twist of a Knife アンソニー・ホロヴィッツ著 東京創元社

2023-12-07 | ミステリ

ミステリランキングで常にトップを争うホロヴィッツの新作。今回は「メインテーマは殺人」「その裁きは死」「殺しへのライン」に続く探偵ホーソーンもの。

自分が解決した事件を作家であるホロヴィッツに書かせるという強引な設定。よく考えたら(考えなくても)ホームズとワトソンの関係をそのままひっぱっているわけだ。もっとも、ホームズたちは親友としてとても仲がいいが、ホーソーンとホロヴィッツは一触即発。もうお前との契約は終わりだとホロヴィッツは啖呵を切るが……

自作の舞台の初日、打ち上げのパーティにやってきて、その舞台を酷評した評論家が死体で発見される。彼女の身体に刺さっていたのは、ホロヴィッツのナイフだった。逮捕されたホロヴィッツが頼るのは、やはりホーソーンしかいない。

それにしてもこの作家は勤勉だなあ。ハイレベルなミステリを連発しながら、舞台にも情熱を傾けるそのモチベーションはどこからくるのだろう(彼は実際にラジオやテレビの脚本家としても有名)。そして今回もミステリとしてみごとに着地しており、わたしは犯人を見誤っていたのでした。

また年末にはランキング入りして書店に平積みされることでしょう。

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「11文字の檻」青崎有吾著 創元推理文庫

2023-12-05 | ミステリ

設定がすごい。またしても調子に乗って大陸に進出した“この国”。体制に反する者たちは収監されるが、11文字のパスワードを当てれば釈放されるルール。そのパスワードは、ひらがなと漢字の組み合わせ……この、気が遠くなるルールを、これまで1名だけ突破した人物がいて、それはどうやら中学生だったらしい。いったいそのパスワードとはどんなものなのか。

短篇内に絶対不可能なルールを持ちこみ、それをひっくり返していくテクニックがすばらしい。いやおそれいりました。これまで「ノッキンオン・ロックドドア」しか読んだことがない作家だけれど、あのシリーズがむしろおとなしく見えてくる。あれもラストは無茶だったですけど(笑)。

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「あなたが誰かを殺した」東野圭吾著 講談社

2023-12-04 | ミステリ

かつて東野圭吾は、「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」で、最後まで犯人の名を明かさなかった過去がある。おかげで版元の講談社には問い合わせの電話が殺到したとか。

わたしも知人からメモを渡され、犯人がわかるか挑戦を受けた(笑)。今や売り上げ一億冊を超えた国民作家となった東野圭吾が同じことをやったらどうなるだろう……さすがに講談社もそれは勘弁してほしかったのか、同傾向のタイトルではあるけれど、ちゃんと最後には加賀恭一郎によって犯人が明かされます。でも、昔からのファンは「うわーまた始まったかあれが」と身構えたに違いない。わたしは身構えました。

この作品では、加賀恭一郎は捜査一課の刑事としてではなく、休暇中なのでオブザーバーのような形で事件に関わっていく。紹介したのは加賀の父親の看護を担当していた金森登紀子だったというサービスもあり。つまりは探偵としてこの事件に関与している。

“犯人が最初からわかっているはずの無差別連続殺人”だったはずなのに、事件は次第に別の様相を見せ始める。探偵役の加賀が、関係者を殺人の舞台となった別荘地を連れ歩く展開は、まるでツアコンのよう。

作品の最初にその別荘地の地図があり、読者はそれを見返しながら推理することになる。おお、本格じゃないですか。年末のミステリランキング上位進出決定的。週刊文春ではトップかも。東野圭吾はやっぱり面白い。そりゃ、売れるわ。

「祈りの幕が下りる時」で阿部寛での映像化は終わったはずだけど、この作品もぜひ彼で映画化してほしいなあ。で、もしも最後に加賀の解説がなかったら、わたし犯人を見誤ってました(笑)

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「777(トリプルセブン)」伊坂幸太郎著 角川書店

2023-11-24 | ミステリ

「量子力学で、猫が出てくるやつ、あるよね?」

「ええと、シュレーディンガーの猫のことですか?」

「そうそう、それ」

「観測するまで、猫の状態が確定しない、という譬え話みたいなものですね」

「猫の状態は、観測するまでわからない。まあ、意味はぜんぜん分からなかったけれど。でもさ、あれって答えは分かりきっているよね」

「答え?何が分かりきってるんだ」

「観測している時だって、観測していない時だって、猫は可愛いに決まっているよ」

「え」

グラスホッパー」「マリアビートル」「AX(アックス)」につづく伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ最新作。特に「マリアビートル」の直接の続篇でもある。まあ、このシリーズはどこから読み始めても楽しめるけれども、最初から読んだ方が笑えるはずです。

その「マリアビートル」で、東北新幹線内の攻防戦を制した(?)ひたすらに運の悪い殺し屋、天道虫。よく考えたらしぶとく生き残っているのだから運がいいんだか悪いんだか。彼にまた仲介役の真莉亜から斡旋されたのは、あるホテルの宿泊客に、彼を描いた絵を届けるという単純極まりない仕事だった。しかし、それがねじれにねじれて……

新幹線が横異動のお話なら、今回は縦異動のすったもんだ。エレベーター、カードキー、清掃係など、ありとあらゆる手段を使って襲い来る殺し屋たちから天道虫は逃れようとするが、というお話。

マリアビートルの映画化「ブレット・トレイン」を経過しているので、天道虫はブラピで真莉亜はあの大女優に見えて仕方がない(笑)。

多分に教訓を含んだ寓話でもあり、最高の娯楽小説でもある。ああこのシリーズを読んだことがない人がうらやましい!これから一気読みできるんだもの。

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